「猿の惑星」(1968年)は人気シリーズの第一弾です。特殊メイクアップ技術と何と言っても衝撃のラストシーンが伝説の域ですね。
宇宙船イカルス号は地球時間で半年間の探索を終えて地球への帰路についていた。光速飛行のため地球では700年経過していることを確認した船長のテイラー(チャールトン・ヘストン)は、他の3人の飛行士に遅れて人工冬眠に入る。しかしアクシデントのため、イカルス号は地球から300万光年離れた惑星に不時着。地球時間で2000年が経過していた。・・・
"Planet of the Apes (1968)" Photo by Shed On The Moon
source: https://flic.kr/p/28gYnsC
映画の冒頭、テイラーが独り「地球は相変わらず戦争で殺し合っているのか?飢えた子ども達を見て見ぬふりをしてるか?」とつぶやきます。
51年前に公開された本作の問題提起は、今も全く変わっていません。ここが前振りなんですね。
不時着した惑星で、テイラー達3人の飛行士は人間狩りをする猿の軍団に捕まってしまいます。
この惑星は言葉を操り知能が高度に発達している猿が支配していたんです。
対してこの星には人類がいますが、知能は低く言葉も話せません。
テイラーを保護したチンパンジーのジーラ博士は「猿は下等生物の人間が進化して誕生した」という進化論を唱えています。
一方、オラウータンのザイアス博士たちは「猿は神が造ったと聖典にある」と進化論を真っ向否定し、ジーラ博士を異端審問にかけようとする。中世ヨーロッパの様相なんです。
だから知性と言葉を持つテイラーの存在は、ザイアスにとって非常に不都合で脅威なんですね。
政治的な思惑でテイラーの存在とすべての隠ぺいを図るザイアス。
猿の惑星は極めて負の意味で人間的な社会なんですね。
"1968 Planet Of The Apes Female Astronaut who dies offstage before the landing of the Icarus." Photo by atomtetsuwan2002
source: https://flic.kr/p/AA8LoJ
テイラーは地球で戦争を繰り返す人類と人間社会に嫌気がさして宇宙に飛び出した男ですから皮肉です。
彼は人間に絶望していたんですね。だから孤独が怖くなかった。
技術面では進歩して今や宇宙旅行さえする人類なのに、内実は進歩せず、全く変わらない人類にテイラーはますます嫌気がさしていたんでしょう。
宇宙船での人口冬眠中に死亡した唯一の女性飛行士スチュワートがミッションに組み込まれたのも(本人には知らされず)ひどい理由でした。
でも、テイラーは猿の惑星に来てからは孤独が身に染みるのです。
優しいジーラ博士やコーネリアスといった自分によくしてくれる猿たちや、言葉が離せなくともノバの存在がありがたいのです。
優しさを見せるようになるテイラー。人生観が変わるんですね。
支配者・猿との遭遇と想像を絶する危機を通じてテイラーは「人間や自分という存在は何者か?」とを突き付けられたのかもしれません。
猿による人間狩りのシーンは、「ルーツ」でクンタ・キンテたち黒人が奴隷商人に捕まるシーンを想起させましたが、「猿の惑星」は猿と人間の関係を通じて人種問題に切れ込んでいます。
"you maniacs!" Photo by Mike
source: https://flic.kr/p/92Ld2d
子どものときテレビで観て、ラストシーンにビックリ。度肝を抜かれました。
その後、何度かこの作品を観ましたが、あの有名なラストシーンを(分かっているのに)観るたびに衝撃を受けます。
海辺で泣き崩れるテイラー。
なぜテイラーが嗚咽しているのかは理解できずに傍で立ち尽くすノバ。
余計に悲しいのです。
やっぱり人間は学ばない生き物なのでしょうか。それとも・・・?
「猿の惑星」は人類の災難は人類自身が作ったものであることを60年代にすでに警告しているのです。