昨夜は永山智行氏演出の舞台『だだいま』を見に、こまばアゴラ劇場へ行ってきました。

 

 

東京での公演は16日まで、その後も地方にて2月15日~17日まで続きます。ネタバレを避けるためにあまり詳しく書くことはできませんが。
観劇中ずっと、びっくりしつつ、うならされつつ、考えさせられつつ、感じ入っていました。
奇抜な演出がありながらも、それらは奇をてらっているのではなく、はっきりとした意図がある。
緻密な計算で組み立てられた構造により、奇抜さで大胆な演出の効果ををしっかり出している。
奇抜で大胆で緻密でありがらも、決してあざといわけではない。全体には押し付けがましさ・暑苦しさのない柔らかく優しい眼差しを通して「日常」を深く掘り下げた世界を描いている。
舞台上にて「日常」を非日常的で奇抜な演出で描きながらも、この舞台で起こっていることは、多くの人が日常の中にて心の奥底でなんとなく感じているけれど、気がつかなかった、気がつかないようにしていた、あえて描こうとしていなかった様々な感情をしっかり描いていると思うのです。
永山氏の演出は今年の6月に宮崎県立芸術劇場にて『三文オペラ』を見て度肝を抜かれました。そのため今回はかなり期待して見に行きましたが。
その期待を大きく上回っていました。
主催は「こふく劇場」。宮崎県都城市の劇団です。出演している劇団員さんの演技も魅力的でお見事でした。
 
濱砂崇治氏:穏やかにありつつ心の中の激しい気持ちをしっかり表す様はお見事。
中村幸氏:明るく飄々とした中に優しさ感じさせる役がピッタリで惹かれました。
大迫紗佑里氏:あっけらかんとした中に悲しみを隠している演技に惹かれました。
あべゆう氏:明暗両方の描写がどちらもお見事。宮崎のばぁちゃんには大笑い。
かみもと千春氏:『三文オペラ』の時と同様、美声と感情の描写はお見事でした。
 
出演者の皆さん声がとても綺麗に響きます。発声や表現の基礎がしっかりしているのでしょう。基礎がしっかりした上での個性と魅力。見習わなくては。
 
今回、宮崎弁で話が進みますが東京の人でも何を言っているかはハッキリわかると思います。
正直に言って、イントネーションが平坦で標準語と大きく異なる宮崎弁は、言葉で表現する上で大きなハンデにしかならないと思っていたのですよ。
宮崎出身の人がアナウンサーや役者や話芸をやるとなると大変だろうなぁと。
しかし、このお芝居ではイントネーションの平坦さが能や狂言等の謡のように抑揚が少なくぐっと抑えた力強さ出し、標準語とは大きく異なるところは標準語ではとても出せない滑稽さとユーモアを出している。
宮崎弁がこんなに表現力豊かな方言だとは思わなかった。
今回のお芝居を通して、宮崎弁に対する見方、というよりも、方言というものに対する見方が大きく変わりました。
私は滑舌が悪く早口でド下手ながらも落語と講談をやっているので、宮崎へ頻繁に帰るようになっても話芸をやる上でハンデになりそうな宮崎弁に戻っちゃわないよう気をつけていました。
しかし今は、宮崎弁で普通に話せるようになるようになったら逆に表現力がアップするかもしれないと思っているところです。12月の宮崎滞在では皆さんを相手に宮崎弁の稽古をしようかな。(笑)
 
劇団・青年団(平田オリザ氏主催)のある劇団員の方が、私が一昨年の1月から宮崎へちょこちょこ帰るようになったことを知り
「宮崎といえば、『こふく劇場』を率いる永山智行という、びっくりするような演出をするすごい演出家がいますよ」
と教えてくれました。
私が住んでいた30年以上前は何もかも時代遅れで間抜けでダサかった宮崎。
今は大きく変わってきていますが、この劇団員さんの話を聞いた時も、白状すると
「ふ~ん。そうは言っても娯楽や芸術の公演の少ない地方の劇団だしねぇ」
ぐらいに思っていました。
その偏見は『三文オペラ』と今回の『ただいま』を見て大きく覆されましたね。
 
最近の私は宮崎のことをやたら持ち上げているから今回もそうだろ、と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが。
私のことをよく知っている方はご存知のとおり、私は自分の好きな人達がやっていることでもこういうことに関しては自分でもびっくりするくらい冷徹で、客観的に見てダメだと思ったらパッと突き放しますし、ダメだと思っているものを人に勧めるようなことは決してしません。
なので、ここに書いていることは決して「宮崎贔屓」ではないのですよ。
このお芝居はこまばアゴラ劇場にて16日の昼間でやっています。東京にお住まいで、お芝居を見るのが好きな方々、表現することを仕事や趣味としている方々には是非とも見ていただきたいなぁ。
私は明日から2週間宮崎にいるので東京公演へはもう行けないけど。
 
来年の2月は新田神楽を見に宮崎へ行く予定です。
ちょうどその頃、このこふく劇場がこの『ただいま』を宮崎県三股町で上演しているのですよね。
3連日のうち千秋楽が新田神楽の日と重なっちゃっていますが、1日目と2日目は、この『ただいま』を見に三股町へ行こうと思っているところです。

 

 

(終演後、長々とアンケートを書いていたら劇場を出るのが遅くなり、外に出ようとしたところで永山氏が「では、初日の乾杯をしに!」と言うと皆さん客席に戻っていく。
私も「何があるのかな?」と、後からついていっちゃいました。
そうしたら、出演者・関係者・常連のお客さんとの初日乾杯。(笑)
私が「あ、あの、私は一般の客だったんですけど」と言うと皆さん「いいの、いいの!」と言って飲み物を勧めてくださり、私はほぼタダで飲み食いし、出演者や永山氏とお話までさせていただきました。

 

 

 

 

宮崎の人たちとはこういう事が本当によく起こります。
宮崎の人たちがおおらかで優しいからなのか、私がとぼけていて図々しいだけなのか。それとも、宮崎の神様が引き合わせてくださっているのか。
何にしても、いろいろな面で忘れられない夜となりました。
明日は喜びに満ちたまま宮崎へ行けます。
こふく劇場の皆様、本当に有難うございました。
2月の三股町公演も楽しみにしています)