「メイキング・オブ・モータウン」(2020年日本公開) | ネコ人間のつぶやき

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 「メイキング・オブ・モータウン」は伝説のレコードレーベル、モータウンの創業者ベリー・ゴーディを密着した初のドキュメンタリー映画です。

 

"Diana Ross" Photo by Rob Corder

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 ベリー・ゴーディほか、スモーキー・ロビンソン、ダイアナ・ロス、スティービー・ワンダーら関係者の語りと貴重な映像。


 モータウン初期の歴史、60年代にヒッツヴィルと呼ばれる小さな一軒家の録音スタジオから70年代ロサンゼルスに移転するまでを贈ります。

 

 若きゴーディが事業に失敗してフォードの工場で働くんですが、その時彼は閃いたんですね。

 

 アーティストを世に出すビジネスモデルが自動車製造ラインだった、というのはいかにも車の街デトロイトで興味深い。

 

 ゴーディは売れるポップなソウルミュージック、R&Bであることを社のコンセプトに。

 

 それで契約ミュージシャンとぶつかることも。

 

 でも、ゴーディと幹部の販売会議は民主的で、ゴーディが折れた結果、マーヴィン・ゲイの「What's Going On」といった名盤が世に出たり。

 

 ゴーディの経営者、プロデューサーとしての手腕と葛藤、人柄にまつわる話もおもしろかったですね。


 ゴーディは能力があれば人種、年齢、性別関係なく雇いました。

 

  黒人と白人が平等とか、決定権を持つ若い女性幹部がいる企業は当時珍しかったんですね。

 

ゴーディ(向かって右)とスモーキー・ロビンソン(2017年)。※映画の場面ではありません。

"148173_MP2_1869" Photo by Walt Disney Television

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 でも黒人からは「なんで白人を雇うのか」とゴーディは批判されたそう。

 

 アメリカではラジオ放送されることがセールスに大きな影響を与えるんですが、黒人音楽は白人のラジオ局でかけてもらえない。

 

 アメリカのディープサウスはデトロイトよりも差別は深刻で、初期のツアーでは南部でツアーバスに向けて銃撃されたり。

 

 「グリーン・ブック」で観たようなエピソードですね。人種差別がとにかく酷い。

 

 モータウンの歴史は、デトロイトという街もそうですが、人種差別と切っても切り離せないんです。

 

 そしてジャクソン5と契約したモータウン。

 

 ゴーディの先見の明で大人気のジャクソン5はテレビ出演、さらには黒人の 少年がアニメの主人公になることは初めてでした。

 

 マイケル・ジャクソンの自伝「ムーン・ウォーク」にもモータウン時代の話が書かれていて、この映画を観てマイケルの生きた時代が生き生きと蘇ってきた感じがしました。

 

 おそらく真の意味で肌の色を越えた初のミュージシャンはマイケル・ジャクソンだと思いますが、マイケルとモータウンの歴史は深い関係があります。

 

 ゴーディが目指したモータウンサウンドは、新しい人種統合のアイコン、新しいポップミュージックですから。

 

 とにかくゴーディと盟友スモーキー・ロビンソンが90越えのお爺さんとは思えない元気さ。


 そして苦労話も今や冗談ネタにする明るさ。

 

 ゴーディのリーダー論は参考にすべきで、おもしろいドキュメンタリーでしたね。