壽祝桜四月大歌舞伎 昼の部@明治座 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

「義経千本桜」鳥居前

愛之助/吉弥/千之助/歌昇/種之助/男寅

 

 様式美に満ちた一幕で、明治座創業150周年記念興行の幕開けには相応しいかなと。忠信(じつは源九郎狐)は愛之助。先月の「吉田屋」のはんなりした伊左衛門から、今月は荒事。これは初役なんですね、意外でした。隈取した顔が精悍でイケメンの忠信。出てきた時はひと回り小さく感じたけど、セリフや所作が始まるとそれを吹き飛ばす力強さ。快活でありながら柔らかさもあり、キビキビしたところも見せて、よい忠信です🎉

 逸見藤太(種之助。滑稽味が絶品)の家来たちとの立ち回りは様式美の見せ場。今回はなかなか楽しくて、人文字で鳥居の形を作るだけでなく、創業150周年にちなんで「150」の文字を作ったり。愛之助は立ち回りの時からキツネっぽい動きは見せるのですが(逃げようとする藤太をキツネ手を使った不思議な力で引き戻したり)、花道で一度キツネ手になった指を1本ずつゆっくり(無理やりって感じで大変そうに)伸ばして広げてから、静御前をどうぞあちらへっていざなうのね。そこをちゃんと見たのは初めてでした。3階からの観劇だったので、狐六法は最初だけチラッとね😓

 義経は吉弥でやはり初役なんですが、他演目でも義経を勤められたことはあるのかな。とにかく、とても似合っていました。凜とした品格あるな佇まいでセリフには力が感じられ、それでいて静御前や弁慶(歌昇)への情の見せ方も細やかで、泣かされた。

 静御前の千之助はたおやかで可憐だけど、女方の声としてはちょっと癖があるよね、別にいいんですが🙇‍♀️ 義経と共に行けない悲しさ寂しさ心細さを良く出していて、神妙に勤めていたと思います。目に楽しい幕でした。

 

 

「大杯觴酒戦強者」

芝翫/梅玉/幸四郎/莟玉/歌之助/松江

 

 「おおさかずき しゅせんの つわもの」と読むようです。初めて観る作品です。1999年に十二代目團十郎さんが演ってるけど、全く覚えていない。大酒飲み対決、酔っ払った酔態、あの人は実は……、武術の試合など、展開に変化があり、最後は爽やかな終わり方で意外と面白かったー🎉

 

 珍しい演目なので簡単にあらすじを→紀伊守(幸四郎)に仕える足軽の才助(芝翫)は昼間から飲んでほろ酔い状態になるほどの酒好き。ある日、酒豪で知られる井伊直孝(梅玉)が訪れるのでその酒の相手をするよう言い付けられる。2人は飲み比べるが、才助の飲みっぷりに機嫌をよくする直孝。才助が酔った勢いで戦場の話を始めると、額の三日月の向こう傷から、おまえは確か武田の勇士だったな!と直孝は見破る。2人は戦ったことがある関係だった。才助を気に入った直孝は彼を召し抱えたいと言うが紀伊守は拒否。そこで才助と直孝が武術の試合で決着をつけることにするが、酔っていても才助の腕は確か。直孝は引き下がり、紀伊守は才助を1500石で取り立てることにする。おわり。

 

 才助の「ひとえに酒の役得」という最後のセリフに愛嬌が溢れていました😆 才助は小さなことにはこだわらない肝が据わった男。演じた芝翫はこのお役のニンだったと思う。冒頭からほろ酔い機嫌でのセリフや所作は、悪酔いする前の「魚屋宗五郎」風で、そうなると何度も勤めてきているから慣れた感じで、とても自然。

 直孝を相手にした飲みっぷりも見事だった。大きな三つ重ねの酒杯を順に、直孝と交互に飲んでいくんだけど、最初は五合入り、最後は一升入りで、お酒が注がれるところの楽しそうなキラキラした目。「はばかりでござりまする」(「恐縮です」……かな?)と言いながらもウキウキしていて凄っく嬉しそう。酔うほどにだんだん地が出て下世話な言葉を発してしまい、周りにとがめられるところもおかしいし、気分が良くなって戦場の様子を物語るところはきちんと聴かせる。その所作には力があり声にも重みが増して強者の武将らしい威厳が出ていました。

 

 梅玉さんの井伊直孝は酔っても品がある(ありすぎる?)。格はあるけどサバサバした感じが梅玉さんの持ち味に合っていて、酒を飲むにつれてどんどんほぐれていく感じがよかった。そのあと才助の語りと額の傷からハッとして正体を見破るまでの丁寧な演技も、大袈裟すぎず、動きが美しかったです。

 紀伊守は幸四郎で、最初からなんだか不機嫌そうな表情が気になったけど、自分が下戸なので(だから自分の代わりに才助に相手をしてもらった)、才助と直孝の酒飲み合戦がちっとも面白くないってことなのかな。よくわからない……😅 最後は上機嫌でしたが。

 

 松江が演じる治右衛門はその紀伊守の家臣なんですが、才助がタメ口になったりと無礼スレスレの言動に走りかけるところを、袖を引っ張ったりツッコミを入れたりとたしなめるお役。その、ヒヤヒヤしたり、ったくしょうない奴だなあと呆れたりという表情や仕草が面白かったです👏

 小姓莟玉歌之助が眼福でした。最初2人は木刀とたんぽ槍を使った武術の稽古をしていて、その小道具が最後に才助と直孝の試合に使われるという伏線。酒飲み対決になると2人のお酌をするために立ったり移動したり座ったりで、結構忙しい。立ち振る舞いの美しさが注目されるお役でした。ストレスなしに楽しめる作品でした!

 

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