同じところをグルグル回る犬。
君にしかわからない宝物がそこにはあったんだろう。
端から見ればそれはとても滑稽に映って、でも盲目な君はそんな事おかまいなしで。
グルグル回る。同じところを何度も。何度も。
君の気持ちを知ろうとして、一緒にグルグル回ってみる。
そしたら、君の世界にどんどん入っていって、そこで、カラカラと回る映写機の音を聞いたんだ。
ネガが光で焼けてセピア色をしている。
大切にしまう事が出来ず、ずっと側に置いていたから切ない色をしているんだろう。
思い出は、美しい。
でも、それをいつまでも側に置いていたら、うまく前に進めないんじゃないかな。
答えはすぐに見えてくるものじゃないし、君の答えは君の中にしか無いから、僕にその最深部へ行く事は出来ない。
ただ僕は、ドアの前でささやいたり叫んだりするだけ。
そこをグルグル回る君にしか聞こえない声で。