先月、歌舞伎『荒川十太夫』を観覧。ただし、最後列の席からこの一幕だけを観る「一幕見席」で、だけれども。
この歌舞伎は、講談師・神田松鯉先生の口演を基にした歌舞伎です。一昨年初上演され、今回は再演となります。
私は初演も観ました。登場人物の台詞で話が進む部分の多いこの話。「朗読劇ならまだしも、ビジュアル的に派手なイメージのある歌舞伎にどうやって落とし込むんだろう、普通のお芝居でもやりにくそうなのに」と思っていたら「おぉなるほど、そんな手が!」と驚かされました。古典芸能であるはずの歌舞伎なのに、かなり現代的に思えましたよ。
 
担当した演出家・西森英行氏は、アニメやゲーム原作の舞台化も数多く手掛けている現代演劇の手練なんですね。現代的に思える演出を「歌舞伎」としてスッと取り入れている歌舞伎役者さんたちの柔軟性と吸収力に驚かされます。
そして、脚本家の竹柴潤一氏はこの作品で大谷竹次郎賞を受賞。「歌舞伎俳優によって上演された新作歌舞伎および新作舞踊劇を対象とし、娯楽性に富んだ優れた脚本」に贈られるだそうな。
 
今回の再上演。やっぱり良かった。
初演では気がつかなかったけど、お線香の香りがする、という演出も。私は前回も今回も客席ではマスクをしておりましたが、今回、マスク越しでも香りに気が付きました。弔いに関する話なので、この香りがテーマのなかの一面を感覚的に感じさせ、かなり良い演出だったかと。
あ、私のいた一幕見席には外国人らしきお客さんが多かったなぁ。ビジュアル的には「いかにも歌舞伎」という派手なシーンのない芝居だから彼らにとってどうんだろう、と思っておりましたが、のめり込んで大いに楽しんでらっしゃったようです。回想シーンでの客席の静寂と会場に張り詰めた空気感は凄かった。
(別の日、このシーンで携帯のアラームを鳴らした人がいたそうな。あぁぁぁ…)
 
今回の上演は1月下旬に終わりましたが、再々上演を願っております。