パーシー・アドロン監督の「バグダッド・カフェ」(1987年)をご紹介します。主題歌「コーリング・ユー」と共に名作ですね。
"Bagdad Cafe - Route 66" Photo by Gabriel Millos
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(ロケがされた店は、映画と同じ名前で営業していて観光名所になっているそうです)
カリフォルニアからラスベガスに通じる幹線道路沿い、モハヴェ砂漠の外れに佇む寂れたモーテル「バグダッド・カフェ」。
女主人ブレンダはゆとりがなく、天然な夫を追い出し、そして店の前で悲嘆に暮れて涙を流します。
そこへルート66をトボトボ歩いて現れた中年女性ヤスミン。
ドイツ人観光客のヤスミンは、レンタカーでラスベガスに向かう途中で横暴な夫に置いてけぼりを食らったんです。
バグダッド・カフェのオンボロモーテルに泊まるヤスミンをブレンダは不審がります。
ゆとりがなく殺伐として、 みんな笑顔を失っている。
「今よりマシな何処かへ」と思いながらも砂漠の寂れた店で送る毎日。
でも実は皆が愛情とか人情というものを求めているんですね。
追い出されたブレンダの旦那さんも、砂漠に車を止めて双眼鏡で妻を気にしているんです。
ブレンダがブチギレているのを観ては「ああ、ブレンダ、ブレンダ…」って心配している。
砂漠のゴーストタウンは殺伐とした人間の心の世界。
そこに現れた異邦人ヤスミンは優しく人懐っこい。
バグダッド・カフェに居着く画家のコックスや従業員、ブレンダの娘フィリスはヤスミンと交流を育み出す。
ヤスミンの優しさとユーモアに触れてブレンダの心も氷解し始めます。
ヤスミンはマジックをもたらすトリックスター。
突然舞い降りた天使?みたいなヤスミンの登場で、ブレンダ達の壊れたコーヒーマシンのような日常が色鮮やかに生まれ変わるんです。
それはヤスミンも同様なんですね。
独特で印象的な色彩と共に、人の優しさがじんわりと心に染み入るファンタジックな物語でした。
「不思議で難解な映画なのかな?」とずっと食わず嫌いで本作を敬遠してきましたが、観てみたらこんなことはなく、素直に感動しました。
良い意味で意外でしたね。