黒海の沿岸、ウクライナの近くのジョージアの映画。
タイトルの「金の糸」とは、日本の「金継ぎ」のこと。
壊れた陶器をつなぎ合わせる技である。
かつてソビエトの支配を受けていた動乱の時代があった。
女性監督ラナ・ゴゴべリゼの父親は、ジョージアの政治家だったが、スターリンの粛清によって処刑される。
ラナ同様に女性映画監督だった母親も10年間極寒のシベリア強制収容所へ…
そして、ラナは孤児院へ…
粉々に壊れたラナの心…
ラナ監督のトラウマは79歳で足の悪い主人公エレネに投影されている。
エレネは娘夫婦と集合住宅に同居しているが、娘の姑ミランダが認知症となり、引き取ることになる。
そのミランダは、元々ソビエト政権下のジョージアで高官を務めた女性だった。
当時ミランダの施策によって、エレネの小説も発禁にされた…
そして、エレナの60年前の恋人アルチルから電話が…
アルチルは女性闘士だったミランダに心ひかれていたという…
妙な三角関係!!!
集合住宅には、いろいろな人たちが住んでいて、かつての日本の長屋のよう…
ケンカもあるが、人情味のある暖かな会話が交わされる。
この映画の中では、ソビエト政権時でのトラウマ体験についての激しい描写はない。
日常の生活を淡々と描くのみ…
黒海沿岸は、紀元前のアレキサンダー大王の時代から民族の興亡が繰り返された場所。
抑圧されているネガティブエネルギーは大陸で生きる人々の遺伝子の中に刻印されているのか~~~
戦乱は今も続く…
ラナ監督は、映画の題名を「野の花」にするつもりだったが、日本の「金継ぎ」の技を知って、タイトルを「金の糸」にした。
個人の力では変えられない外的な環境の中、いかに「自分」を保って生きていくのか ?
日本文化を育んだ霊性にヒントがあるのかも…