今回は都会を生きる孤独な男の生き様を描いたフレンチ・フィルム・ノワールの傑作「サムライ」(1967年)です。
"Le-Samouraï" Photo by Mike Gebert
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プロのヒットマン・ジェフ(アラン・ドロン)。
ジェフはいつものようにコールガールのジャーヌ(ナタリー・ドロン)にアリバイ工作を頼み、ナイトクラブで仕事を遂行する。
しかし去り際にピアニストのヴァレリー(カティ・ロシェ)に顔を見られてしまう。
この件で警察にマークされたジェフは雇い主の裏切りに逢い、徐々に追い込まれてゆく。…
薄汚れて寒々としたアパートで1羽の小鳥と孤独に暮らすジェフ。
鏡の前でコートを羽織り、ハットのつばをシュッとさすって整えるルーティーン。
腕時計は右腕、時計の顔を手のひら側にしてはめる。
引き受けた仕事は完璧にこなす。
己のスタイルをかたくなに貫き通すジェフはまさにサムライ。
そしてサムライの孤独は森の奥の虎のごとくあまりに深い。
そんなジェフにかかわる二人の女性もまた印象深いのです。
ジャーヌは警部に「偽証罪になるぞ 」と脅されますが、証言を拒否します。
ジャーヌはジェフに惚れていたんですね。
ヴァレリーは面通しで警察になぜかジェフを「知らない」と偽証する。
さいごの仕事に向かうジェフはジャーヌのアパルトマンに寄る。
ジャーヌはジェフに「あなたには私が必要よ」と言う。
しかしジェフは「何も要らない」。
そして「片をつけてくる」とジャーヌの頬にキスして出て行く。
切ないと同時に、ジェフはジャーヌをわかっていなかったのか、と。
そしてわかっていなかったと言えば、ヴァレリーです。
ストイックでプロフェッショナルな男。
そんな彼も読み切れないものがあった。…
あぁ、男とはなんて哀しい生き物か。
それにしても、なんてクールでスタイリッシュなのでしょう!
さいごのジェフの決断は、彼女たちへのアンサーか。
そして彼の生き方という美学の集大成だったのでしょう。
さいごのさいごまで美学を貫く生き方。
ジャン=ピエール・メルヴィル監督のスタイリッシュな演出とアラン・ドロンの儚い美しさが際立ちます。
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