こんにちは、中小企業診断士の鈴木崇史です。
さて、これは何の数字でしょうか?
245万人
127万社
650万人
22兆円
これは、10年以内に70歳を超える社長の人数(245万人)と
そのうち現在後継者未定の企業数(127万社全企業数の1/3)
そして失われる雇用(650万人)失われるGDP(22兆円)です。
経営者の後継者問題は喫緊の課題として注目されています。
(総務省・帝国データバンク資料より)
経営者の子供に生まれるなんてラッキーなことではないでしょうか?
御曹司です。
しかし、後継者未定企業のうち23%の企業は後継候補に
引継を拒否されています。
また、後継者は子供や従業員に決めている企業でも
いざ、伝えると拒否されるケースが多いです。
ですので、後継者は決まっていると思っている方も安心できません。
円滑な事業の引継には10年かかるといわれています。
現在55歳以上の経営者、そして跡継ぎになる可能性のある方は
後継者に引継を拒否されることのないように今から準備を進めることが肝要です。
では、後継候補に引継を拒否される1番の理由とは何でしょうか?
中小企業基盤整備機構によるとある理由が59.8%を占めています。
それは「経営者保証」の存在です。
多くの企業が銀行融資の際に
借主:法人
連帯保証:社長個人
で契約をしていないでしょうか?
契約時には大規模な企業でなければ、経営者の保証は求められます。
また、連帯保証契約を結ぶことで、お金を借りやすくなります。
しかし、連帯保証は外すことができます。
それにはガイドラインがあるので基準を満たすことで連帯保証を外し
後継者が安心して引き継げるようになるのです。
では、次回は「事業承継のポイント①経営者保証の外し方」
その次は「事業承継のポイント②2代目経営者のお困りごと」
をお送りいたします。
こんにちは中小企業診断士の鈴木崇史です。
前回、企業の後継者問題の深刻さをお伝えいたしました。
22兆円の国富が消滅しかねない事態です・・・
国債で穴埋めすると・・・国民一人当たり・・・20万円、そんなに追加で税金払いたくないですね。
さて、社長を引き継ぐのを拒否した後継候補の60%が理由に挙げる「経営者保証」の外し方を見ていきます。
金融庁などのHPでは経営者保証ガイドラインを見ることができます。
ポイントは3つです
①法人と経営者との関係の明確な区分・分離
②財務基盤の強化
③財務状況の正確な把握、経営状態の透明性の確保
たったこの3点です。やれます!やりましょう。
私がこのガイドラインをみた当時、銀行の融資担当者でしたが多くの企業は当てはまらないと感じました。
主な問題点を見ていきます。
①について
多くの企業の決算書に経営者貸付金、経営者借入金という項目があります。会社と経営者の貸し借りです。
創業者は会社と一体なので創業当初は当たり前です。しかし、卒業しなくてはいけないものです。
②について
自己資本を蓄積するには利益を出す必要があります。その過程で税金を払う必要があります。
多くの経営者はそれを嫌って、赤字状態にしておきます。そこで活躍するのが節税ビジネスです。
それでは、いつまでたっても会社を引き継げるようにはなりません。
③について
多くの企業が税理士の指導を受けています。しかし税理士が担当するのは「税務会計」というものであって
ここで金融機関が求めているのは「管理会計」というものです。いわば、それをみれば経営状態が
一目瞭然という会計です。これは多くの大企業が自社の経営のために自主的に行っています。
中小企業であっても会社を引き継ぐためには取り組みが求められています。
まとめ
事業承継・経営承継とも社長代替わりとも様々な言い方がありますが
要は企業が創業者個人から自立する過程と言えます。
創業者の皆さんが子供のように育てた会社を次のステップに進めるためのお手伝いをさせていただきます。
こんにちは、中小企業診断士の鈴木崇史です。
創業融資の活用を考えておられる事業者様は多いのではないでしょうか。
その場合、何が審査のポイントになるでしょうか。
ポイント①事業計画
ポイント②業界経験
ポイント③自己資金
この3点について問われることとなります。
それでは詳しく見ていきます。
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◆ポイント①事業計画
事業計画には何を書けばいいのか、どのように作成すればよいのか。
それについては書店に行けば「事業計画づくりの教科書」的なものが見つかります。
または各種セミナーや創業スクールで学ぶことはできます。
しかし、それではあなたのビジネスに合致した計画書はなかなか作れません。
あなたにビジネスにおいてはどんな数字を見ることが必要なのかを考える必要があります。
そして金融機関担当者の「なぜ?」「なぜ?」攻撃に答える必要があります。
担当者が聞いてくるのは、何も意地悪をしているわけではありません。
貸したお金は、返してもらわなければいけないので、この事業は成功しそうかどうかを
真剣に確認しているのです。
あなたのビジネスでカギとなる数字は何でしょうか?
会員数でしょうか?
紹介率でしょうか?
顧客単価でしょうか?
ちなみにこの3つは一般的な決算書には載らない項目です。
しかし、チェックすべき重要な数字である場合があります。
(税務会計と管理会計の違い・・・詳しくは改めて)
書籍やセミナーでの事業計画書の丸写しでない生きた事業計画を作っていきましょう。
こんにちは、中小企業診断士の鈴木崇史です。
引き続き『なぜ倒産』(日経トップリーダー編)の事例を通じて研究を深めていきたいと思います。
前回、執筆者の原因分析の甘さを指摘しましたが今回も同じく、分析が弱いと言わざるを得ません。
ですので本書はこれを題材として経営者やコンサルタントが議論するには最適かもしれません。そんな勉強会もやっていけたらいいと思い始めてきました。
さて本題に戻ります。
CASE⑤カネテツデリカフーズ(水産練り物製造・販売)
本章の題名は『うま過ぎる話しに飛びつき連鎖倒産』とあります。
連鎖倒産とはどういうことか
企業間取引は現金では決済しないことが多いです。
掛け売りをします。
100万円の商品を今月10個納入すると、翌月末にまとめて支払われたりします。
ですので商品を納入した「お客」がつぶれた場合、その代金を回収できません。上記の例ですと1,000万円の売り上げがなくなります。経費が800万円で利益が200万円の予定だったら・・そのまま800万円の赤字になります。800万円の赤字を解消するには・・4,000万円新たに販売する必要がありますね・・
上記の例の通り、大口の顧客が倒産すると連鎖倒産に繋がるケースが一般的です。
しかし、今回は仕入れ先の破綻です。こちらが支払い側なので商品が入ってこなくなるのは痛いですが、資金繰りが一気に苦しくなるような性質のものではありません。
本件では仕入価格を下げるために大量の仕入れを買い戻し条件付きで行っていたとあります。本書でも仕入れ先の意図が分からないとしていますが、イマイチ狙いは不明確です。
「冷静になって考えれば、危ない取引だったという指摘はよくわかる。ただ、取引を始めた当時その危険に目を向ける人間は皆無に近かった。有力な銀行から融資を受け、取引先にも大手企業がずらりと並ぶ。それに加えて信用調査機関の評点も高かった。これだけの条件がそろっていて、それでも『お前が悪い』と言われるなら仕方がない」当社の社長の弁だ。
私はそこまでおかしいことは言っていないと思います。
しかし、いくら優良企業だと思っても買い戻し特約のような複雑な契約を仕入れ先と結ぶ必要はなかったはずです。とる必要のないリスクをとってしまったことは事実です。
当社社長が稲盛和夫氏(京セラ創業者・JALを再生)から「すべてあなたの心に原因がある」と言われたそうです。
別の有名な経営コンサルタントの故一倉定氏は「太陽が東から上るのも社長のせい」と経営者に対して徹底的に自責を求めています。
優良な取引先の破綻は不運かもしれません。しかし、とる必要のないリスクをとってしまったことは経営者の責任です。
当社社長は稲森氏の指導ののち、態度を改め、企業も再生したとのことです。
こんにちは、創業と融資の専門家:(経済産業局)認定支援機関の鈴木崇史です。
本日は橋本卓典著『捨てられる銀行3~未来の金融』を通して、組織の在り方について考えていきたいと思います。帯に金融マン必読とありますが、本書はビジネスマン必読です。
本書の前半は銀行が置かれている状況を解説しています。もともと銀行内部にいた私としてはあまりにもリアルで悲惨な状況で読んでいても苦しくなりました。
ただ、苦しい現実を確認して暗くなるのが目的ではありません。
本書では地域金融機関のあるべき姿を次のエピソードに込めて述べています。
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(融資を受けたベンチャー起業家の言葉)
「信金の皆さんが我々のベンチャーの一員のようでした」
(著者)
研究者やベンチャー起業家でも分からない研究の成果を銀行員に分かるはずがない。では、地域を活性化させる化学反応をもたらす可能性の芽を銀行員の手で摘んでいいのか。
若者たちの本気をどう受け止めるのか。駆け抜ける若い力を必死に追いかけ応援していくことも素晴らしい価値なのだ。
--------------
お金の貸し手という立場ではなくビジネスパートナーとして同じ方向を向く、立場を超えて知恵を出し合う本気の付き合いをしていくべきということです。
もともと「銀行は立場が強い」という前提で様々な規制に縛られています。
銀行の定期的な転勤もその一つです。
顧客と仲良くなり過ぎないような仕組みになっています。
しかし、それでは地域の発展に尽くす意欲を養うことは難しいでしょう。
顧客と向き合う金融機関が求められています。
一方で、ノルマ達成に走るあまり、過剰融資に走った例として商工中金やスルガ銀行の資料偽造(データを偽造して財務状況を良く見せてお金を貸せるようにした)の問題も指摘しています。悪事がばれて大問題となりましたが、お金を借りることができた事業者やマンションオーナー、不動産業者はとても喜んだことでしょう。
さきほど、顧客と向き合うべきと言いましたが、上記の例には何が欠けているでしょうか?
本書ではそれを「フィデューシャリー・デューティー」(信認を受けた者が履行すべき義務)と指摘しています。
「患者の要望通りに診察し、診断書を書き、処方箋を出す」
そんな医者は危ないですよね
「時に諭し、苦悩に寄り添い、真に患者の健康を想い、最適な医療を探求し続ける。」
そんな医者がいいですよね
しかし、ビジネスにおいてはクレーム恐れたり、他社との競争の関係で「患者の言う通りにする医者」のようになってしまうことがあるのではないでしょうか・・・・
多くの営業現場でおきている悩みではないでしょうか・・
さて、問題をおこした商工中金は生まれ変わって未来を変えることが出来るのか、、、について本書では
「結局のところ当事者次第だ」とあります。
また「本書には若手社員有志の心の叫びを刻んでおく、あらゆる金融機関、それ以外の企業にも共通する」として
「上がやらせたいことではなく、現場を知る担当者がやりたいことをみんなで考える組織になって欲しい」と指摘しています。
本書では銀行の研究に終わらず、組織そのものへの考察をしています。
「何かのトラブルやミスがあった場合、旧来型の組織は個人の責任割合の特定を急ぐ、しかし学習する組織はシステム・プロセス全体の脆弱性にフォーカスする」と・・・
商工中金もスルガ銀行も
金融機関以外では、東芝もそうですが
不祥事を起こしたのは個人の責任ではないと考えます。組織として学習しなければ何も変われません。
最後に本書では格言をいくつか紹介してくれています。
リバネス副社長井上浄さん
「仕事を事に仕える、ではなく事を仕掛けると読む」
ポパー
「信の無知とは知識の欠如ではない。学習の拒絶である」
あなたの組織は学習する組織でしょうか?
個人のせいにして何も変われない組織でしょうか?
こんにちは、中小企業診断士の鈴木崇史です。
本日はいつもの記事と少し趣を変えて、
先日の台風被災地訪問と無料専門家相談会で感じたことをお伝えします。
専門家は総勢11人です
弁護士3人、司法書士3人、建築士2人、
土地家屋調査士・社労士・診断士です
主だった専門家勢ぞろいという感じです
上の写真が神奈川県相模原市の藤野という被災地です。ここは駅前なので静かでした。
そして、相談現場の藤野総合事務所ではすべての階の窓口が土曜日にも拘わらず開いていました。(普段からなのか、震災があったからなのかはわかりません)
ここは、お疲れ様です。としか言いようがありません。
では、どんな相談だったか
家屋に入ったがれきの処理
仮設住宅の申請
移転費用の助成
河川氾濫に対し、県への補償要求のやり方
ほぼすべて、市や県の方への質問でした
やはり震災復旧の初動は行政の役割が大きいと感じました。
そんな中である相談者の方(40代?男性)
はご両親の住宅が全壊となって、移転費用の補助などの申請方法を役所の方に聞いて
「先生方、こんな相談でお時間をとってすみませんね」
と帰ろうとされたので
「次の家は賃貸にした方がいいですよ」
と言いました。完全に中小企業診断士ではなくFPとしてのアドバイスですが・・・
親御さんは70代。火災保険の保険金や行政の援助で
住宅を買うことはできます。しかし、相続が発生したらどうなるでしょうか・・・
「実は4人兄弟なんだよね」
「そうか、相続のことも考えて家を考えないとな」
と補償の受けやすさなど、短期的な視点でなく、
長期的な視点で今後のことを考えてくれました。
「いやー災害にあうと、目の前のことしか考えられない、
でもそれでは後で困ってしまうよね、相談してよかったです」
その方にとってお役に立てただけでなく、
私自身も専門家としての役割を再確認しました。
関係が浅い相手に聞かれたこと以外を伝えることは
時に勇気が必要です。
「そんなことは求めてない」なんて言われそうです。
しかし、相手にとって必要なことを伝えるのが
専門家の役割です。
聞かれたことを答えるのではなく
気づきを与えること
ありがたい経験をさせていただきました。
こんにちは、中小企業診断士の鈴木崇史です。
引き続き『なぜ倒産』(日経トップリーダー編)の事例を通じて研究を深めていきたいと思います。
今回は本書の記事の執筆者と私の意見の相違も見どころ(?)です
CASE④カンキョー(空気清浄機の製造・販売)
本章の題名は『返品の山に潰されたファブレスの旗手、主力商品の競争力低下で売上高半減』とあります。
ファブレスメーカーとはファブ(工場)を持たないメーカーのことです。
メーカーには普通工場があります。しかし、特殊な商品を企画販売することができる企業であれば製造工程を外注しても経営が成り立ちます。
工場などの不動産を持たない経営は経営戦略のセオリーに沿ったものです。
記事の中でこの「持たざる経営」が悪かったかのような分析をしていますが、私の見方は異なります。
倉庫会社との契約解除の際は残った在庫を引き取らざるを得なかったのは誤算ではありますが、経営不振の「結果」であって「原因」ではありません。
次に当社の主力商品のイオン式空気清浄機が、大手他社のファン式空気清浄機に押されてしまったことについて述べられています。そして、当社が流行しつつあったファン式を取り入れなかったことへの批判が記載されていますが、これも結果論でしかありません。
イオン式にこだわって次の商品を開発するのもありです。
中々今回のテーマは倒産の原因が見えにくいですね。
開発体制について、社長が自宅で考えて、商品化はやりたい社員に都度任せていたとあります。
当社は生産設備もなく、販売も代理店が行っています。ですので商品企画が命のはずです。例えばアイリスオオヤマでは商品企画者は多くの社内審査を経て却下されたり、ダメ出しをされたりしながら商品力を高めています。
当社は社長が考案して、社員が商品化するのであれば、商品力を高めるためのチェックもダメ出しもないと考えられます。社長の発明ではだれも文句が言えません。
結局当社の強みは組織としての商品企画力になく、社長一人の発明力でしかなかったということなのでしょう。
ファブレスメーカーが商品企画力に強みを持てなくなったらどうなるか・・・何もないです。挽回するには、商品企画力をもう一度高めるしかありません。そのための方法については私は一つしかないと思います。
現場を見ることです。この場合の現場は消費者であり、販売現場です。
利用者は何を求めているのかについて複数の商品開発者が考える必要があります。社長一人ではいけません。(3人集まれば文殊の知恵)
本記事は原因への踏み込み不足を指摘せざるを得ません。特に当社社長へのインタビューで破綻の要因について5つ挙げていますがどれも原因ではなく結果です。
本ブログの題名では「セオリー経営は悪いのか」と投げかけました。ファブレス経営のことです。私の結論はNOです。
企業の強みに集中して、それ以外を外部委託するのは理にかなっています。しかし、それは選んだ強みを絶対に磨き続けなくてはいけません。当社の場合は商品(企画)力です。社長一人の発想力に頼りっきりでは余りにも脆弱です。組織として強みの部分を徹底的に磨く。それこそが成功のキーです。
こんにちは、中小企業診断士の鈴木崇史です。
引き続き『なぜ倒産』(日経トップリーダー編)の事例を通じて研究を深めていきたいと思います。
再掲:「賢者は歴史に学ぶ、愚者は経験に学ぶ」
他者の失敗例の蓄積から学んでいきましょう。
CASE③ナカテック(産業機器の製造・販売)
本章の題名は『脱3Kの夢掛けた新工場の挫折』とあります。
従業員の快適環境を実現した工場です。屋上庭園もあったそうです。
福利厚生の充実。素晴らしいですね。
年商7億円の企業がこの工場の建設に14億円を投じたそうです。
その社長は倒産後にも、新工場の建設に後悔はないと述べています。
従業員が働きやすい環境とは、豪華な設備でしょうか、オフィスでしょうか。たぶんそんなものではないのでしょう。
休みをとりやすかったり、リモートワークが出来たり、
提携の保育園があったりと
豪華な不動産ほどお金をかけずに従業員に満足してもらうことはできたのだと思います。記事には記載はありませんがこの「夢の新工場」の建設について従業員の意見は聞いたのでしょうか・・・
この手の話で金融機関の話をうのみにしてしまってはいけません。
私も銀行出身だからこそよくわかります。
彼らはお金を貸すのが仕事なのです。
また、この企業にとどめを刺したのは92年に顧客である大手2社からの発注がパタリと止まったことだと述べられています。その後の新規開拓が思うようにいかなかったようです。
本書では①新工場の建設と②大手顧客との取引停止③その後の自社ブランドの新製品の失敗を倒産の要因としています。
しかし、もっと重要なのは大手2社との取引が順調な時期から新規顧客の開拓や自社ブランドの開発を行っていなかったことではないでしょうか。
好調な業績に胡坐をかいていたといっては言いすぎでしょうか?
本記事には、大企業との取引がほとんどなくなると、当社の信用も失墜したと述べられています。
本事例の教訓では大手取引先があるうちに、別の顧客開拓をすることの重要性を示唆してくれていると感じます。
この事例に登場するのは社長と金融機関くらいです。意見を言ってくれる経営幹部はいなかったのでしょうか・・・新工場のことといい、経営者の一人相撲に見えてしまいます。
こんにちは、中小企業診断士の鈴木崇史です。
前回に引き続き『なぜ倒産』(日経トップリーダー編)の事例を通じて研究を深めていきたいと思います。
是非お付き合いください。
「賢者は歴史に学ぶ、愚者は経験に学ぶ」といいます。ベテラン経営者の方もせいぜい数十年の人生経験から答えを導きだそうとせず、他者の失敗例の蓄積を学んでいきましょう。
CASE②昭栄化工(オートバイヘルメット製造・販売)
本章の題名は『ギアチェンジを忘れたワンマン社長の誤算』とあります。
また「強気の経営も市場が伸びているときはいい。しかし、守りが必要な時期もある。バブルが弾けてこの弱点が表面化した」○○社長には(中略)状況に合わせた経営のギアチェンジが出来なかったようだ。
と記載されています。バブル崩壊期に経営に失敗した企業への評論としてこの手の物は多いです。
しかし、私は景気の変わり目を確実に予想しギアチェンジできることなど不可能だと思います。
一方でバブル期に痛手を被らなかった数少ない金融機関があります。
私の古巣の北洋銀行です。
当時の武井頭取という方は「異常なことは長くは続かない」という考え方のもと、バブルの途中からアクセルを踏むのをやめていました。
それならできるのではないでしょうか。
社長としては絶好調の業績の中、どこまでもアクセルを踏みたくなるものです。しかし、歴史観として「異常なことは長くは続かない」と頭の片隅に置いておくことが必要です。
そして会社の業績が絶好調の時にこそ、慎重論を言ってくれる補佐役が必要になります。良薬は口に苦し。
もう一つ本章でも指摘されているのは「ワンマンであるがゆえに有能な役員は次々に辞めていった」という点で『なぜ倒産!?①』の企業とも共通します。
そもそも社長は自らの過ちを認められず、方針転換をしにくいものです。
しかしそれは方針転換が悪いこと、恥ずかしいこととの思い込みによるものです。
中国の古典ではリーダーの頻繁な方針転換を「朝令暮改」として良くないものとする一方でリーダーがガラッと方針を変えることを君子豹変と言葉で表します。実はいい言葉なのです。
私の前職の経営者は「朝令暮改」よりもスピーディーな方針転換を良しとして「朝礼昼改」を経営方針としていました。
今からでも遅くはありません。あなたの会社でも「異見会」と「朝礼昼改」を取り入れて、君子豹変を良しとしてはいかがでしょうか。
こんにちは、中小企業診断士の鈴木崇史です。
年間10万社の企業・個人事業がつぶれます。
起業をしたら楽して儲けられるほど甘くはありません。
それでも夢がある、志があるのであれば、
失敗した諸先輩企業のやり方を学び、同じ失敗をしないことが大切です。
今回は『なぜ倒産』(日経トップリーダー編)の事例を通じて研究を深めていきたいと思います。
是非お付き合いください。
「賢者は歴史に学ぶ、愚者は経験に学ぶ」といいます。ベテラン経営者の方もせいぜい数十年の人生経験から答えを導きだそうとせず、他者の失敗例の蓄積を学んでいきましょう。
CASE①友禅の館(呉服の販売1991年末倒産)
びっくりなことに最初の事例は呉服販売の企業です。
私の前職は成人式振袖レンタル販売の会社です。創業者会長の経営担当秘書として企業の伸びる姿と崩れかけた姿を見ることが出来ました。
本書の事例には驚くほどの共通点があり、日ごろから他業種から学びましょうと訴えていますが、同業他社の研究でも生かせることが多いのだと再確認しました。
表題は「管理体制と人のほころびから瓦解した呉服業界の寵児」とあります。
1986年 売上高 7.4億円
1987年 売上高 13.1億円
1988年 売上高 32.7億円
1989年 売上高 55.5億円
1990年 売上高 145.6億円
急成長中であった当社が延びた要因は販売力とマーケティング力でした。間違いなく経営者にその力があったのでしょう。
しかし収支の管理がずさんで、利益が出るのかどうかが分からなかったといいます。
数字一つの確認でも誰に聞けばいいのか分からなかったという証言もあります。
最後は経営管理をしっかりすべきという幹部社員の言葉に耳を貸さずに大量の離反を招いたそうです。
経営者に限らず、人は苦手なことから目をそむけたくなります。また、成功してきた社長であればあるほど、弱い分野の話をされるのはイヤなことです。良薬は口に苦しです。
江戸時代の福岡藩では異見会という会議があり藩主の方針と異なる意見を奨励していました。そういった仕組みを今こそ学ぶべきではないでしょうか。
それでは、なぜ利益の管理が重要なのでしょうか?
それは「利益」とは理論上の存在だからです。
例えば、10,000円で仕入れたデスクを20,000円で売った時の利益は
いくらでしょう?
直感で10,000円です。
しかし、仕入れや店内の陳列などにアルバイト代2,000円がかかったり、店舗の電気代が1日1,000円かかっているから・・・商品1個あたりはどうかなど隠れたコストが色々ありそうです。
一方でデスクが売れるとセットで椅子が売れたりすることもあります。ですので隠れた利益が5000円あると考えてもいいでしょう。
税務上の利益と実際の現金の動きも違ってきます。ですので商品一つを仕入れたり、売れたりするごとにどのくらいの利益(時には赤字)が発生するのかについて把握することが重要です。
それが把握できて初めて仕入れの値段や販売価格を決めることが出来ます。
価格設定と販売目標が正しいとき、優秀な販売スタッフはひたすら売上の増加に走ることができます。売上≒顧客への価値≒企業の発展が初めて繋がるのです。
あなたの会社で手がかかる割には利益にならない商品を扱っていることはないですか?
仕入れるほど赤字につながる商品がないか、商品ごとの見直しが重要になります。
このケースでは成長期に販売・マーケティングが好調で、後回しにしがちな経営管理の重要さを示しています。負けない体制づくりをしていきましょう。




