「十三代目市川團十郎白猿襲名披露巡業」@静岡市民文化会館 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

 先週末に静岡市でSPAC「人形の家」を観たのですが、同時期に、同じ静岡市で團十郎の襲名披露公演があったので観てきました。全国15箇所で行う襲名披露巡業の一環です。会場はキャパ2000席ほどで、完売していました。この巡業では梅玉さんと児太郎がお付き合いしてくれています。

 まずは、右團次の三番叟、児太郎の千歳での「舌出三番叟」。襲名披露の幕開きに相応しい楽しげで目出度い舞踊でした。次は「口上」ですが、舞台に上がったのは團十郎と梅玉さんのお2人だけ。ちょっと寂しかったなー。しきたりとかあるのかもだけど、右團次とか児太郎とか、あるいは成田屋一門を代表して市蔵さんとかも上がるわけにはいかなかったのだろうか、う~む……。そして最後が「勧進帳」です。

 

「勧進帳」

團十郎/梅玉/児太郎/市蔵/右團次/九團次/廣松

 

 たいへん良かったです~🎉 團十郎の弁慶花道を出たところから堂々たる押し出しで、あれは現れた瞬間にオオッ!てなりますね。役柄もすっかり心身に馴染んできている感があり安定していて、かつての荒削りとも言えるほどの、みなぎる勢いは薄れたものの、安心して見ていられました。決めの形、見得も力強くて明快。いちいち目を剥きすぎるきらいはあるけど、まあ、それが新・團十郎の個性ということで😅 少なくともお客さんはそのたびに大喜びでした(拍手がすごい)。その前の「口上」では恒例の睨みは見せなかったしね。

 山伏問答は、セリフの独特のクセが和らいでいて聞きやすかった。ただ、梅玉さん富樫との丁々発止のやり取りという点ではちょっと物足りない感じだったな。正体がバレそうになり富樫たちとの詰め寄りで見せる熱量、義経打擲の一瞬の決心も良く、その後の義経とのシーンは神妙で、その忠誠心にちょっとウルッとしたほど。

 終盤、お酒を振る舞われるあたりからはもう少し愛嬌があってもいいかなとは思ったけど、大袈裟すぎるよりはいいのかな。客席からはちゃんと笑いが湧き上がっていました。延年の舞は大きくて華やか。幕外になって花道で、冨樫に、そして神仏に向かっての一礼にはしっかりと心がこもっていて、観ている方にもグッと込み上げてくるものがあった。花道が短いのでやりにくかったとは思うけど、六法も美しく見せてくれました~👏

 

 富樫左衛門は梅玉さん。素晴らしかったです🎊 名乗りのところから品格と聡明さと仄かな柔らかさが感じられ、舞台に格を与えていた。問答では、正直なところ團十郎との相性がまだ上手く噛み合っていないのか、緊迫感をもって次第に盛り上がっていく問答……というまでには至っていないように感じたけど、梅玉さんの富樫は完璧だったよー😊 全体に、深い部分にまで人間性を感じさせる造形で、弁慶が主君を守り抜こうとする場面(打ち殺し見せ申さんや、のあたりね)で見せる「わかった、そうか!」というところも、大袈裟に見せるのではないゆえに、弁慶という男への理解が見えて感動しました。最後、義経一行を見送るところも、彼らの無事を祈っているのが確かに感じられました。

 

 義経は児太郎です。品性のある佇まい、丁寧なセリフの運びなど、團十郎相手の義経としてとても神妙に勤めていたなあと思う。ここでの義経は少ないセリフの中で立場・背景や感情を表す必要があるからとても難しいと思うけど、児太郎にはこの先の義経役者さんとしての手応えを感じました👍(←個人の感想です)。

 

 良い公演でした✨ 團十郎はもう苦手な演目は遠慮していいから(本当は良くないんだけど💦)、とりあえずはお家の芸を突き詰め守ることを最優先してほしいですね。新しいことに挑戦とかも、もうしなくていい。そういう時間あったら義太夫の稽古ですよ。あとは、先輩・同輩たちと一緒にもっとやってほしい。5月の團菊祭だって、せっかく「團」と「菊」が久しぶりに揃うのに、菊之助との共演演目はないんだもんねー😔

 

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