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Real Yellow Monkey

書評、音楽評、映画評、SS、雑記、その他

WELCOME PLASTICS/PLASTICS
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テクノポップ御三家(ヒカシュー、P-MODEL、PLASTICS)の一つ、PLASTICSのデビューアルバム。

テクノポップとは確か和製英語で、実際はパンクとかニューウェーブといったジャンルですな。

このアルバムの発売は1980年だそうだ。YMOが人気絶頂の頃だな。

まぁ、とにかくピコピコした昔のテクノポップは大好きだわ。

この時代のテクノポップは、知的で軽妙洒脱でフワフワして煌めいてるな。


このアルバムは、どれも同じように聴こえるシンプルな曲が多いけど、それが逆に良いな。
ラモーンズの1st程では無いけれど、統一感があってスッキリしてるわ。


あと、元々はノンミュージシャンの集まりなので、当時のライブ映像は他のバンドとは一線を画す雰囲気があるな。

80年代への憧憬を抜きにしても、今の時代なら、こんなヘタクソでカッコ良いバンドは有り得ないわ。


ヴォーカルの中西俊夫はイラストレーターで、女性ヴォーカルの佐藤チカはファッション・スタイリストで、ギターの立花ハジメはグラフィック・デザイナーだったらしい。

そこに、ミュージシャンの佐久間正英(キーボード)が加わって、テクノポップサウンドの路線に固まったという事だな。

佐久間正英は、四人囃子の頃はプログレをやっていた位だし、ハイレベルな音楽性と下手な演奏のアンバランス加減がまた魅惑的なんだろうな。





All World: LL COOL J/LL Cool J
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ベストなんで当然、良い曲ばかりだけど、オールドスクール時代のアルバム「Radio」に収録されている「I Can't Live Without My Radio」、「Rock The Bells」、「I Need A Beat」が、ストイック且つハードで、インパクトがあって良いわ。

といっても、オールドスクール自体あまり聴いてないし、90年代のニュースクールの方が好きなんだけど、たまに聴くとガツンとハートに響いて良いんだよな。


後は、「Jack The Ripper」、「Jingling Baby」、「Around The Way Girl」がリピート回数多いかな。

代表曲は、「Mama Said Knock You Out」だろうけどね。


「I Need Love」のように女性が好きそうなヒップホップ・バラードも幾つかあるけど、全体的に硬派な曲が多いね。

メロウ路線で耳に残る曲もあってバラエティに富んでいるし、少なくとも飽きやすいという事は無いわ。


とにかく、80年代にしても90年代にしても名曲が揃ってますな。

選曲は90年代半ばまでだけど、キャリアを感じさせるし、アルバムを通しで聴けばヒップホップの変遷を知ることも出来ると思うわ。

まぁ、LL Cool Jは鉄板だし、そりゃ良いよね。

It’s a Shame About Ray (New Version)/The Lemonheads
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レモンヘッズの、「It's a Shame About Ray」と「Come On Feel」の2枚は凄く良いアルバムですわ。

でも、意外と聴かれてないというか、、、何でだろうね?


まぁ、80年代のオルタナといっても、Sonic YouthやDinosaur JrよりもIRS時代のR.E.MやPixiesの方が聴いてる回数が多いし、ポップ性が高い方が個人的な好みには合うんだろうな。
90年代グランジはやたらと暗かったし、マシュースイート周辺のギターロックやレモンヘッズの方が開放感があって、ずっと好きだわ。

最近だと、Ryan AdamsなんかもこういったUSオルタナの流れを踏襲しているんだろうな。


因みに、ライナーノーツには、ヴェルヴェット・クラッシュの「イン・ザ・プレゼンス・オブ・グレートネス」、マシュー・スウィートの「ガールフレンド」に続く、アメリカの新しいロックンロールである、と書かれている。

70年代のサザン・ロックもいいけど、80~90年代以降のアメリカンロックもツボだわ。

あと、ライナーノーツには、90年代サブカル的な諦念だとか終末感だとか何とか書かれていて、懐かしい感じがするわ。


アルバム自体は、如何にもアメリカの景色を感じさせるロックが、イヴァン・ダンドの低音ボーカルと乾いたギターに乗って続いていく。

そりゃ楽曲も良いし、否応なしに気分は高揚していくだろう。

それも、メロコア・パンクみたいにエネルギッシュではなく、ナチュラルな感じが良いんだよな。


曲の流れとしては、1~3曲目「Rockin Stroll」、「Confetti」、「It's a shame about Ray」が良いですな。

特に、2曲目の「Confetti」はエルヴィス・コステロのポップ・センスを彷彿させる。レモンヘッズの中では、一番好きな曲かもね。

6~8曲目、「The Turnpike Down」、「Bit Part」、「Alison's Starting To Happen」の疾走感溢れる流れは特に良いな。

この辺りは、元々ハスカー・デュ等のハードコア系バンドだった頃の経験値が活かされていると思うわ。

まぁ、全曲捨て曲無しで良いですわ。







Selected Ambient Works 85-92 [帯解説 / 国内盤] 期間限定廉価.../BEAT RECORDS / R&S
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90年代とか田舎に住んでると、入手できるテクノCDは限られていて、せいぜいオウテカやマウスオンマーズ辺りまでが限界だったわ。

テクノとかエレクトロニカのCDが幅広く流通し始めたのは、90年代末からだったと思うわ。

まぁ実際は、当時、仕事の残業などで音楽聴いてる時間が碌に無かったから、ライフスタイルの問題が大きいよな。

音楽はある程度、時間が無いと詳しくなれないし、人それぞれライフスタイルにマッチした音楽を聴けば良い話だけどね。

アンビエントなんて、特にライフスタイルに関係が深い音楽だよね。


因みに、エイフェックスツインのこのアルバムは、90年代中頃としては比較的入手しやすいCDで、テクノ聴き始めの頃は、わりとリピート多めだったな。

ローランドM100を改造したチープなシンセ音やアシッド音も心地良く、アルバム全体として楽曲の統一感もあって、完成度は高いんだな。

「Xtal」が名曲で格別に素晴らしいけれど、その他の曲もなかなか良いよね。

今は評価が確立して、このアルバムも何だか高尚な雰囲気があるんだな。


俺なんかは、リアルタイムに近い時期に聴いていたけど、最近になって、これを聴き始めた人はどういう印象を抱くんだろうね。

そういう第三者的な見解で作品を評価したりが出来るのは、時間の経過によるものだろうな。

リチャードの奇異を衒った音楽性や行動も面白いと思うけど、初期のハイクオリティな楽曲に関しても正当に評価したい処だな。

まぁ、実際に聴いてみないと分からないだろうけど、評価に関しては人それぞれなんでしょうな。


星を継ぐもの (創元SF文庫)/ジェイムズ・P・ホーガン
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あらすじ(参照)


月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行われた結果、驚くべき事実が明らかになった。

死体はどの月面基地の所属でもなく、世界のいかなる人間でもない。

ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず、五万年以上も前に死んでいたのだ。

謎は謎を呼び、一つの疑問が解決すると、何倍もの疑問が生まれてくる。

やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見されたが……。

ハードSFの新星ジェイムズ・P・ホーガンの話題の出世作。


引用


トライマグニスコープはハントが二年がかりで取り組んだ中性微子物理学のある分野の研究の収穫として開発された装置であり、その研究はメタダイン社としてはおそらく同社の歴史はじまって以来最も大きな成果と言うに足りるものであった。

ハントはニュートリノ・ビームが固体を通過する時、原子核の近くである種の相互作用に影響され、通過後のビームに測定可能な変化が生じることを立証したのである。

(P.15)


それやこれやを考えれば考えるほど、ハントにははじめのうちの筋が通るように見えたいろいろな説明が理屈に合わないと思われて来た。

そして自分が呼び出されることになった問題が何であるにせよ、それはフェリックス・ボーランとIDCCによって象徴される世界を大きく超えたところに横たわるものに違いないという確信は一層深まった。

(P.16)


数十億年という時間は想像を絶する長さである。

不確実性の深淵のどこかで、現代の人類が登場するはるか以前に進化の過程を経験つくして滅亡した別の人類が存在したかもしれないと考えることはあまりにも馬鹿げているだろうか?

(P.50)


感想


ジャンルの違いこそあれ、「星を継ぐもの」の読後感は、「十二人の怒れる男」というサスペンス映画を観た時の衝撃に近かった。

錯綜する謎を解明すべき様々な人物の討論だけで、ほぼストーリーが成立してしまう様は圧巻である。

「星を継ぐもの」は、スケールの大きな王道SFだが、基本は百家争鳴による謎の解明だ。

つまり、徹底した演繹と帰納による論理と話し合いで、ストーリーが展開していく小説なのである。


この作品は、映画には不向きだと思われる。

学者の数々の憶測によって想像を膨らまし、傍証を固めて推理していくこの作品の醍醐味が、映像化する事によって半減する気がしてしまうからだ。

ある意味、小説の良い面が最大限活かされている作品と言えるだろう。


主役であるヴィクター・ハントのステータスは巧く機能している。

原子物理学者のハントは、国連宇宙軍本部長グレッグ・コールドウェルによって、グループLの総指揮官に任命される。

要は、専門領域の各部局の学者の調査した情報を統合して、パズルを完成させる仕事である。

情報のやり取りが無駄なくシステマチックに行われ、謎が徐々に解明していく過程は、複雑化した現在のネット社会に生きる我々に、或る種のカタルシスを与えると思われる。

特に、生物学者ダンチェッカーや言語学者ドン・マドスンとの話し合いの後、急転直下していく展開は白眉である。


そして、何と言ってもSFの醍醐味であるセンスオブワンダーも遺憾無く発揮されている。

最初、月で発見された正体不明の死体が、その後の調査による厖大な情報によって、壮大な規模のストーリーに展開していく。

そのロマン溢れる過程は、往年の50年代SFさながらである。


60年代のニューウェーブの到来によって、SFは終焉に差し掛かると思われたが、70年代はSF復活の季節であり、その70年代SFの代表作がこの作品である。

感情的なストーリー重視よりも、ロジックを重視した結果、この作品はハードSFとして成功する事になったのだろう。

また、SFにありがちなアイディアやロジックばかりを重視する作風ではなく、随所に詩的な表現を見出す事が出来る。

つまり、50~60年代SFの進化の過程を辿って来た作品と言えるだろう。


ここまで感想を書いてきたが、この作品に関してはミステリー要素が至極高い為、ネタバレは避けた方が良い類ではあると思う。

しかし、そうすると、ディティールに欠ける無味乾燥なレビューになるのが気に掛ったが、要は何処までネタバレするかという匙加減の問題である。

基本的にネタバレに関しては余り気にしないで書いてる事が多いが、結局は個人的な主観に委ねられる処だろう。


読了した感想として、最後のダンチェッカーの演説が腑に落ちなかったりと不満点もあるが、それも続編を読むモチベーションとなるのかもしれない。

全四部作の大作であるが、何とか「巨人たちの星」までは辿り着きたい処である。