ららアリーナ。
船橋にあるららぽーとの隣に生まれた、10000人ほど収容可能なアリーナ。
7/6に柿落としがされ、そのアーティストがMr.Childrenだ。

できたばかりの会場ということで、やはり綺麗だけでなく音響がとても良かった。
サイド席だとどうしても片耳だけ耳に違和感が残るものだが、それもなく、楽器とボーカルはお互いが独立して声がすっと耳に入った。
終演後は、ららぽーとと南船橋駅に行く人が入り乱れて混雑が多少あった。



以降ネタバレありです。







『miss you』は、数週間前に初めて聞いた。
先行して『ケモノミチ』は聞いていたが、周りからはマイナスな意見が多く聞こえた。
ミスチルの才能は枯れた。
駄作。
一周聞いただけだと、確かに明るくポップな曲やずっしりとした重めの曲などの目を惹く曲が少ない。
しかし、前回のライブ「半世紀へのエントランス」を振り返る。
50周年を見据える彼らがやりたいこととは?
これまで数々のヒット曲やCMで耳にした誰もが知る曲を生み出してきた。
今後もそれに縛られて生きていくのか?
売れることを意識せず、やりたいことをやる。
その方向にシフトしているのだと思った。
長年一緒だった小林武史と離れ『重力と呼吸』が生み出された瞬間、面白くなってきたと胸がざわついたことを思い出した。
売れるとは別に、音の幅が広い面で面白いと感じた。
話を戻すと、目を惹く曲がないと感じた『miss you』は、ライブを経て完成するアルバムとしてはどんな印象に変わるのか。
一番の楽しみはそこだった。


会場内SEが終わったと同時に暗転。
草をかき分けて歩みを進める映像。
『叫び 祈り』が聞こえる。
ニューアルバムの幕開けと思いきや、まさかの始まりだった。
爪弾くアコギから始まる『I MISS YOU』、桜井さんの声が会場中に溢れていく。
澄んでいて、憂いを含んでいる。
繰り返す「I MISS YOU」の歌詞がこだまして、もどかしい気持ちになった。
JENのスティックの音が深みを増して、曲に溺れていく。
映し出されるややモノクロなメンバーの映像。
そこから混沌とした映像に切り替わり、激しいロックの『REM』が繰り出される。
やっぱり一筋縄ではない。
熱を冷まさぬうちに『アンダーシャツ』と続く。
クールダウンに移行するために『Everything (it's you)』を披露するも休む暇がない。
やっとこさ軽いMCタイムに。
「一瞬でも一秒でも早く会いたい、そんな気持ちを歌った曲です。聞いてください『靴ひも』」
歓声があがり、背後のスクリーンに一本の紐が現れる。
この紐が以降で重要になる。
歌い終わるとその紐が『Fifty's map』の文字を描く。
時折、ナカケーや田原さんと目を合わせてにっこり微笑む。
その光景を見るたびに、意思が同じなんだなと安心する。
30年以上一緒にやって、誰か一人でも向く方向が異なることなんてよくある話。
だからこそ、僕はメンバー同士の表情が1番気になるのだ。

今回、いつもとライブの演出が大きく異なった。
これまでだったら、演奏、映像それだけで完結していた。
しかし、メンバーがいつもより積極的に曲の世界を体で表現していた。
例えば『Are you sleeping well without me』ではステージ端に用意された照明横に座り歌う。
『アート=神の見えざる手』では逆サイドに座り、シルエットの映像と合わせて歌い、定点カメラを見ながら言葉を紡ぐ。
アンコールの『Hallelujah』では、序盤は桜井さんとSunnyだけの構成だったが、ラストには残りの3人も加わり、田原さんとナカケーはドラムを叩いてコーラスをする。
見たこともない曲に入り込むメンバーに興奮を覚える。
これらは演出家のアイデアなのか、はたまたメンバーのアイデアなのか。

Sunnyのピアノから『血の管』が始まった。
この辺りから、なんとなくテーマのようなものが見えてきた。
『ケモノミチ』が本編のラストを飾らないあたりで確信した。
これは、僕らへのラブレターなのだ。
『365日』の率直な愛。
前半の『靴ひも』は早く届けたくてうずうずしている気持ち。
「久しぶりに聴いたらいい曲だと思った」と笑顔を見せた『End of the day』は日々への鼓舞。
極め付けは『未完』と『終わりなき旅』だ。
日々の生活で苦悩や悲しみを味わって、それでも明日へのドアを開けようとする。
桜井さんはこう話す。
「みんなが秘めている翼が少しでも広がるように。それが一瞬でも、1週間でも、1年でも長く広げられるように僕らは鳴らしています。」
頑張れという言葉や救いを与えているわけではなく、あくまで僕らの潜在的な能力や力を底上げできるように。
感謝を含めた愛のあるラブレターが、僕らに届いた。
スクリーンにずっと伸びていた紐は、鳥に変わった。
その鳥が届けるのは、音楽なのだ。

高校生だった僕と共にいたMr.Childrenは。
数々の人と音楽に出会い、30周年を迎えてから大きな変革期に入った。
恋しい、会いたい、大切に思う存在を、存在にメッセージを送る、知るようなライブだった。
そして派手な演出のない分、シンプルかつ濃くとどけられた。

まだまだまだまだ面白い。
むしろこれからなのだろう。
僕の大好きなMr.Childrenは。





end