今回はフィルム・ノワール「過去を逃れて」(1947年)をご紹介します。
ファム・ファタールものの古典的名作です。
"Out of the Past poster" Photo by turkeychik
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カリフォルニアでガソリンスタンドを営むジェフ(ロバート ・ミッチャム)は、恋人のアン(ヴァージニア・ヒューストン)と幸せに暮らしていた。
ある日、ウィット(カーク・ダグラス)の右腕ジョーが現れる。
「ついに来たか」という表情のジェフ。
ウィットが待つタホ湖に向かう車中でジェフはアンに隠していた過去を語り始める。
3年前、ジェフはニューヨークで調子のいい相棒と私立探偵をしていた。
ある日、カジノ経営者でギャングのウィットから仕事依頼をされる。
ウィットは情婦のキャシー(ケーン・グリア)が自分を撃った挙げ句、4万ドルを持ち逃げしたから彼女を探せ、と言うのだ。
気が進まないジェフだったが、大金と引き換えにウィットの依頼を引き受けるはめに。
アカプルコへ向かったジェフはキャシーを見つけるも、妖艶なキャシーに惹かれてしまう。
ジェフはキャシーと逃避行を始めるが …。
"OUT OF THE PAST" Photo by Susana
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フィルム・ノワールの主人公の一人称語りが好きなんです。
ロバート・ミッチャムもカーク・ダグラスも若い!そしてクールです。
そしてフィルム・ノワールといえばファム・ファタール。
主人公は 魔性の女の魅惑に抗えず翻弄されるのです。
キャシーの登場シーンは真っ白な衣装です。
ファム・ファタールは、その内面とは真逆の色~純白で男を最初にかますのが定番。
仕事そっちのけでキャシーにハマってしまうジェフ。
キャシーはウィットを撃ったけど、金は知らない、とジェフに言うんです。
ジェフはそれを信じちゃいます。
「彼女を救うのは俺だ」という思い込みは破滅への序章です。
キャシーに振り回されて破滅してゆく男達。
ファム・ファタール、恐ろしいですね。
キャシーが黒ならアンは白色。対照的な女性です。
ウィットなんか、殺されかけたというのにキャシーにご執心ですからね。
時に愛?あるいは肉欲とは狂気です。
名前を変えて誰も知らない場所で生きる過去から逃れていたジェフ。
そこまでしてやっと手にしたささやかな幸せは、ある日突然現れた過去によって壊れてゆく。
デヴィッド・クローネンバーグ監督の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」は、主人公を追いかけてきた強烈な過去とは(悪い)血のつながりでした。
本作は女性関係。どちらも愛憎が最もうごめく情緒関係です。
強烈な負のパワーを帯びている過去は、追いかける執念もまた強烈です。
過去から逃れて生きることは時に難しいということかな…。