昨夜放送された「梅沢富美男のズバッと聞きます!」にて、立川志らく師匠について私がインタビューを受けていた様子が、本当に一瞬ですが流れました。

「これ(志らく師匠の落語との出会い)が無かったら、自分の人生はもっとつまらないものになっていただろうなと思います」
インタビューでこう言っていますが、大げさではありません。本当です。
私が志らく師匠を知ったのは、大学院生の時に偶然見た「落語のピン」という深夜番組。
今は違いますが、当時の志らく師匠はぶっ飛んだギャグを圧倒的なスピードでバンバン繰り出すタイプ。大学院での研究に行き詰まり、たまたまテレビをつけた時この番組で志らく師匠を見て「この人、『面白い』というよりも、すげえな」と思いました。
当時、私は大学院で論理学の絡んだ内容を研究しており、自己言及命題等について考えていたところ。
そんな時に志らく師匠の『粗忽長屋』で「抱かれている俺は確かに俺なんだけど、抱いているこの俺は、いった誰なんだろう」というサゲまで見終わった時には衝撃を受けました。
でも、私が志らく師匠の落語会に行くまでになるのはもっと後。
「立川志らくという、ものすごい落語家がいる」というのは長年頭にあったのですが、落語を見に行くほど落語に対する興味はまだ無かたのです。
何度かふっと「志らくのピン」という志らく師匠の独演会に行こうとしたことがあったのですが、いつもチケットが売り切れ。
結局、私は志らく師匠の独演会にも、落語の会に行くこともずっと無かったのです。
「落語のピン」で志らく師匠を知って約20年後。
NHK教育(NHK-Eテレ)で「小津安二郎は落語だ!」という教育番組がありました。
小津安二郎の映画には興味があったのでチェックすると、何と、あの志らく師匠が小津安二郎の映画について解説している。
……あのすごい落語家さんだ。映画の解説もやっているのか?!
と思い見たら、独特で斬新な切り口ながら、とても納得のいく着実な理論を展開している。
映画評論家や文化人(と思われている人達)、文化系大学の教授達による「哲学や社会学の言葉等を用いて立派に見せているけれども、よくよく考えて読むと安易で薄っぺらいこじつけ」でしかないものが横行しそんなものが真似されあっている映画評論や文化系の研究にうんざりしていた私は、「あぁ、こういう、自分で本当に感じたことを元に自分で考えながら映画について語る人もいるんだ。映画や芸術に対してこんな真っ正直なやり方で人をハッとさせる理論を展開することも出来るんだ」と嬉しくなり、しかもそれをやっていたのが20年前に惹かれた落語家さんというのも嬉しかった。
それから私は志らく師匠の独演会に行くようになり、志らく師匠の「秘密クラブ」とも言える「らく塾」を見つけてそちらへも行くようになり、そこで志らく師匠の落語論にさらに惹かれ、早口で語りも上手くない私が自分でも落語をやってみたいと身の程知らずなことを思うまでになって、もう募集していない「らく塾」の実技クラスに無理・無茶なお願いをして入れてもらい、志らく師匠の落語だけでなく他の人の落語も聴くようになり、やがて講談にも出会い……
宮崎に行くようになったら、「らく塾」の大先輩である粉川アナと出会い、宮崎に落語の良さを・東京に宮崎の良さを伝える活動している三遊亭天歌さんと出会い……
志らく師匠による映画評論を通して落語に出会いましたが、逆に、 落語を通して映画との出会いもありました。映画『ねぼけ』との出会いがそれで、志らく師匠を通しての落語との出会いがなかったらこの映画を見に行かなかったでしょうし、そうすると新富町の方々と出会うこともなかったし、こども落語全国大会でしいのみ亭らんらんさんが優勝する姿を見ることもなかった……
私の人生を変えたのは、落語を通して得た多くの出会いだけでなく、志らく師匠の独特の考え方、志らく師匠の語る落語における価値観もです。
志らく師匠の師匠である立川談志師匠の「落語とは業(ごう)の肯定である」はもちろんのこと、自分が「良い人」と知られるのは恥ずかしいことだと思う江戸っ子の「照れ」、目立つところでなく隠れたところで飾る「粋」という価値観……
志らく師匠との出会い、志らく師匠を通しての落語との出会があったからこそ出会えた貴重なもの、貴重な人々、貴重な考え方がいっぱいあるし、それが無かったら、やっぱり私の人生はもっとつまらないものになっていたと思うのです。
TVで流れたのは、志らく師匠のお弟子さんである立川志ら鈴さんの前座→二つ目への昇進をかけた会にてインタビューを受けたものです。
当日はかなり多くの人がインタビューを受けていたし、他の場でもインタビューをやっていたでしょうから私のが流れる可能性はかなり低いだろうなと思っていたのですが。
この前の日曜日に制作スタッフらしき方からの携帯へ着信がありました。私のインタビューが流れる予定だという連絡と、私の顔を流す許諾確認です。これには驚きました。
多くの人がインタビューを受けていたようですが、TVで流れたのは私を含め2人だけ。
流れたのはほんの一瞬で、テレビを見ていたほとんどの人に私の意図は伝わらなかったと思いますが、それでも志らく師匠の番組で、私の思いを伝えることができたのは嬉しかった。
番組制作のスタッフの皆様、有難うございました。
そして何よりも志らく師匠、本当に有難うございます。
ほぼ毎日テレビに出るようになり益々お忙しくなりつつも、一つ一つのお仕事に対して手を抜かないという今も変わらぬご様子。
ご家族やお弟子さん達、そして我々のためにも、どうかお体に気をつけて。