「LOVERS」(2004年)~戻ってきた理由はもちろん… | ネコ人間のつぶやき

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 武侠映画「LOVERS」(2004年)はチャン・イーモウ監督が映像美で描く男女三人の愛の物語です。 


"The House of Flying Daggers (essay 2 for DVD cover)" Photo by Jayme Rose

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 時は西暦859年、唐王朝の中国。


 無能な皇帝のもと政治腐敗が進み、各地に反対勢力が台頭。


 王朝と最大規模の反対勢力・飛刀門との間で死闘が繰り広げられていました。


 反対勢力を取り締まる捕吏のリウ(アンディ・ラウ)は、踊り子のシャオメイ(チャン・ツィイー)が飛刀門という反政府グループの一員と睨みます。


 そこでリウは、同僚の捕吏ジン(金城武)にシャオメイを誘惑して信用させ、飛刀門のアジトを突き止める任務を与えます。


 リウはプレイボーイのジンに「本気になるなよ。任務を忘れるな」と釘を刺す。 


 ジンは「この俺が女に本気に?あり得ないね」と一笑。


 ジンは牢からシャオメイを脱出させて旅に出ますが、シャオメイと危機を乗り越えるうちに任務と葛藤しながらも彼女に惹かれてしまい …。


"house of flying daggers green dresses 6" Photo by Abraxas3d

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 チャン・イーモウ監督の前作「HERO」(2002年)でビックリしたワイヤーアクションを多用したバトルシーンは本作でも健在。


 竹藪のワイヤーアクションはどうやって撮影したのでしょう?


 ワダ・エミがデザインを手掛けた衣装は相変わらず素晴らしい。


 背景の竹藪の緑や秋の紅葉が本当に美しいんです。


 相変わらずの色彩へのこだわりですね。


 でも「HERO」のオリジナルな美意識やスケールには劣るかな(それでも美しい映像です)。


 「HERO」やウォン・カーウァイ監督作品の常連クリストファー・ドイルが本作では撮影監督じゃないのもあるかもですね。


 思惑や駆け引き、三角関係、愛憎をバトルで表現。


 独特の劇画的表現と幻想的世界観は「HERO」に通じますね。


 さらに「HERO」と共通するテーマは自己犠牲です。


 愛だけでなく、属する集団が敵味方で争っているのでしがらみもある。


 だから余計に自己犠牲に至るまでには幾つかの苦悩があるわけです。


 本作が「HERO」と違うのは、その自己犠牲がより個人の内にある愛をめぐるものということ。


  監督はそういう男女のあやを最後のバトルシーンで描きます。


 紅葉が雪景色に変化する最も幻想的な場面なんです。


 このエンディングに向かってストーリーを動かす魅力的なキャラクター達。


 チャン・ツィイーをめぐる金城武、アンディ・ラウの美男美女による三角関係。


 チャン・イーモウ監督の得意な設定ですね。


"十面埋伏" Photo by bswise

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 シャオメイが登場シーンでジンの前で踊り歌うんです。


 その歌が「北に佳人あり。比類なき絶世の美女なり。一目見れば城を傾け二目見れば国を傾ける。城を傾け国を傾けても手に入れずにはいられない」という歌詞なんですね。


 これが前フリなのはこのシーンを観てすぐに分かります。  


 シャオメイに「なぜ戻ってきたの?」と問われて「お前のためなら何だってするさ」と答える男(そりゃ、そうだろう!と内心つぶやく)。


 チャン・ツィイーは好きな男性が戻って現れたとき、こう表情がパッと輝くんです。


 こういう彼女の魅力はデビュー作「初恋のきた道」(同じくチャン・イーモウ監督作品) から全く変わらないなぁ、と。


 キャスティングは命ですよね。


 なぜ男性陣がそういう決断をしたのか、観る者に納得させねばなりませんから。


 その点、チャン・ツィイー、金城武、アンディ・ラウは充分に納得感があります。


 「HERO」をまた観たくなりましたぞ…。


 またレビューしますね。