男の奇妙な友情と「アメリカの友人」(1977年) | ネコ人間のつぶやき

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 今回は男の奇妙で危険な友情を描いた「アメリカの友人」(1977年)。

 

 「パリ、テキサス」、「ベルリン・天使の詩」等の名匠ヴィム・ヴェンダース監督・脚本によるサスペンスです。

 

"AF-0091" Photo by Rachel Martorell

source: https://flic.kr/p/G7mLSh

 

 トム・リプリー(デニス・ホッパー)は絵画の贋作を欧州で売り歩く男。ある日ミノ(ジェラール・ブラン)という男が「素人を殺し屋に仕立てて仕事をさせたい」とトムに依頼する。

 

 トムはハンブルグの画廊で出会った白血病で余命に不安を憶える額縁職人のヨナタン(ブルーノ・ガンツ)を殺し屋にはめ込むことにする。

 

"AF-0076" Photo by Rachel Martorell

source: https://flic.kr/p/24fe6WH

 

 そうとは知らず、妻子に大金を残したいヨナタンは、ミノから殺しを引き受けてしまい、パリの地下鉄で何とか仕事を終える。

 

 しかし、ミノがヨナタンにさらなる危険な仕事を依頼したことを知ったトムはある決意を固める。・・・

 

"AF-0099" Photo by Rachel Martorell

source: https://flic.kr/p/G7mJEw

 

  街の景色とか、砂浜を走る救急車とワーゲンとか、美しい色彩感覚が印象深いですね。 洒落てるし、映像も素晴らしいのです。

 

  原作はパトリシア・ハイスミスによる「トム・リプリー」シリーズの第3弾小説です。

 

"AF-0154" Photo by Rachel Martorell

source: https://flic.kr/p/KigoWz

 

 シリーズ第1弾の「太陽がいっぱい」もそうでしたが、見方によってはヨナタンをめぐるトムとヨナタンの妻マリアンネ(リサ・クロイツァー)の三角関係とも解釈できる物語ですね。

 

 マリアンネはヨナタンの行動の背後に「アメリカの友人」トムの影を敏感に察知して心配し、夫を何とか元の生活に・・・と願うのです。

 

"AF-0089" Photo by  Rachel Martorell

source: https://flic.kr/p/G7mMis

 

 トムはヨナタンの工房に案内された際に「羨ましい」ともらす。トムのヨナタンに対する憧れの心情がわかります。

 

 トムはヨナタンの窮地に危険を冒すのですが「これは友情を超えた刹那的で究極の愛だな・・・」と感じました。

 

"AF-0117" Photo by  Rachel Martorell

source: https://flic.kr/p/23am85S

 

 下は印象深いシーンです。トムがヨナタンに言う。「友人になりたいが、友情は望めそうにないな」。

 

 ヨナタンは答える。「それを聞いてとても安心したよ」。トムは何とも言えない笑みを浮かべる。・・・

 

"AF-0194" Photo by Rachel Martorell

source: https://flic.kr/p/Kigi8k

 

  トムが欲しかったもの。それはヨナタンの愛。でも一方でトムは「無理だよな・・・」とどこかで思っていた気がします。

 

 欲しいという気持ちと諦念の間を行き来するトムの切なさなのですね。

 

 「アメリカの友人」はサスペンスですが、ヴィム・ヴェンダースらしいホロリとさせる人情劇に仕上がっています。