作 アガサ・クリスティー
演出 高橋正徳
永宝千晶(フクダ&Co.)/(文学座)/金子由之(昴)/志村史人(俳優座)/原康義(文学座)/井口恭子(青年座)
何度も観ている作品だけど、戯曲がよくできているので何度観ても飽きない、面白い、2時間半まったく退屈しません。個々のセリフの妙、その応酬に引き込まれる。時々入る控えめなユーモアもイギリスらしくて良いです。(よく知られた作品……だと思うのであらすじは割愛🙇♀️)
演出は手堅かったです。手堅すぎて、直球すぎて、拍子抜けと言うかちょっと物足りなさを感じたほど💦 この作品って、もう、こういう風にしかやれないのかな。弁護士の執務室と法廷という2つの場所が主な舞台、あと、浮浪者がうろついている街角も含め、細部まで作り込んだリアリズム手法の舞台美術。特に執務室と法廷のセットは2021年に世田パブで同作品を上演したときのセットと酷似していて、あそこからレンタルしてきかと冗談で思ってしまった😅 せめて舞台美術にもう少しオリジナルな工夫を凝らせなかったのかなとも思ったり。たとえば完全に抽象化するとか。
いろいろな劇団から役者たちが集まってのプロジェクトで、言うまでもなく皆さん文句なく上手い。セリフ術がちゃんとできていて、発する言葉が耳を引き付けて離しません。最後のどんでん返しの鍵を握る女ローマイン(永宝千晶)は、かっちりしたスーツ姿が似合い、冷徹に見せながらも胸の奥では情熱を燃やしている、一途で情に厚い女性に見えた。終盤での変身は見事でした。その恋人レナード(采澤靖起)は髪をブラウンに染めヨレッとした上下を着たところは確かに無職の遊び人、1つの仕事に落ち着くことができないチャラい男でした。彼も最後の手のひら返しをうまく見せていた。法廷弁護士サー・ロバーツ(金子由之)は経験を積んだベテラン弁護士らしい威厳と余裕を感じさせたし、セリフに説得力がある。対する検察側のマイアーズ(志村史人)は妙な癖がいかにもやり手らしく見え、鋭さとクソ真面目な感じが絶妙だった。書記(武田知久)のセコセコした動きがユーモラスで、それが意外にも良い味を出していて妙な存在感がありました。
あとね、法廷シーンでずらりと並んだ顔ぶれを見て一瞬引いた。男しかいない、男ばっか……😑 もちろん原作どおりの配役だし、男女のバランスをうるさく言う気はないけど、さすがに今の時代、日本の政界における集合写真などで男しか写っていなくて不快感を覚えたり、イギリスの舞台を配信などでいろいろ観て目が慣れたりしていると、この光景に居心地悪さを覚えるのは否めなかった😔 今やる舞台という意味ではここに女性を配役してもよかったのでは? 例えば書記/廷吏や医師は女性が演じても問題ないはず。日本の演劇人も、そういうの、もう普通に考えなくてはいけないのだと思うよ(考えた末にコレなら別にいいですが)。