世界経済に及ぼす影響という点で本当に懸念されるのは、実体経済が減速するリスクです。
【WSJ: Anemic Global Growth May Undermine Efforts to Lift the World’s Poorest, IMF Chief Says】
"anemic" は本来「貧血症の」という意味。これが転じて人の態度を表す場合には「無気力な」、経済活動を表す場合には「元気のない、沈滞した」という意味になります。
「世界経済の成長の停滞が、世界の最貧困層を底上げする努力を台無しにしてしまうかもしれない」
IMFのラガルド専務理事がそのように言っているようです。
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On Friday, the United Nations will adopt a list of 17 new development goals meant to eradicate poverty and hunger across the globe by 2030.
But unlike the last decade and a half, when breakneck growth in emerging market catapulted hundreds of millions of people out of hardship, a souring of economic prospects worldwide will make the new targets much harder to achieve, said IMF Managing Director Christine Lagarde.
++++++++++"eradicate" は「~を撲滅する」。 近く国連が、2030年までに地球から貧困と飢餓を撲滅するための17の開発目標を採択するのですが。
過去15年間は、危険なまでに急速な(breakneck)新興国の経済成長が、何億という人々を困難から解き放った(catapulted someone out of... )のですが、経済の見通しが世界的に悪化している現在、新たな開発目標は実現することがより困難になるだろう、というのがラガルド専務理事の見立てです。
世界経済の見通しが悪化している背景にあるのは、
1) 2008年の金融危機以前には経済成長を上回るペースで成長していた世界貿易が、現在は経済成長と同じペースにとどまっていること
2) 依然として世界の失業者が2億人と、危機以前の水準を約6%上回っていること
3) 生産性の向上によって生み出される経済成長が新興国で停滞していること
が挙げられています。
世界経済の見通しが悪化することによって、経済の展望を切り開くような政策を実施することが困難になってしまうことが懸念されているようです。
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IMF economists say the world’s poorest countries should focus on three priorities to bring to fruition the U.N.’s ambitious goals: diversifying their economies, fostering more inclusive growth and ensuring that expansion is environmentally sustainable.
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"bring to fruition" は「~を成就する」。
IMFのエコノミストによれば、最貧国が国連の野心的な目標を成就するために焦点を当てるべき優先課題は、
1) 一握りの輸出産品に依存した成長ではなく経済の多様化・多角化を図ること
2) 性別・所得階層・民族の垣根を越えた包括的な経済成長を遂げること
3) 環境制約の下で経済活動の持続可能性を確保すること
の3点です。
途上国が貧困撲滅のために必要な政策の円滑な実施という観点からも、先進国の経済が安定的に運営されることが求められているようです。