バンドの思い出が牛丼屋の思い出になって1週間。
掘り下げればまだまだ話しは尽きないのですが
そろそろ次の展開を、とのお声もいただき
今回は僕にとっての大きなエピソードをひとつ。
バンドの思い出~その10
ようやくドラムの購入資金も溜まり
辛かった牛丼屋のバイトも終わって
僕の長い夏は終わりに近づいていました。
残りのドラムセット、タムタムとシンバルスタンドを注文しに
楽器屋へ行きました。
「今度、特別にドラムのセミナーがあるんですが来ませんか?」
?
その楽器屋ではドラム教室みたいな事もやっていたので
そのお誘いかなと思いきや
「世界的に有名なドラマー、日野さんが特別講師で来てくれるんですよ!」
ひのさん?
「あの、日野皓正さんの弟の日野元彦さんです!
これは滅多とないチャンスですよ!!
ドラムを買って頂いたので無料で招待しますよ!」
あ、日野皓正さんと言えば、JAZZの世界的トランぺッター!
その弟さんか!
これはタダであれば行ってみる価値はありそう、、、。
僕は、自分がほとんど素人である事も忘れて参加をお願いしました。

会場はヤマハのエレクトーン発表会などで使う中ホール。
150人ほどの客席はほぼ埋まっていました。
早速、司会者の紹介から日野元彦さんが舞台袖から現れました。
背筋をまっすぐ伸ばして自分で拍手しながら早足で歩き、マイクの前で話し始めます。
「テンキュウ!日野です。」
圧倒的なテンションに会場アングリ、、、。
ニューヨークでのジャズメン達との話しや、最近のセッションなど簡単な近況報告があり
完全に自分のペースでセミナーが始まりました。
「、、、。じゃ、ユー、こっち、上がって来て!」
指名されたのはこの楽器屋でドラム教室をやってる先生。
「このスネア、叩いて」
言われた通り、ドラム教室の先生は叩きました。
バズッ、バズッ!
「もっと、強く、叩いてみて!」
バズッ、バズッ!
「う~~ん、じゃ、こんな感じ、、、?」
日野さんは少しドラムのチューニングを触ってから叩きました。
スコンッ!スコンッ!スコンッ!
会場のみんな、口が開いたままでした。
「みんな別に驚かない。ドンワリ、何が違う?」
ドラムの先生に聞きます。
「、、、、、。音が、違い、ます、、。」
「ヤス!、、、、他は?」「、、、、?叩き方?」「ヤス!他は?」「、、、、、?チューニング?」
「ヤス!!」
「そう、ドラム、チューニング、大事!」
ドラム教室の先生は面目丸つぶれでしたが、相手が日野さんだとある種仕方ない、、。
ちなみに、途中から僕も分かったんですが、元彦さんが「やす、やす」と言ってたのはYES !でした。
これを読むと、元彦さんがまるでバカボンに出てきた「ハワイ先生」みたく思われるかも知れませんが
ハワイ先生と全く違うのは、ホンモノが持っている迫力というか後光というか、とにかく会場のみんなは
完全に(スッゲ~~~ッ!!!)となっていました。
誰もが日野さんを尊敬し、煙たく思う雰囲気なんかなかった、、。
これが一流のミュージシャンか、、、、。そんな感じです。
次に会場のみんなにやらせたのは
右足を全拍で踏み鳴らし、左足をつま先とかかとを交互に踏むという
4ビートの足の基本。
「これは、いつも、やる。どこでも出来る。タップ、タップ、タップ!OK?」
その後、何個かの課題があり、僕なんかほとんど出来ませんでした。
会場にも回って来て下さり、個人指導や質問なんかもされていました。
僕も直接ご指導を賜りましたが、多分、一目でわかったのでしょう。
握り方を教えて頂きました。
このセミナーでは、僕は初めてホンモノに触れました。
これで充分でした。
後にこの体験から、
僕は自分がドラマーとしてやっていけない事を薄々感じてしまったのです。(笑)
※日野元彦さんは肝不全のため、1999年に亡くなられています。
生前のご活躍に敬意を表し実名で記載致しました。
謹んでご冥福をお祈り致します。