「ハムレット」@江戸川区総合文化センター | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

作 ウィリアム・シェイクスピア

構成/演出 野村萬斎

野村裕基/野村萬斎/村田雄浩/岡本圭人/若村麻由美/藤間爽子/河原崎國太郎

 

 先ごろ世田谷パブリックシアターで上演された「ハムレット」、忙しくて観ることができなかったんだけど、後日に江戸川総合文化センターで1日だけ上演すると知り、そちらを観てきました。野村萬斎の演出で、タイトルロールを息子の野村裕基(23歳)が演じ、萬斎はクローディアス、そしてハムレットの父の亡霊を演じています。

 正直言うと、途中からすごく退屈に感じてきて、観るのが苦痛になり、休憩に入ったら帰ろうかと思ったほどです😔 最後まで観ましたけどね。2003年にジョナサン・ケント演出、萬斎主演の「ハムレット」を観たときも同じような感想を抱いたことを思い出しました。「ハムレットが浮きまくっている」という違和感です。以下、辛口です🙇‍♀️ 

 

 ハムレットを演じた野村祐基のセリフ術が、(萬斎を除く)他の役者さんのと全く違っていて、まるで別々に芝居しているようだった。伝統芸能(狂言?)風の発声&言い回し、抑揚が強い時代掛かった喋り方で、とにかく全編通して熱くて重い😑 友人ホレイシオや恋人オフィーリアや母と話す時のそれぞれに対する感情が全くこもっていなくて、ただセリフを吐いているだけだから、関係性や感情の置き方が見えない😑 独白はどれも同じ言い方で、大袈裟に苦しそうに「力を込めて」言っているだけで、肝心の意味やハムレットの内面などが全く伝わってこない😑 こんな感じで、最初から最後まで同じ熱量とトーン、一本調子なので、ハムレット像がとっても薄っぺらで😑 気持ちを寄り添わせることができなかった。そもそも、彼がどういうハムレット像を作りたいのか見えなかったです。

 

 こういう演技スタイルの祐基ハムレットとただ1人呼応していたのは、野村萬斎のクローディアスですね。同じセリフ術だから当然です。で、萬斎も確かにセリフはコテコテ様式的で重いんだけど、演技力があるから、こういう感じのクローディアスもアリかなと思わせる説得力があるんですよね。

 萬斎のもう一役、ハムレットの父の亡霊は般若面に白い獅子毛を付けた白装束姿。登場時には尺八の音が流れたりする。そういえば旅役者の部分は歌舞伎調だったから、いっそのこと全編を古典芸能風に翻案してもよかったのでは?とさえ思ってしまいました。

 

 他の役者さんたちは普通のセリフ回しです(だから祐基ハムレットと噛み合わない)。でも、それぞれのキャラクターの解釈に面白みはなかったですね。例えばオフィーリアとガートルードはよくある保守的な造形で、現代性が見られない。現代性がなくてもいいんだけど、2023年の今の作品となると、その2人の女性をどう描いているだろうと期待もするわけです😔

 藤間爽子のオフィーリアは、最初こそセリフに力があり、芯と意思のある女性にしてあるのかなと思ったけど、普通の「か弱き乙女」でした😔 若村麻由美さんのガートルードもあまり存在感を覚えなかった。それでも最後、毒杯と知りながら自分の意思でそれを飲むという行動を取ることで矜持のあるところ見せていたけど。これは、イングランド行きの船から戻ったハムレットが母宛に書いた手紙を読みクローディアスの裏の顔を知った、という伏線を先に見せていたのを受けての行動で、それは上手い演出だと思いました。

 ポローニアスの村田雄浩はもちろん達者なんだけど、あまり滑稽味や軽さがなく、(ハムレットがセリフで言及するような)道化っぽさもなく、普通に子ども思いの真面目な父、王に忠実な臣下だった。

 

 演出にはいろいろ工夫や独自性が観られました。でも、細かい解釈を盛り込みすぎていて、却って焦点がボケているように感じた。

 面白かったのはクローディアスの死にザマかな。よくあるのは、毒を塗った剣で傷つけられたあとハムレトに毒杯を無理やり飲まされ往生際が悪い感じで死ぬパターンだけど、ここでのクローディアスは覚悟を決め、笑みを浮かべて毒杯を手にし「乾杯」と言って毒あおり、笑いながら死ぬ。ここは萬斎クローディアスの見せ所でしょう。そして既に死んでいるガートルードの死体の上に覆い被さるんですね。クローディアスは悪党だけどガートルードを誠に愛していたんだなと思わせるでした。

 そんな感じで、ちょっと残念な舞台でした。いちばんの収穫は、レアーティーズの岡本圭人が爽やかで気品と華があり、セリフも動きも明快で自然、とても良かったことです👏 彼のハムレットを観てみたいですね~。

 

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