バンドをやっている人は
みんな楽器が好きだと思います。
その証拠に
バンドを離れても楽器だけは手元に置いて
久しぶりに取り出しては
ちょこちょこ触っている人は多い様です。
楽器の魔力 その2
このブログでも何度か出てきますが
リッケンバッカーというギターは特別な存在で
弾きにくいクセに、音も伸びないクセに
カッコイイ。
いつまでも、多分これからもずっと、ギターのアイドル的存在です。

このデザイン。
ホールの切れ目。
ピックガードの角度なんか宇宙です。
バンドを組んで間もない頃、ずっとこのギターが欲しくて探していました。
今でこそ、結構どこでも見かけますが
その昔、僕が欲しがっていた頃は楽器店にもそう出回っていなくて
お目にかかること自体が喜びでした。
梅田のナカイ楽器にショーケースに入った1本の330を見つけて
梅田に行くたびに、買うお金もないのに、買う予定も立てられないのに
何回も見に行きました。
その当時、確か¥280,000くらいだったと思います。
「2800円なら即金で買うのになぁ、、、、。」
小学生並みの溜息をついて眺めていました。
そんなバカな事を言いつつも、
その当時は2800円すら怪しい程の貧乏でしたが、、。
楽器屋に相談した事もあります。
交渉しても値引きする気もないような強気な態度で
段々話しているうちに
「金のない奴は帰れ」的な話しに聞こえて
悔しいながらお茶を濁して帰った事もありました。
以前にも書きましたが、ローンを組もうとして
保証人を立てろと言われ諦めた事も辛い思い出です。
グレコやアリアからコピーモデルが出ていて
「Rickenbacker」のロゴプレートを何とかすればいいのでは!と
考えた事もありました。
今でしたら拳銃でも作れる3Dプリンターで作成する事も可能でしょうが
当時はプラスチック工場で依頼すればいくらでやってくれるだろうかとか
真剣に考えました。
そんなある日、ライブハウスでの事。
花園町のエッグプラントという今はもうなくなった所で
本番前のリハーサルを終え、楽屋へ楽器を運んだ時
憧れのリッケンバッカーが3本も立てかけられていました。
「うわぁ、なんじゃ、コレ!、全部ホンモンやん!!!」
僕は、狂喜しました。
対バンの相手の楽器でした。
その日は僕らが最初の出番の為、リハーサルは僕らが最後で
彼らは既に楽器をかたずけてどこかへ行っていました。
「1本くらいもらってもエエんちゃうん!?」
訳の分からない事を言いながら
他人のギターを見ていると、おもむろにメンバーのギターが
手を伸ばして、他人のギターを弾き始めました。
「おい、おい、触ったらアカンやろ、、。」
正義感の強いベースが止めましたが
減るもんでもないし、、、とピロピロ弾き始めました。
弾いている時に持ち主は現れませんでしたが
(来たら一騒動になっていたかも知れません)
本番の前に彼らが楽屋へ戻って来ました。
「おお、自分ら、リッケンバッカー、ぎょうさん持ってるやん、、。」
つい、僕は話し掛けてしまいました。
彼らは、突然話し掛けられたのが驚いたのか口ごもっていました。
「3本もあるんやったら1本くれや。」
僕はなぜか上から目線で慇懃に話しかけました。
さすがに驚いた顔をしたと同時に、少し怪訝そうに
うつむき加減で
「イヤや、、、。」
と、小さい声で答えました。
ライブが終わって、帰る間際にも
「リッケン、くれ!」と、言いましたが
今度は無視されました。
リッケンバッカーの持ち主は
その後、一気に人気の出る
NE○EST MO○ELの中○くん。
その翌年、大阪城ホールでミックジャガーのコンサートがあり
男子便所でばったり彼に逢いました。
小便器でとなりになった彼に
「おう、久しぶり!」と声を掛けましたが
どうやら僕の事を覚えていない様子で
やぶにらみで見て来ます。
「リッケン、くれ!」と、再び言ってやると
記憶が戻ったのか、目を見開きながらも
「、、、、。あ、ああ、わからん、、。」と、忘れたふりをしていました。
アイツ、絶対、あの時は思い出していた筈です。