二月大歌舞伎 第三部「鼠小僧次郎吉」@歌舞伎座 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

菊之助/歌六/巳之助/新悟/雀右衛門/彦三郎/坂東亀蔵/米吉/権十郎/吉之丞/橘三郎/橘太郎/丑之助

 

 初日に観てきました。SNS上では、面白い!すごく良い!と一様に好評ですが、個人的にはあまり……でした💦  もちろん、特に菊之助が好きな方はきっと大満足のはず。以下、簡単な感想ですが、全くの個人の意見なので悪しからず🙇‍♀️

 音羽屋ゆかりの作品だそうですが、今回は菊五郎による1993年国立劇場での上演以来で、それだって大正14年以来68年ぶりの復活通し上演だったらしい。こんなふうに、あまり上演されていないのも分かる気がしたな。

 もとは黙阿弥作で、見えない糸で結ばれた人間関係や因縁はお約束なんだけど、個人的にイマイチだったのは、まず、ちょっと展開が雑というか飛びすぎというか、無理矢理感あると感じたから。今回はコロナ禍での上演ゆえ、国立劇場のときのよりコンパクトな構成になっているらしく、本来の通しだったら印象は違っていたかも。また、人情、義理、人情、義理……の連続だったこと。人情味が濃い話は苦手なんですよね……。本作はそこが売りのようなので、自分のツボにハマらなかったのはそれかも😔

 

 一応あらすじ→庚申の生まれは盗人になるという言い伝えの元に生まれた幸蔵(菊之助)は、それゆえに父に捨てられ、女賊(橘三郎)に拾われ育てられる。金を見ると盗みたくなるという宿命のうえに養母に盗みテクを教えられ、それでも強い良心があったから、金持ちから盗んだ金銀を弱者に与える義賊となり、表向きは稲葉幸蔵という名で易者をしている。幸蔵は、百両を騙し取られた新助(巳之助)が恋人お元(新悟)と心中するしかない……と話しているのをたまたま聞き、助けようと、大名屋敷から金子を盗んで与える。ところがその金子に刻印があったことから新助が盗んだと思われて捉えられ、さらには、辻番の与惣兵衛(歌六)が盗人を手引きしたと疑われ捕まったと聞き、しかもその辻番が実の父だと知る😱  幸蔵は問注所に出向いて自首するが、役人の非情さに怒り縄を切って逃げる。立ち回りの末、捌き役の早瀬(彦三郎)が見逃してあげ、幸蔵は鼠小僧として生きるべく去っていく(筋書は買わなかったので違ってるかも🙇‍♀️)。

 

 他に与之助(坂東亀蔵)とその恋人おみつ(米吉)が出るんだけど、ほとんどストーリーに絡まない意味不明な存在になっていた。幸蔵の義母がおみつを売り飛ばすために拉致していたという突然の展開があったものの、それも幸蔵にあっさり見つかって解放されるし。

 もうひとり中途半端なお役だと思ったのが、(幸蔵ではなく)鼠小僧の?別れた女房・松山(雀右衛門)。何かの因縁で盲目になり偶然にも幸蔵の家を訪れるんだけど、幸蔵は自首するつもりなので名乗り出ずに松山を追い返す。で、さっきの声は夫に違いないと戻ってきた時には目が見えてるの、訳分からなかった😅  幸蔵が「お前、見えるのか」と聞いてもそれには答えないし(私が聞き逃したかな?)。で、松山はそれっきり出てこない……なんだったのでしょうか🙄

 とにかく展開がいろいろ唐突なんだけど、幸蔵/鼠小僧(名前のゴロを合わせてるらしい)のドラマとしては、菊之助の安定のカッコ良さ、美しさは秀逸。盗人としての悪の陰りはあまりないけど、本作ではそれは特に必要なく、情に脆くて人間味のある、音羽屋らしいお役でした。

 また、米吉演じるおみつは幸蔵が盗みに入ったお屋敷のお嬢さまらしいんだけど、恋にとても積極的。坂東亀蔵演じる与之助に甘えて、手を引いてとか早く帰らなくてもいいのよとか言って笑わせます。米吉はこういう、ちょっと勝気でコケティッシュなお役が似合うなー。雀右衛門も薄幸の芸者の哀れさが半端なかった

 最後の立ち回りは、雪の中、それも夜という設定で、様式美を楽しめました。土手から川辺に向かう坂を菊之助がソリみたいなものに乗ってスーッと滑っていくとか、雪中なりの面白い工夫も。そして、捌き役(と言っていいのかな?)の彦三郎がホント颯爽として素敵。最後にちょっとしか出ないけど眼福、耳福でした😊

 

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