「みんな大好き」なベタ展開が大嫌いなのに、最近、ベタの王道『水戸黄門』シリーズ再放送は何故か見続けるようになった私。
講談でも主役より悪役に惹かれてしまいがちな私は、時代劇を見ても、やっぱり主役より悪役に目が行ってしまいます。
そんな私が惹かれた悪役俳優さんのお二人目は、【ミスター悪代官・川合伸旺さん】
時代劇の悪役といえば、何と言っても悪代官。
川合伸旺さんは、その悪代官役の名手です。
ファンから「ミスター悪代官」の愛称で親しまれていたそうな。
私、最近になって『水戸黄門』再放送を観るようになるまで川合さんのお名前は存じ上げなかったものの、悪代官といえば、子どもの頃に見ていた川合さんの顔をぼんやりと思い浮かべておりました。
で、悪代官といえば、悪徳商人との密談における「お主も悪よのぅ」の決め台詞ですよね。
この名台詞を広めたのも、川合さん。
実際にドラマでこの台詞を使ったことはほとんど無く、「カンロのど飴」のCMで川合さんが言って広まったとのこと。
因みに、川合さんの悪代官姿をモデルにしたフィギュア人形が発売されたことがあり、即完売だったそうな。
 
というわけで、川合伸旺さんといえば「私利私欲にまみれた悪代官」役ですが。
『水戸黄門』シリーズでは、そうでない役を演じられることもあります。
悪役は悪役でも「実直だが、主(あるじ)への忠誠心が強いあまり、主の悪事を知りながらそれを隠そうとしてしまう。良心の呵責に苛まれ続け、最後は切腹する」という、真っ直ぐな役も見事に演じてらっしゃいました。
 
先日ご紹介した名悪役・藤岡重慶さんと同じく、川合さんは美しい声で声優としてもご活躍されています。
映画の吹き替えではジェームス・ディーン、マーロン・ブランド、ポール・ニューマンをご担当。悪役のイメージとは正反対の役を多数演じられ、特にポール・ニューマンの吹き替えはほぼ専属でした。
 
川合伸旺さんにしろ藤岡重慶さんにしろ、名悪役の方々って、ご本人は悪役と正反対で「真面目で優しく穏やかで、周りの人々への気遣いが細やか」な人が多いようですね。
この評価には「悪そうな人が実はいい人」という「みんな大好き」パターンのバイアスがかかっているところもあるかもしれません。
しかし彼らに関するエピソードを見ると、それだけとは思えないのですよ。
 
川合さん、「悪役をやっていて良かったことは?」と訊かれた際
「人間として間違わないこと」
と答えてらっしゃいます。
悪役をしっかり演じようと思ったら、人の醜さ、愚かさ、弱さをしっかり見据え、それらを受け入れて一身に背負わなくてはいけないでしょう。しかも演じるのは、引き立て役の「嫌われ者」。
徹底的にやろうと思ったら、真面目で優しい人でないとできないのかもしれません。
(中には、その人の地で悪役をやっている人もいるかも知れませんが)

 

川合さんは2006年に逝去。74歳でした。

 
川合伸旺さん、素晴らしい悪役の姿を残してくださり、有難うございました。
これからも時代劇での川合さんの演技を通し「人間として間違わないこと」を学ばさせてもらいます。
既に人間として間違いを犯しまくっている私なので。

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