「Shakespeare’s R&J/シェイクスピアのロミオとジュリエット」@シアターウエスト | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

原作 ウィリアム・シェイクスピア

脚色 ジョー・カラルコ

演出 田中麻衣子

木戸大聖/北川拓実/青木滉平/中田圭祐

 

 「ロミオとジュリエット」を脚色した作品です。過去にも上演されたことがあるようですが、私は今回が初見でした。全寮制男子校の生徒が「ロミオとジュリエット」の戯曲本を見つけ、それを密かに演じていくという劇中劇の構造を持った作品です。

 

 ネタバレあらすじ→厳格なカトリック系全寮制男子校で学ぶ4人の生徒たち。閉ざされた世界の中で、時間と規則に縛られた勉学生活を送っている。ある日、夜中に部屋を抜け出した彼らは屋根裏部屋?で「ロミオとジュリエット」の戯曲を見つける。興味を持った彼らは何役も早替わりしながらそれを演じていく。夜が明け、芝居を演じ終え、彼らはいつものように朝の礼拝を済ませて授業を受ける。終わり。

 

 細かく言えば、芝居ごっこをしていくにつれ彼らの心の扉が開いて変化が現れる……恋愛への憧れ、女性の存在の認識と衝動、友に対する嫉妬や暴力……みたいな感情が芽生え、その発見に夢中になり恐れを感じ、芝居が終わった時には今までと同じ自分ではなくなっている、大人の階段をひとつ登る……という話だと自分は解釈しています。

 フライヤーの紹介コピーに「……少年たちは新たな自分たちを発見していく」と書いてあったし、演出家もプログラムに「……ただの遊びから、やがて物語と現実の境界線が消えていき、物語の関係が現実の関係になっていく……」と書いている。

 で、観終わってから、え……と、何を発見したの? と思ってしまったのですよ😔 「全寮制男子校の生徒」という現実と、その彼らが「ロミオとジュリエット」を演じるという、その関連と結果がよく見えてこなかった。それを受け止める感性が自分に足りなかったのかもだけど🙇‍♀️

 

 生徒としてのそれぞれの造形がはっきりしていなくて、だから4人の個性とそこから生まれる彼らの関係性がよく分からなかった、というのもあるかな。それが最初に分かっていると、芝居ごっこでの登場人物同士のやり取りでどういう化学反応が起こるのか、互いにどんなふうに影響を及ぼし合うのか、自分の中の何が刺激され変化していくのかがわかるんでけどね。「自分たちは『ロミオとジュリエット』を演じている全寮制男子校の生徒なのだ」という二重構造の見せ方が弱く、その枠組みがうまく機能していなかった感じかな。途中から、4人は劇中劇を演じているのではなく「ロミオとジュリエット」を普通に演じているよね、と思ってしまった💦

 

 興味深いシーンもありました。ロミオを演じた学生1(北川拓実)は授業中にこっそり愛のソネットを書き写しているようなロマンティストで、まだ見ぬ世界に憧れを抱いている。芝居ごっこが終わったあとも「夜の世界の幕開けだ」「昨夜夢を見た……」と繰り返し、彼だけその世界から抜けられずにいるようだった、この先もずっと。

 ジュリエットを演じた学生2(木戸大聖)はジュリエットに完全に同化してしまったような演技でした。実際、4人の役者さんの中では彼が最も舞台経験が多いらしく、大変良かったんです👏 学生2は自分の中にある女性性に目覚めるという(今風の)展開かなと思ったのですが、最後は今まで通りの自分に戻っていたような。ジュリエットが父親に別の男との結婚を強いられるところで、他の3人の生徒がキャピュレット氏のセリフを言いながら、学生2のズボンを下ろし、椅子やモップで折檻するという「いじめ行為(お仕置き?)」をします。パブリックスクールものの映画などに出てくるやつね。あれの意味が分からなかったな🙄 女性という存在を意識させてしまった学生2に対する罰?

 学生3(青木滉平)はロミオとジュリエットの結婚を取り仕切る修道士役のとき、ロミオが愛のソネットを読み始めると急に苛立ち始め、戯曲のページを破り捨てるんですが、あの行動の意味も???🙄 彼はロミオ役の学生1がジュリエットに愛のソネットを送ったことに嫉妬したということなのだろうか。彼は自分が学生1に恋心を抱いていることに気づき、その感情を自分で受け入れられずにあのような行動をとってしまったということなのだろうか。 

 

 演技的熟練度は置いといて、4人の役者さんたちはとても良かったです🎉 発声がクリアで、セリフ回しは生硬ではあるけど、真面目でしっかりしていた。丁寧に稽古を重ねてきたことが感じられ、芝居に真摯に取り組んでいるのが分かりました。もしかしたら、劇中劇の「ロミオとジュリエット」を熱心に演じるあまり、そちらに比重がかかりすぎて、自分たちは「それを演じている生徒」なのだという外枠が希薄になったのかも。あるいは、私自身がそう感じたのかも。普通にオールメール版「ロミオとジュリエット」を演ってもいいのでは?と思ったくらいですから。

 

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