新春浅草歌舞伎 第1部@浅草公会堂 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

お年玉〈年始ご挨拶〉 莟玉

 夜の部のご挨拶が10分ほどだったのに対し、昼の部は上演時間の関係なのか持ち時間は5分。なので、マナー喚起や物販プロモーションの他はあまり多くは話しませんでした。浅草公会堂は、舞台は十分広いのだけど楽屋スペースが “ちょっとアレ” なんで役者同士が密になりがち。コロナ禍中に公演を打てなかったのにはそういう事情もあったのだと。昨年3年ぶりに公演を打ったときは、役者が混ざるのを少なくするため昼夜2組に分かれての上演で、ご挨拶もしなかったので、今回は4年ぶりの “通常公演” なのだそうです。

 

本朝廿四孝「十種香」

米吉/橋之助/新悟/歌昇/巳之助/種之助 

 米吉が三姫の1つ八重垣姫という大役を。昨年の秀山祭で雪姫を勤めているので着々と……という感じですね。八重垣姫は玉さまに指導を受けたそうです。可憐そうに見えて実は好いた人にはかなり積極的で大胆……ってところが米吉の柄にピッタリだったりして😆 最初は御簾越しに浮かぶ後ろ姿、亡くなった(許嫁の)勝頼さまを弔っているところ。広間にいる簑作(橋之助)が勝頼さまにそくりだわと、気になってチラ見する姿が可愛らしい。その蓑作の前に出るととたんに恥じらいを見せ、指をいじいじしたり扇子をポトリと落としたりする深窓のお嬢さま風。ところが腰元の濡衣(新悟)に「どうか仲を取り持って」と頼むあたりからグイグイと攻め「のちとも言わず今ここで」って笑っちゃうほどの大胆さ😅 米吉が言うと全く自然に見えますね。「はい、実は本物です」と正体を告げた勝頼に肩を抱かれ寄り添った時の、傾けた首の角度が妙に実に色っぽかったです。

 

 濡衣の新悟複雑な感情の出し方に説得力がありとても良かった。勝頼の身代わりに切腹させられた恋人を思い出しては悲しみに暮れながらも、そのおかげで生き延びている本物の勝頼に協力している(武田家の家宝を謙信から奪い返す)立場でもあり、八重垣姫の恋の成就を手助けするし、いろいろな感情が入り混じったお役です。新悟は繊細な演技でそのあたりを上手く見せていた。そして、お姫様の米吉に対し新悟はちゃんと腰元だった。変な言い方ですが、一歩引いた控えめな立ち位置にありながら、芯の強い女性としての存在感があったんですよね。

 橋之助の勝頼は正面から出たところからハッとするほどの麗しさ✨ 華やかな裃がよく似合い、八重垣姫から熱烈に想われるのも納得の貴公子然とした佇まいです。動きが少ないお役なので演じるの難しいと思うけど、物腰には品があり所作は柔らかで形も美しい。セリフ回しに高貴さが溢れ、最初のセリフもきちんと聞かせました。2人の女性があれこれやってる間、真ん中でじっと動かずにいるのも大変だなーと思いながら見ておりました。

 

与話情浮名横櫛「源氏店」

隼人/米吉/松也/橘太郎/歌六

 隼人の与三郎がビジュアルとして仁左さま二世みたいだったよ🎊 上方階からの観劇だったんだけど、斜め上から見える、鼻掛け頬被りから覗くスッと通った高い鼻筋とか、柳の木に所在無げに寄りかかっているときの、微かな曲線描く肢体とかね、もう仁左さま瓜二つ。演技の方も、仁左さまの指導を受けたというのが納得の出来。抑揚とリズムを付けた、歌うような独特のセリフ回し、伏目気味の流し目で見せる翳り、落ちぶれた姿からチラチラ覗く育ちの良さ、セリフはさすがに途中で気が抜けたりするけど、たくさん吸収したなあと思います。蝙蝠安と言い合っている女がお富だと分かってからの、驚き→うろたえ→覚悟するまでなど、無言の芸の細かさも仁左さまをしっかりなぞっています。「さっさと帰ろうぜ」とせかす蝙蝠安をなだめる時の一瞬ドスを効かせた声もとても良いです。隼人にあと欲しいのは柔らかさと、そこから溢れる色気かなあ。最後にお富を抱いて「おめえを離さねえぞ」っていうところね、もう少し愛情が欲しかった。でも、隼人が仁左さまのお役を着々と継いでいて良きかな、良きかな👍

 

 米吉のお富さんが、まぁ~アダっぽくて粋でいい女だった😊 幕が開き、赤い糠袋の紐を口にくわえて登場する米吉の色っぽいこと。襟足についた雨水を手拭いでそっと押さえて拭き取るというちょっとした仕草が艶かしい。そうかと思えば、しつこい蝙蝠安に半ギレし、お金を渡してさっさと追い返そうとするところは、ちょっと強めの米吉節が発揮されてた。与三郎と分かってからの可愛い恋人ぶりも楽しかったです。

 松也の蝙蝠安がまた良くてねー。声色を完全に変えていてガラガラ声になっているし、あの松也があそこまで汚く……って思うほどドロッとした小悪党姿。ここまで消せるのかって感じで、素の松也の面影が全くない……とはいえ、根っからの悪党というほどには濁ってなくて、たとえて言えば、女には困っていなさそうな “色” もありました。今回は隼人に付き合ってあげたのだと思うけど良いコンビだったな。

 橘太郎の藤八が、やり過ぎず程よい感じのコメディーリリーフを好演。お富に化粧をしてもらったお顔がキュートでした(ここ、紅は藤八の頬や口元に付けるのが多いと思うんだけど、米吉は、目尻下にも紅を入れてあげていて、それが女っぽさ出していて妙に可愛かった)。歌六さんの多左衛門は終盤をガシッと締めました。良い舞台だったー👏

 

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