明治大学シェイクスピアプロジェクト「ハムレット」@明治大学駿河台キャンパス | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

作 ウィリアム・シェイクスピア

翻訳 コラプターズ(明治大学学生翻訳チーム)

演出 高橋奏(文学部3年生)

監修 西沢栄治(JAM SESSION)

 

 明治大学シェイクスピアプロジェクトは明治大学主催のシェイクスピア劇上演プロジェクト。2004年に発足し、今回が20回目の公演です。演出、演技、演奏はもちろん、企画運営、翻訳、制作(舞監補佐、音響、照明、舞台美術、衣裳、映像スチール、宣伝)など全てを学生主体で行い、年に1度、この時期に上演している。私はある時期から見始めたんだけど、学生とは思えない上質の出来でとても感銘を受けました。以下は、プロではない、20歳前後の学生たちによる舞台、というのを踏まえての感想ですよ。

 

 今回の「ハムレット」も、手堅い演出の中にいろいろ工夫があり、よくできていたと思う👏 まず、客電を半分ほど消した状態で舞台に(登場人物である)旅役者たちが出てきて観劇マナーを面白おかしく説明し「私たちはこれから(ハムレットのいる)エルシノア城に向かいます」と言うと、そこにやはり登場人物であるローゼンクランツとギルデンスターンが出てきて「私たちもエルシノア城に行くところです、お先に」と言って袖に入る。本編でロズ&ギルがハムレットに「ここに来る途中で旅役者の一行を追い越しました……」と言うセリフがあるんだけど、そこを見せたのですね。小さいことだけどよく考えたなぁと感心しました。

 そのあと旅役者たちも引っ込んで客電が落ち、本編が始まります。最初はクローディアスとガートルードの結婚祝宴の場かな? 宮廷人が集まって祝福している隅っこに、黒い衣装のハムレットがポツンと座っている。やがて立ち上がって舞台中央に移動すると彼にスポットライトが当たり、いきなり「生きるか、死ぬか、それが問題なのだ……」という例の独白を始めます(「死ぬことは眠ること、眠れば夢を見る」のあたりまで)。ここは原作にはないシーンで、もちろんこの独白は本来のシーンでも演じられますが、ハムレットの憂鬱を最初にずばり提示するような斬新なオープニングでした。

 

 

 そのあと原作の1幕1場である、先王の亡霊が出てくる城壁シーンになり、物語が展開していきます。↑(添付画像)のような舞台セットで、その立体的な演技スペースをシーンによってうまく使い分けていました。また、衣装で人物の性格を表すとこもよく考えられていて、例えばポローニアスの衣装はスタンダップ・コメディアン風で道化っぽさを出しているし、オフィーリアのヒラヒラ、キラキラした衣装はどこか現実味がなく、ふわふわした乙女の世界の住人に見えました。そこにレアティーズが加わった、父兄妹3人のシーンは、なんだかんだ言っても仲の良い親子という雰囲気が出ていて良かったな。それだけに、3人ともある意味ハムレットに殺されてしまう理不尽さが胸を突く😢

 

 そのほかにも “いいなあ” と思った演出がいくつかありました。例えば終盤の決闘シーン、倒れたレアティーズがハムレットに「お互いに許し合おう……」と言って事切れるとき、やはり瀕死のハムレットが彼の手を一瞬握るんですよね。それは和解を意味する(そのあとハムレットも死ぬ)。「ハムレット」はいろいろ観てきたけど、最後に2人が手を取り合う演出は記憶にないなあ(あったけど忘れてるのかも💦)。とても感動しました、美しい演出でした✨

 また、最後のホレイショーとフォーティンブラスのセリフをあまりカットせずきっちり言わせているところも、反戦メッセージ性を出していて良かった。最後、舞台の上段に死んだ人たち(先王、オフィーリア、ロズ&ギルなど)が並び立ち、目の前の悲惨な光景を見下ろしているところで幕でした。演出家によると「生者が死者をみつめている、死者も生者をみつめている」がテーマだそうで、それを視覚化した、良い絵面だった👍

 

 個人的に発見だったのは、ハムレットとホレイショーの関係。ホレイショーはハムレットの後を追って自殺すると仄めかすんだけど、私はいつも「いくら盟友とはいえ、親友が死ぬからって自分も後追い自殺しようとするか? なーにが “古代ローマ人のようでありたい” だよ😑」と、極端すぎて理解できなかったんですよね。今回ホレイショーは女性が(男性としてのホレイショーを)演じていたんだけど、このシーンでハッと思った。そうかホレイショーはハムレットに惚れてたのかって。過去にも、ホレイショーはゲイでハムレットのことを好きだという演出はたくさんあるけど、今回のがいちばん、それゆえの後追い自殺願望であることに納得がいった=女性が演じることで自然にそこに愛の形が見えたのです。もちろん、シェイクスピアがホレイショーをそのように書いたとは思わないけど、そう解釈するといろいろ腑に落ちます。

 役者たちの発声やセリフ回しは素晴らしく、???と思わせる人はいなかった。特にクローディアス、レアティーズ、ポローニアスはプロ並みに達者な演技だったなあ👏 やっぱりセリフが第一だなと思った次第。ハムレットは他の登場人物に比べると悩み葛藤するところの動きが柔らかく、そのぶん時代掛かっていなくて、現代の若者の姿が見えました。

 

 そうそう、ワークショップ講師に成田屋さんとこの市川新八さんのお名前が。立ち廻りや歌舞伎的表現(劇中劇のとこだろうか? そういえばここの衣装は和装をモチーフにしていたし)を指導したのだそうです。新八さんは明大出身(演劇学専攻)で、かつてここの公演で「ハムレット」のタイトルロールや「お気に召すまま」の道化フェステを演じたんですと。知らなかったー。

 

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