そのステージを見るまで。

いや、見た後でも信じられない日になった。

THE NOVEMBERSとの対バン。

そこで改めて、僕は彼らの大きさを実感したのだ。

そう、あの頃のmol-74とは違うのだ。

 

 

今年初めて僕はノベンバのライブを見る。

4曲入りEP『TODAY』をリリースしたものの、ツアーには参加できなかった。

ということで誰よりも興奮していたはず。

颯爽と現れた4人の表情は読めない。

鳴らされたリズム、ドライアイスを気化させたように漂うクリーンギター。

『TODAY』からスタートした。

小林くんの歌声が鼓膜に響いて、視界がぼやける。

死と生の間を肌で感じているような少しばかりの恐怖と紙一重の安心感。

4人のセッションが始まったかと思えば目を醒ますようなギターリフから『Misstopia』へ。

吉木さんのドラムがいつもよりよく見えた。

力強く、メンバーの音を包み込んでくれる。

小林くんが優しさと彼のことを説明する意味がよくわかった。

そこから『みんな急いでいる』、『Cradle』と続く。

特に『Cradle』は高松さんのベースが生で聞くことでより深みが増す。

彼のコーラスも小林くんと混ざり合うたびに美しさを感じる。

駆け抜けていく『Rhapsody In Beauty』から場面が変わり始めた。

小林くんがフロアへ向かって「かかってこい」という仕草をして煽り立てる。

『Ghost Rider』、『Xeno』と続き、瞬時に『黒い虹』へ。

最高の流れだ。

ケンゴマツモトのギターへのめり込む表情が僕にとってはノベンバで酔うための1要素として必要なのだ。

ここでラスト一曲となる場面で、小林くんが口を開いた。

「モルカルの特別な日に、僕らを呼んでくれてありがとう。ベースに新しく入った、エンドウくん?笑 ごめん、、その子が昔uremaというバンドをやっていたんだよね。その頃、ライブを見に来てくれた彼が自信に満ちた顔で僕に「かっこいい曲ができたんで!」ってCDを渡してくれたんだ。謙遜してクソみたいな〜っていう人たちがいるけど、本当にクソなの?って聞いちゃうんだよね笑 でも彼は、そんなこと一切無く、堂々とした表情で渡してくれた。mol-74に加入したことはネットで知って、他のメンバー見ていても、なんて言うのかな、同じような雰囲気なんだよね。自分たちが生み出した曲に自信を持っている。次で最後の曲なんだけれど、今日呼んでくれた彼らが、もちろん君たちも、良い未来でまた会えるように。」

何の曲が始まるか容易に予想はできた。

だけれど、小林くんがいつも口にする「良い未来で会いましょう」という言葉が僕は大好きで、涙が溢れてしまった。

再び交わる高松さんのコーラスと小林くんの叫び。

背景が明るくなるにつれて、シルエットは濃くなっていく。

やはり表情は読めず、僕は溜めた涙がこぼれるのをひたすらに拭った。

 

 

2ヶ月前に見たばかりだけど、わくわくが止まらなかったmol-74。

新曲から始まるという大胆さ。

今日はドラムのばんでぃ側へ行ってみて大正解なほどのセットリストだった。

華麗なハイハットが刻むリズムで駆け出せば『エイプリル』の花吹雪が舞う。

続く『プラスチックワード』は、ゆーとさんのギターメロディがふわりと浮かびつつも、リズムが地面を踏みしめる。

そこからバスドラで目を醒ますと、アルバム『越冬のマーチ』より『ヘールシャム』が始まった。

ボーカルのかずきち兄ちゃんの表情が、懐かしかった。

発売当時は本当に寒くて、それに呼応して3人の表情も切なく、クールだった。

でも今はりょーまさんのベースがあるから、どこと無く強く生きていく1人の人間の背中を描いているように思えた。

『グレイッシュ』と『アルカレミア』は正直、演奏しすぎのような気もするなぁ。

もちろん、大好きな曲なんだけれど。

などと悶々としていると、急にフロアが強い光に照らされた。

『tears』の混ざり合った色が落ちてきた。

その急展開に驚いていると、これまた意外な『まるで幻の月をみていたような』が鍵盤上で姿を現した。

消えそうなその小さな光を揺らがせて、一人弾き語るかずきち兄ちゃん。

この続きのように『夜行』が走り出す。

新しい曲が増えるたびに、そのアルバムのコンセプトを忠実に守っているが、枠を外していても一貫して孤独や安心などの感情が変わらずにある。

だから作品は違うものの、違和感無く感情ごと次の曲へ引き継がれる。

この流れはさすがに震えた。

最後はりょーまさんのベースから始まる『Saisei』で本編の幕を閉じた。

この曲を聴くたびに、彼の存在は欠けてはならないことがわかる。

最近よくライブでかずきち兄ちゃんが口にする「これからの僕らに期待をしていて」という自信を持った言葉。

モルカルのメンバー全員があんなに満ち足りた顔を見せるのは、彼が入ったことも理由の一つであるはず。

最後の1音まで気を抜けず、誰かの袖を掴むように、彼らの音にしがみつきたかった。

アンコールはTHE NOVEMBERSの『chernobyl』を披露。

このギターメロディをゆーとさんが弾くなんて。

この歌詞をかずきち兄ちゃんが歌うなんて。

僕は、幸せに満ちた。

同じように嬉しさがにじみ出ているりょーまさんを直視できなかった。

ラストに向けての盛り上がるドラムもばんでぃらしい音で、モルカル流『chernobyl』を聞くことができた。

間違いない、mol-74は本気だ。

 

 

成長とか、そんな言葉じゃ片付けられない光景がそこにあった。

鳴らしたい音を鳴らすという彼らのマイペースな制作を見守ってきたつもりだったが、想像している以上に彼らは貪欲のようだ。

上を目指す。

それは仲間が同じように上を目指しているから火がついたのか、はたまた創作意欲が向上した上で身についたものなのか。

いずれにせよ、僕が下北沢で出会った時のあどけない3人の表情はもう見当たらない。

先輩バンドに手が届きそうな、そのわずかな距離まで来ている。

目を背けていたけど、彼らは変わったのだ。

僕らはどうする?

そんなことを自問自答して帰路についた。

胸がしばらく熱くなっていて、次の日は強烈な眠気の中、仕事をした。

 

 

end