今日はお散歩日和の良い陽気だった。

岩本町から小伝馬町へ、上機嫌でウォーキング。

あー、ハナミズキもあっという間に咲いちゃった。
サツキも次々と咲いているし、やっぱり気温が高いってことだなぁ。と思いながら、信号を渡る。

ふと、なにかが気になり、振り返った。

あ、なんか、良いな。


なにか分かんないけど、ぜったい良い。これは素通り出来ない。と踵を返す。


初めてのお店に入るのって楽しい。

事前になにひとつ情報もない通りかがりのお店だったりすると、なおさら。

じゃあ、プアオーバー、いただこっと。

レジを済ませて、いただいた番号札をテーブルに置く。

しばらくあたりを眺めていたら、番号を呼ばれたので、エスプレッソマシンの脇に受け取りに行った。

香りを確かめて、ひとくち啜る。
最初にストーンフルーツ系のフレーバーが顔を出したけれど、それはほんの少しの間だけ。 

やわらかな口当たりのあとは、黒蜜のようなフレーバーが広がった。

ふだん、浅煎りや中浅煎りばかりだなぁ、と実感した。中深煎りや深煎りは、あんまり飲まない。飲むとしても、プアオーバー以外。

あー、この感じ。ほっとする。コーヒー豆のポテンシャルが高いのはもちろんだけど、切れ味の良いコクと上品なこし餡のような甘さが際立つのは、素敵な抽出だからこそ。

上を向いたら、黒糖のような香りが鼻に抜けた。温度が下がるにつれて、甘みがどんどん増していく。
喉の奥にかすかにハッカ飴のようなフレーバーを感じた。飲み終えたカップは、麩菓子のような香りが残っている。

素敵なコーヒーのプロフィールは、ブラジル産ということ以外、分からない。くわしいことをバリスタに訊くこともなく、そのまま席を立った。

ただただ、おいしい。それって一番すごい、と思った。

と、いうわけで表題へ。

いま飲み終えたコーヒー同様、分からないのが自分の現在地。ここは何処かは分からないけれど、わたしが誰かは分かっている。せやから上出来。ちゅうわけにはいかへん、あほちゃうか。 

交差点の脇にある「現在地はここです」の地図看板をじーっと見る。

へぇ、馬喰町一丁目。って、どこやろ? 

ふぅん、馬喰町駅、近そやな。このまんま右に歩いてけば、行けるんちゃう(地図上では)

それにしても、岩本町駅から小伝馬町駅へ向かっていたはずなんだけどな。浅草橋手前に来ちゃってたなんて、へーんなの。

シナモンクッキー買って帰りたいけど、小伝馬町まで行けるやろか。
お腹空いて餓死するんちゃう?せやけど、外食せーへん。太麺焼きそば、ランチに作るねんで。としょーもないことをつらつら考えながらのウォーキング。

こんなことになるとは知らず、スニーカーを履いてきて正解だった。迷子になったとはいえ、足取りは軽く、背中まで息がしっかり入っているから大丈夫。

なんだか問屋さん街っぽいなぁ、と思いながら歩いていると、ふいに見覚えのあるLAWSONが目に入った。
その瞬間、「芥川龍之介やー!」と思わず泣きそうになった。「トロッコ」出すの、オーバーなことないか?

そしたら馬喰町駅、すぐそこじゃん。

というわけで、無事シナモンクッキーとココナッツクッキーを買って帰宅した。

すっごく素敵なコーヒーが飲めるカフェを見つけたし、岩本町駅から馬喰町駅までのルートも覚えたし。

よかったよかった。2週間後に岩本町に来る楽しみが、またひとつ増えちゃった。