「メリリー・ウィー・ロール・アロング」@新国立劇場 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

作詞・作曲 スティーヴン・ソンドハイム

脚本 ジョージ・ファース

演出 マリア・フリードマン

平方元基/ウエンツ瑛士/笹本玲奈/昆夏美/朝夏まなと/今井清隆

 

 タイトル「Merrily we roll along」は「陽気に私たちは進み続ける」と訳せるかな。サブタイトルは「あの頃の僕たち」だけど、冒頭でアンサンブルが歌う歌詞の中の「振り返るな!」という言葉に呼応するようなタイトルです。

 ブロードウェイでの初演は1981年。2013年に日本でも上演されてるけど(宮本亜門演出、柿澤勇人、小池徹平、宮澤エマなど)観ていません。今回演出したフリードマンはメアリーを演じたことのあるイギリス人俳優で、このフリードマン版は2014年にイギリスのローレンス・オリヴィエ賞ベスト・リヴァイヴァル・ミュージカル賞を取っている🎉  今回、演出はリモート・スタイルで行われたそうです。

 

 ミュージカルの作曲家として名を上げ、後に映画プロデューサーに転身して富と名声を手に入れたフランク40歳(平方元基)。彼の自宅でのパーティーで、かつてのベストセラー作家いまは落ちぶれた小説家&演劇批評家メアリー(笹本玲奈)に最近のプロデュース作品を罵倒され、ミュージカルの脚本家として成功しているチャーリー(ウエンツ英士)の噂にイラつく。大女優である妻ガッシー(朝夏まなと)との結婚生活は破綻寸前。今の生活に空虚さを覚えるフランクは、かつての親友チャーリーとメアリーや最初の妻ベス(昆夏美)と駆け抜けた20年間を回顧し、成功と引き換えに失ったものに思いを巡らします。

 

 物語自体はよくある平凡な話で目新しさはないけど、フランクの人生にどんなことがあったのか、その過程を、40歳の今から過去20年まで(1976年→1957年へ)少しずつ逆にたどりながら描いているのが特徴。そのためか、いくつもの選択の意味、人生の転機のきっかけとなった「あの決断」「あの出来事」「あの一言」がクリアになっていて、人生で「大切なもの」が際立って見えてきます👍

 芝居の最後が、20年前に3人が出会ったシーンで終わるのが印象的。1957年人類初の人工衛星スプートニク1号が打ち上げられた夜、それを眺めようとアパートの屋上に上ってきた作曲家志望のフランクと脚本家志望のチャーリーと文筆家志望のメアリーが出会う。友情を誓い、星空を眺めて未来に思いを馳せ「自分たちで世界を変えてみせよう!」と夢を語り合う3人はキラキラ光って見えました✨

 

 フランクは、夢を追う純粋な青年から、お金と名声と美女に囚われた男になっていくんだけど(それ自体は悪いことじゃないよね)、平方元基くんは最初から最後まで割とフラットだったかな💦  徐々に人間が変化していく様子、ガラリと変わった節目など、もっと大胆に見せて欲しかった。グラマラスなガッシーに言い寄られてまんざらでもない表情とか、欲に取り憑かれ周りが見えなくなるちょっと狂気じみた感じとかさー😬

 フランクとチャーリーはもともと社会派ミュージカルの創作に意欲的だったんだけど、フランクはミュージカルの映画化や大衆に迎合した作品の方に向かう(お金になるから)。で、初心を貫いて成功したのがチャーリー。ウエンツ瑛士くんは、一見軟派だけど実は信念の人というフランクを軽妙かつ柔軟に身体と歌で上手く見せていたなー。別の道を行くフランクに対し、彼との友情を取り戻したかったチャーリーが「友情は庭みたいなもの、水をやったり雑草を取ったりと世話をする必要がある」と言うのが胸に響きました😢

 笹本玲奈ちゃんのメアリーは、泥酔してフランクにクダを巻いたり暴言をわめき散らしたりするやさぐれた面を冒頭で見せるんだけど、それは玲奈ちゃんのニンではないから難しかったかもね😅  でも、過去のシーンでは若く溌剌とした持ち味が出て、フランクに密かに思いを寄せる感じとか男子2人をまとめていくしっかり者のところとか良かった

 

 ガッシーの朝夏まなとさんが歌も演技も押し出しも素晴らしく、気持ちいいくらいのゴージャスな悪女で物語を面白くしていた👏  ジョーの秘書→女優→妻と階段を登り、夫が落ち目になる前にさっさと見切りをつけ将来性のあるフランクをガッチリものにする。猛禽類型の野心家でカッコいい。結局は新進女優にスターの座を奪われるというお約束付き😆

 今井清隆さんのいかにも居そうなプロデューサーぶりも秀逸。求めるのは大衆受けする分かりやすい作品で、歌詞内容より耳に心地良い曲を重視というのも、自分がスターにしてあげた女性に捨てられ落ちぶれていくのも、アメリカのショービズ界あるあるモノ。歌う曲は少ないけどいったん歌い出したら一瞬でその場を支配する表現力に圧倒されました🎉

 ソンドハイムの音楽は好き嫌いが割とはっきり別れると思うけど、私は苦手派🙇‍♂️  歌詞と曲が一体化しているのが特徴だと思いますが、日本語訳になるとその辺も曖昧になるしねー。

 

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