原子炉自分メモ4 放射線防護に対する考え方の変遷 | がんばらない、でも諦めない

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いまさらですが、過去から現在に至るまでの放射線防護に対する考え方の変遷について纏めてみました。remで書かれているところは括弧内にSvに換算した数値を入れてます。




以下、文献の転載です。


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1.原子力発電技術読本(改訂2版)昭和55年3月発行より


ICRPは電離放射線の使用と利益を不当に制限することなく、放射線障害の発生確率を低く保つような数値を許容線量あるいは線量限度として設定している。なお、どんな放射線被曝でもある程度のリスクを伴うことがかると考えられるので、いかなる不必要な被曝を避けるべきであること、および経済的かつ社会的な考慮を計算に入れた上で、すべての線量を容易に達成できる限り低く保つべきであること、すなわち、放射線防護の基本的な原則として、被曝線量は「実用可能な限り低く」すべきであると勧告している。




1-1従事者の許容被曝線量


原子炉の運転または利用、原子炉施設の保全、核燃料物質・放射性物質あるいはそれに汚染された物の運搬・貯蔵・廃棄・汚染の除去などの業務に従事する者で、管理区域に常時立ち入る者


(1)集積線量は5(N-18)remを超えてはならない。【私の例5×(46-18)=140rem(1400mSv)】


(2)3ヶ月間の許容被曝線量は全身の場合3rem(30mSv)、ただし皮膚のみに対する被曝については8rem(80mSv)、手・前ばく・足または関節のみに対する被曝については20rem(200mSv)とする。


(3)緊急作業に従事する場合は12rem(120mSv)を許容被曝線量とする




1-2従事者以外の者の許容被曝線量


従事者以外の者で業務上管理区域に立ち入る者(一時的に立ち入る者を除く)に対する許容被曝線量は年間1.5rem(15mSv)、ただし皮膚のみに対する被曝については3rem(30mSv)とされる。




1-3一般公衆に対する許容被曝線量


(1)許容被曝線量は1年間につき0.5rem(5mSv)とする




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2.現代原子力工学(第2版)平成21年1月発行より


放射線の被曝によって人またはその集団が受ける影響は、個人に現れる身体的影響とその子孫に現れる遺伝的影響に分けられる。身体的影響は、被曝後数週間いうような短い期間に現れる影響(早期効果)と長い潜伏期間を経て現れる影響(晩発効果)に分けられる。


多量の放射線による早期効果としては、白血球減少、脱毛、皮膚の紅斑、潰瘍などがある。γ線の1回全身被曝では4Svで半数が30日以内に死亡、0.5Svでは白血球の一時的減少がみられるが、0.25Sv以下になるとほとんど臨床的症状がない。


晩発効果の方は短期間に多量の被曝をした場合だけでなく、低線量を長期間被曝した場合でも発生することがあるのではないかと考えられている。症状としては白血病その他のガンがある。


放射線防護の観点から、身体的影響は確率的影響と確定的影響に区分することができる。確定的影響は白内障、脱毛、皮膚の紅斑などであり、しきい線量(影響が現れる最低の線量)がある。また線量の増加によって症状が重くなる。確定的影響に対する放射線防護の目標は、これを発生させないことである。


これに対し、確率的影響とは発がんや遺伝的影響であって、放射線防護上はしきい線量はないとの仮定が取られている。(途中省略)確率的影響に対する放射線防護の目標は、発生を容認できるレベルに制限することである。


1895年のX線発見以後、放射線利用と共に放射線障害も発生した。放射線防護・放射線管理の必要性が認識されるまで、多くの犠牲者が出た。1928年国際放射線医学会議によって国際放射線防護委員会(ICRP)が設立され、今日まで放射線防護の原則を検討し、その成果を勧告ないし報告書として公表してきている。この委員会のメンバーは関連分野の世界の権威者で構成され、各国の法令や規制行政はICRP勧告を基本としている。


ICRPの基本的勧告として1965年勧告があり、わが国の現行法令はこれを基礎としてきた。さらに新しいものが1977年勧告であり、前勧告に比べて若干異なった点があるので、わが国を含む各国でこの勧告に基づく法令の改正が行われてきた。1977年勧告において、委員会は一つの線量制限体系を勧告し、その基本的な考え方を次のように述べている。




(a)いかなる行為も、その導入が正味でプラスの利益を生むものでなければ採用してはならない。


(b)すべての被曝は、経済的および社会的な要因を考慮をに入れながら、合理的に達成できるかぎり低く保たなければならない。


(c)個人に対する線量当量は、委員会がそれぞれの状況に応じて勧告する限度を超えてはならない。




1990年にはさらに新しい勧告が出された。


(1)職業被曝


定められた5年間の平均が20mSv/y(但し50mSv/yを超えてはならない。


(2)公衆被曝


1mSv/y


(3)放射線管理区域


体外被曝線量が3ヶ月で1.3mSvをこえる恐れがあるなどの場所は管理区域とし、立ち入りを制限し、区域内では放射線モニタリングを行う。(平均約0.6μS/hを超える場所)