今回はある男の復讐とその結末を描く西部劇「無頼の群」(1958年)です。
"El vengador sin piedad" Photo by Ethan Edwards
source:
4人の無頼漢が処刑されると知ってリオ・アルバの村にやって来たジム・ダグラス(グレゴリー・ペック)は、偶然数年ぶりにかつての恋人ジョセファ(ジョーン・コリンズ)と再会します。
ジョセファは今でもジムに好意を抱いていますが、彼が人が変わったように感じます。
ジョセファは、ジムと旧知の仲の神父から「ジムが留守中に妻を白人2人、混血1人、先住民族1人からなる4人の無頼漢に殺されて以降、数年に渡り犯人を追っている」と聞きます。
ただし、神父は「ジムが証拠を握っているかはわからないが…」と言うのです。
"Joan Collins, 1958 -" Photo by John Irving
source:
ジムは保安官に頼んで牢屋の凶悪犯達~ザッカリー、テイラー、パラル、ルーハンに会いに行きます。
ジムは一人一人を無言で見つめる。
ジムが出てゆくと、4人組は互いに言い合う。「あれは誰だ?知ってるか?」。
そして口々に「知らないぞ、あんな男・・・」。
村に到着した死刑執行人のシムズ(実は偽物で犯人達の仲間)が保安官を背後から襲い、4人組は雑貨店の娘エマを人質にとって脱走。
急遽組まれた捜索隊にジムも参加して逃げた無頼漢たちを追うことに。
"Henry Silva, in ''The Bravados'' 1958" Photo by John Irving
source:
まずパラルを追い詰めたジムは懐中時計の妻の写真を見せて「知ってるか?」と尋ねる。
でもパラルは「知らない。お前はなぜ俺達を追うんだ?」とさらに問う。
ジムが事情を話して「思い出したか?」と問い詰めます。
パラルはそれでも「知らない」と否定し、「俺にも妻子がいるんだ」とジムに命乞いをしますが、ジムは無情に引き金を引く。
ジムはその後も犯人たちを一人ずつ追い詰めては妻の写真を見せる。
でも彼らはジムを知らないし、ジムの妻も知らない、と言うのです。
"Gregory Peck, starring in ''The Bravados'' 1958" Photo by John Irving
source:
「西部劇定番の復讐劇か?」と思いきや、ことは単純ではない、というストーリーが素晴らしかったですね。
グレゴリー・ペック演じるジムは元は善人なんです。
でも悲劇に見舞われたジムは復讐の炎に呑み込まれて人が変わったようになっているんですね。
そんなジムにジョセファは「過去に囚われないで未来を見て」と願いますが、ジムは首を横にふるのみ。
気づくとジムが非情な無頼漢のようになっていた。
しかし「自分は人の道を踏み外している」ということに気づき、ハッとなるジム。
この時、観る者もジムと同じくハッとなります。
"Joan Collins; 1958 - in ''The Bravados''" Photo by John Irving
source:
ジムは「皆さんも祈って下さい」と言いますが、その真意は「自分のためにも祈って欲しい」ということだった気がしますね。
「あっ!」と思わされる瞬間まで脚本が練り込まれているので、より心に響く作りになっています。
終盤からラストは驚かされた後「う~ん…」と考えさせられました。