意味深な誘い | Midnight Tripper

Midnight Tripper

深夜の街や酒場で繰り広げられるさまざまな人間模様を実体験を元に脚色を加えて書き綴ってみたいと思っています。

いつもは深夜まで忙しい店なのにその日は比較的引きが早く、午前1時過ぎには静かになった。


カウンターには女性が一人で飲んでいた。
すらっとしており長身でスタイルの良い美人、飲んでいたのは確かフィンランディアウオッカのロックだったはずだ。


2杯目に口を付けたあたりで彼女が話しかけてきた。

「聞きたいことがあるのだけれど、いいですか?」


何のことかと思えば、「一般的な日本の人はフィリピンの人を下に見ますか?」と。

難しい質問だ下手に答えられない。


「そういった人も少なくは無いけれど、みんなでは無いですよ」
と中途半端な答えをしてしまった。


彼女は「そうですよね」とポツリとつぶやいた。

「あなたはどうですか?」

と問われたので、


「私は特に差別はしていませんが、その人が好きか嫌いかということの方が重要ですね」と、また微妙な答えをした。


しかし、その後も彼女と色々話しをしていくうちに仲良くなった。
日本語が上手な彼女はマニラ出身のフィリピン人なのだそうだ。

ホステスとかではなく、かなりのエリートらしく、仕事で日本、アメリカ、フィリピンを行ったり来たりしているらしい。英語も完璧なのだそうだ。


たまたま近くのホテルに宿泊していて、何となく飲みたくなってふらっと入ってきたらしい。お酒も強く、4~5杯飲んだ頃だろうか、、


「何時までですか?」と質問された。

4時で閉店と告げると、そうではなく私の帰る時間を知りたかったらしい。


片付けをしてからなので5時近くなると告げると、、、残念そうな顔をしたが、彼女は「あなたは私のことをもっと知りたくないですか?」と言ってきた。


どんな意味で言ったのかは判らないが、意味深だった。
「もちろん知りたいですが、今日は私に時間が無いので残念です」
としか言うことが出来なかった。


彼女は残念そうにしていたが、間もなく会計を済ませ、「また東京に来た時に飲みに来ますね」と言い、店を出て行った。


しかし、その後彼女を見かけることは無かった。
あの日、彼女の誘いに乗っていたらどんな展開になっていたのだろう?


20年以上経過した今でも記憶に鮮明に残っている出来事だ。