伊方原発3号炉の設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見を出してみた | がんばらない、でも諦めない

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四国電力株式会社伊方発電所3号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について

パブリックコメント、ネットで出しました。私の意見は最後に付けます。

2015年4月22日の川内原発運転差止仮処分は認められませんでしたが、決定文の最後には以下の記述があります。

決定文の最後
地震や火山活動等の自然現象も十分に解明されているものではなく債務者(九州電力)や原子力規制委員会が前提としている地震や火山活動に対する理解が実態と乖離している可能性が全くないとは言い切れないし、確率論的安全評価の手法にも不確定な要素が含まれていることは否定できないのであって、債権者(原告側)らが主張するように更に厳しい基準で原子炉施設の安全性を審査すべきであるという考え方も成り立ち得ないものではない。したがって、今後、原子炉施設について更に厳しい安全性を求めるという社会的合意が形成されたと認められる場合においては、そうした安全性のレベルを基に周辺住民の人格的利益の侵害又はそのおそれを有無を判断すべきこととなるものと考えられる。

簡単に言えば、「大きな声が上がれば、その時には再度、判断しましょう」と言ってます。

裁判所が出した全文は、ここにあります。

私は長文を出しましたが、以下のホームページに簡単な例文があります。
はがきで出そう!伊方原発パブリックコメント

ネットで出す場合、住所氏名の入力欄がありますが任意なので空白でもかまいません。

私が出したパブコメです。
受け付け番号201506100000340968

1.19ページ4.(1)
「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動(最大加速度水平方向650cm/s2、鉛直方向377cm/s2)を大きく超える地震が起きない」と言えない。

「科学的・技術的意見」とあるため、科学とは何か調べた。科学とは「竹内 薫著『99.9%は仮説』という本のp132-133によると、科学哲学者のカール・ポパーは「科学は常に反証できるものである」と定義しました。どういうことかと言うと、もしその理論がうまくいかないような事例が一回でも出てしまえば、つまり反証されれば、その理論はダメになってしまうということです」とある。

高浜原発3.4号機運転差止仮処分決定書によると「基準地震動は原発に到来することが想定できる最大の地震動であり、基準地震動を適切に策定することは、原発の耐震安全性確保の基礎であり、基準地震動を超える地震はあってはならないはずである。しかし、全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以降10年足らずの間に到来している。地震が人間の計画、意図とは全く無関係に起こるものである以上、かような規制方法に合理性がないことは自明である」とある。

基準地震動の理論は過去に5回も反証されている。最新の科学的・技術的知見を踏まえて見直されているだろうが、地震は過去の記録を集めて仮説を立て理論を作ることはできても、実際に実験を行い、その仮説が正しいか検証できない。そのため、伊方原子力発電所3号機に基準地震動を超える地震が起きないと言えない。基準地震動の超過確率を求めているのが、自ら基準地震動を超える地震がないと言えないことを認めている。反証されており不合理である。

2.176ページ4-1.2.2格納容器破損防止対策
「第37条第2項は、発電用原子炉施設は、重大事故が発生した場合において、原子炉格納容器の破損及び発電所外への放射性物質の異常な水準の放出を防止するために必要な措置を講じたものでなければならないと要求している」とある。

東日本大震災前は、日本の原子力発電所は海外の原子力発電所とは違い、万が一にも重大事故は起きないし、仮に起きたとしても格納容器がないチェルノブイリ原発とは違い五重の壁で守られているため、放射性物質は封じ込められるとされてきた。しかし、福島第1原子力発電所で重大事故が発生し、格納容器が破損し、大量の放射性物質が環境中に放出された。すると今度は、格納容器が破損すると大量の放射性物質が一度に放出されるため、放射性物質を除去しながら放出するフィルタ付ベント設備を取り付けると言う。原子力安全の基本は「止める」「冷やす」「閉じ込める」であるのに、要求している基準は「閉じ込める」を放棄している。フィルタ付ベント設備の取り付けで逃げるのではなく、格納容器そのものが耐えられるようにすべきである。また、福島第1原発4号機では格納容器で保護されていない使用済み燃料プールが危機的状況になったが、伊方原発3号機の使用済み燃料ピットも同様に格納容器で保護されていない。不合理である。

3.結論
最高裁判所第一小法廷
伊方発電所原子炉設置許可処分取消事件
平成4年10月29日判決
「原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」

1.2で述べたように伊方発電所3号炉の原子炉設置変更許可申請書の審査書案は、「現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる」ため、伊方発電所原子炉設置許可処分取消事件の最高裁判所判決の通り、違法と解すべきである。

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