今回は史上初の全編トーキーのミュージカル映画「ブロードウェイ・メロディー」(1929年)です。
ハンク(ベッシー・ラヴ)とクィニー(アニタ・ペイジ)のマホーニー姉妹は、エディ(チャールズ・キング)が作曲した「ブロードウェイ・メロディー」を歌うべくザンフィールド一座に入団するが・・・。
"anita page bessie love" Photo by Allison Marchant
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仲良しのマホーニー姉妹は、成功を夢見て田舎からニューヨークに出てきたショウガール・コンビ。
エディはハンクの恋人なのですが、見違えて美しく成長したクィニーに惹かれて愛の言葉をささやいてしまうのです。
クィニーもエディに惹かれますが、姉想いゆえに、言い寄って来た富豪のジャックの誘いに乗ることでエディから離れようとするんですね。
らしくないクィニーを心配する妹想いのハンク。
ジャックはお金に物を言わせる嫌な男ですから、ハンクは別れさせたいんです。
エディも好きなクィニーをジャックにとられたくないので交際に反対する。
2人に反対されればされるほど、本心を偽ってクィニーはジャックとの付き合いを深めてしまう。
この姉妹は互いを思いやっているのです。
身を引く、自ら別れるという選択が自分の幸せのためでもあってほしいけれども、この場合難しいのは互いを思いやる姉妹が同じ男性を好きになったこと。
ベッシー・ラヴが鏡の前でメイクしながら泣き、途中笑い、また泣く。印象的でしたね。
対してエディは姉妹に「僕は一座の重要人物だから任せとき!」と大風呂敷広げるも、実はそんな権限がない小物。
カッコつけてしまうエディに思わず頭を抱えちゃいます。
単純で鈍感なエディと姉妹の対比を通じて男女の違いを分かりやすく提示して笑いにしよう、ということかもしれません。
テンポよく話が進むのですが、姉妹の涙に気づきもしないおバカなエディに「愛は理屈じゃないのさ」と言われたくないなぁ・・・と思ってみたり。
でも、これがギャグで当時の観客が笑ったところだったのかもしれませんね。
「ブロードウェイ・メロディー」公開はサイレントからトーキーの時代に入ったばかり。
まだサイレント映画の名残りがすごくあって、当時は音楽が鳴ったり、俳優の声が入っただけでセンセーショナルだったのでしょう。
「ブロードウェイ・メロディー」のアメリカ公開が1929年2月。
世界恐慌直前のバブル景気にわくニューヨークのショービズの舞台裏がこの映画の世界なんです。
だからでしょう、儚さをたたえながらも、景気の良い表現に溢れていますね。
衣装やメイク、映像はサイレント映画の世界という感じで、ゴージャスでレトロなムードは良い感じです。