「愛と青春の旅立ち」(1982年)は成長物語であり、ラブストーリーでもある名作です。
ザック・メイヨ(リチャード・ギア)はパイロットになるために士官学校に入学する。ザックは地元の女性ポーラ(デブラ・ウィンガー)と知り合い惹かれ合うが、卒業までの道のりは険しく、厳しい試練が彼を待ち受けていた。・・・
"An officer and a gentleman" Photo by Benedikte Vanderweeën
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ザックには少年時代に水兵の父に捨てられたた母が自ら命を絶ってしまったという過去があります。
一方、ザックを引き取った父はその後も退廃した暮らしに溺れています。
ザックが海軍士官学校に入ったのは、そんな父を超えて「自分は父とは違う」と証明したいという思いが理由にあったはず。
士官学校の鬼教官フォーリー(ルイス・ゴセット・Jr)は、利己的なザックに目を付けるのです。
ザックは悪い養育環境の影響で、愛を知らず人間不信なんですね。だから自分さえよければ他人はどうなろうと構わない。
ザックは過去の囚われ人なんです。母にひどいことをした父のように、ポーラにひどいことを言う自分がいる。
卒業してポーラとサヨナラすれば、自分はまさに父と同じ。
父は入学の朝ザックに「お前は俺と同じで士官の器じゃない」と罵りましたが、これも言い換えると「お前は俺という過去に負ける奴だよ」ということです。
母は自分に何も言わずにこの世を去ってしまった。そして親友も何も言わずに逝ってしまった。
暗い過去が繰り返す。そして自分を責める。・・・そう思えてならないザック。
ポーラの母親も娘時代に士官候補生に恋をして、痛い思いをした過去があって、娘にザックに入れ込まないよう助言する。
皆、過去を想起させるようなことに警戒するものなんです。
雨の中、過去を乗り越えるか、ドロップアウトして元の世界に戻るかの瀬戸際で、ザックがフォーリー軍曹に叫ぶ。
「俺には行く場所がない!どこにもないんだ!」。
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ザックの成長とは、自分の過去を乗り越えて決別することなんですね。
そしてザックが過去に負けないことは、ポーラを愛せるかどうかとも密接にリンクしていることなんです。
原題は「An Officer and a Gentleman」。直訳すれば「士官と紳士」。
士官、そして紳士にふさわしい言動をフォーリー軍曹はザックに教えたかったのだと思います。
紳士は優しく、相手をいたわらなければなりません。自己中では駄目なんですね。
そして紳士でなければ、白い制服をまとってお姫様を迎えに行く資格はないのです。
ラストのお姫様抱っこは伝説の名場面なんですよ。
ジョー・コッカーとジェニファー・ウォーンズのデュエットによる主題歌も大ヒットしましたね。