「シャーロック・ホームズの冒険」は傑作でした。先日BSプレミアムでの放送が終了して寂しいものがあります。
グラナダTV版「 ソア橋のなぞ」
"THORG04" Photo by Scott Monty
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第28話「ソア橋のなぞ」は、1922年に発表された短編小説「ソア橋(The Problem of Thor Bridge)」を原作にしています。
依頼人はアメリカの金鉱王ギブスン。
ギブスンの妻でブラジル人のマリアがソア橋で頭を撃たれて亡くなった状態で発見された。
現場に凶器は無かったが、翌朝住み込み家庭教師のグレイスのタンスから銃が発見される。
グレイスにはアリバイが無く、彼女がギブスンの後妻になる可能性があったとされ逮捕。
ギブスンはホームズに「グレイスの無実を証明したら金も今までにないほどの名声も得るだろう」と傲慢に言う。
ホームズは「興味ありませんな」と冷ややかに答える。
改めてホームズがギブスンにグレイスとの関係を問うと、彼は「雇い主と被雇用者の関係のみだ」と答える。
ホームズが「雇い主が秘密を抱えている場合は断る」と伝えると、激怒したギブスンは出て行ってしまう。
しかし予想外にギブスンが戻って来なかったため、ホームズはワトソンと共に勝手に捜査を開始する。
"THORG05" Photo by Scott Monty
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ギブスンの妻マリアはラテン系の女性らしく情熱的にギブスンを愛していました。
しかし、今やギブスンの心はマリアから離れてグレイスに移っている。
グレイスはギブスンの好意を断り、出て行こうとしました。
しかし、子ども達がグレイスを慕っているため、ギブスンはグレイスに詫びた上で彼女に言い寄らないことを約束して屋敷に残ってもらったという経緯があったのです。
でも、嫉妬と憎悪に燃えるマリアにしたら関係ありません。
やはりグレイスが犯人?それともギブスン?
ホームズは何か引っかかるんです。
「違和感があるなら何かを見落としているのだ」と言うホームズは、ソア橋の石の欄干が欠けていることに注目する。…
原作小説の挿絵
"thor-07" Photo by Scott Monty
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この「ソア橋」は、金・異性関係・名誉が絡むシャーロック・ホームズらしい難事件ですね。
大体悲劇が発生する原因はこの三つの欲望絡みでしょう。
ホームズは捜査手法~推理と観察に当たっては人の欲望に精通しており、捜査に活かしている(と思う)。
「ソア橋」の驚きの展開はいかに。意外なトリックを見破るホームズの推理が冴えます。
シャーロック・ホームズの魅力の一つは謎解きで人間の本質を浮かび上がらせていることです。
アガサ・クリスティはこの辺りを詳細に(つまり嫌らしく)描きますが、コナン・ドイルはアガサ・クリスティほどでは無いので、個人的には読みやすい(観やすい)です。
にしても、冒頭から悪気なくワトソンに嫌みったらしいホームズ。
別の回でもホームズに「頼むから50分黙っていてくれたまえ」とか酷いことを言われますが、怒りもしないワトソンのいい人っぷりもまた冴えまくります。
「シャーロック・ホームズの冒険」は、バディものの魅力が満載なんですよ。
"THORG06" Photo by Scott Monty
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ジェレミー・ブレットはシャーロック・ホームズを演じるために完璧主義を貫いて役作りしていたそうです。
彼は見た目から雰囲気、所作に至るまで原作小説のホームズのイメージを完璧に演じ切っていました。
ジェレミー・ブレットは、原作小説をすべて映像化する前に天に召されました。無念だったことでしょう。
しかし、人生最期まで現場で演じ続けるに値する最高の当たり役に巡り合ったジェレミー・ブレットは役者として幸せだったとも想像します。