鬼才フリッツ・ラング監督のサスペンス「緋色の街/スカーレット・ストリート」(1945年)をご紹介します。
"Scarlet Street" Photo by bswise
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銀行の出納係クリス・クロス(エドワード・G・ロビンソン)は真面目を画に描いたような中年男で、その仕事ぶりから頭取からの信頼も厚い。
クリスは自身の勤続25年を祝うパーティーの帰り道、キティ(ジョーン・ベネット)という若い女性がチンピラ男から暴力を受けているのを見つけ、警官を呼び彼女を助けます。
自分は女優だと言うキティは実は娼婦。
チンピラ男はジョニーというキティのヒモ。
キティはジョニーと金をめぐって喧嘩していたというのが事実なんですが、クリスは彼女の嘘話を信じ込んでしまいます。
勢いで「自分はリッチな画家」と言ってしまうクリス。
実はクリスには画家になる夢があったんです。
でも才能がない自分にとっくに見切りをつけて、今は趣味として描いている。
"Scarlet Street" Photo by bswise
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クリスは孤独に耐えられず、5年前未亡人のアデルと結婚。
アデルは前夫を英雄と理想化しており、比較しては冴えないクリスを馬鹿にしていたんです。
さらにアデルはクリスが描いてきた絵を全部捨てると言う。
そういう惨めな思いを抱えているところに出会ったのがキティ。
クリスは「彼女と出会って自分の人生が変わる」と思っちゃったんでしょう。
そして「自分が可哀想なキティを救うんだ」と思ってしまったクリス。
男が「自分こそは女性の救世主だ」と思い込んだ時には既に破滅への道をひた走っているものです。
キティからクリスがリッチな画家だと聞いたジョニーは、キティにクリスを誘惑して金を巻き上げるよう指示する。
このあとの展開がよく練られているんですが、それは本編を。
哀れな中年男が運命のひとと勘違いした悪女に転がされた先の悲劇。
時代関係なく普遍的な男のサガという名の病です。
でもこの映画、現代が舞台だったならどうでしょう?
詳しく書けませんが、クリスが罪悪感に際悩まされるのがリアルじゃないかも知れないな…と。
当時の社会が求めていたギリギリの倫理観だったんじゃないかなぁ。
エドワード・G・ロビンソンが真面目で気弱なクリスを演じています。
「深夜の告白」で演じた自信溢れる凄腕調査官とは別人でした。すごい俳優さんだなぁ~…と。