武道館に到着するといきなりベストアルバムとツアーの告知。

30箇所以上あるのでは?というくらいのスケジュール。

しかし、待望の武道館ライブは何もかもいつも通りだった。

10分前に佐々木が客席を通ってステージに立ち、リハをする。

『本気で生きているのなら』の2サビあたりから定刻になり、3人がステージに現れて合奏する。

客席の照明もつけたまま、特別な衣装も派手な演出もない。

佐々木は寝っ転がるし、下に降りようとするし、曲を入れ替える。

通常営業だったが、違うのは我々の高揚感くらい。

「よく来たね、来てくれてありがとう」

その一言だけでも会場内が沸く。

並べられたいくつものロックンロールを聴くたびに、僕らは勝手に勇気をもらっている。

こんなに大勢のファンと共にいることがこそばゆい。

どこにいたのさ、今まで。


アンコール、リュックの中から歌詞カードを並べる。

直近できたであろう新曲を披露。

何度も叫ばれる「ロックンロール」が頭に残る。

どん底に落ちた人間の光になるような輝きがあった。

あれ、フラッドって今までもそうだったな。

誰も見てないような努力、踏まれていた花、傷ついても言えずにいた気持ち。

それらを認めてくれていると思っている、僕の勝手で。

決して満たされることのない渇きにもがいているように見える。

そんな佐々木の姿を、声を、フラッドを味わいたいのだろう。

難しいことはわからないけれど、信頼は確かにある。

彼らの曲が好きなことはわかる。

「明日、下北沢シェルターでライブやります」と、これまた突然の告知にオーディエンスは困惑、もはや爆笑。

ステージ上でギターを片づけ、スタッフや客席に手を振って、当たり前のように去っていく佐々木亮介をみんなで見送った。

これがただのパフォーマンスに思われてしまうか心配だが、4人が1秒でも長く、楽しく演奏してくれることを祈る。

『プシケ』が武道館で鳴り響いた事実と、誇らしげな4人の姿。

ちゃんと刻んだよ、楽しかった。



end