小林紀子バレエ・シアター「バレエ・トリプルビル2020」@東京建物Brillia Hall | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

 小林紀子バレエ・シアターではマクミランアシュトンニネット・ド・ヴァロアなどロイヤル・バレエに所縁のある振付家の作品を意欲的に上演してきています。芸術監督の小林紀子さんはロイヤル・バレエ・スクールの出身だとか。私はマクミランの作品に興味があるので、それが上演されるときはいつも観にいくわけです。コンスタントにマクミランの作品を上演してくれるの、とてもありがたいなー。

 

「ソリテール」

振付 ケネス・マクミラン

島添亮子/廣田有紀ほか

 「ソリテール/Solitaire」はカードやおはじきなどの一人遊びのこと。1956年、マクミランが26歳くらいの頃の作品です(初々しい😊)。孤独な少女が、仲間と一緒に遊ぶ想像の世界に浸るけど、結局ひとりぼっちのまま。そんな少女の心に現れては消える空想の情景をスケッチ風に描いた作品。集団の踊りからデュエットまで、さまざまな形態で描かれます。

 音楽は軽やかで楽しげなんだけど、全体に物悲しさや寂しさが漂う不思議な作品。仲間といても溶け込めない、いつの間にか置いてきぼり、人とうまくコミュニケーションが取れない……。プログラムに書かれていたように「自分を取り巻く世界にうまく対応できない、アウトサイダーとなった少女」は、のちにマクミランの作品に登場する孤独な人間の原型なのかも。

 そんな少女の心情を島添亮子さんが丁寧に紡いでいく。島添さんの柔らかなダンスが美しく、心情表現もとても繊細。誰かと一緒に踊る時のウキウキした表情、彼らが去ってしまたあとの空洞のような目。楽しかった時が一瞬で終わってしまう虚しさ。でも最後は「やっぱり一人がいいわ」という感じで終わるんですよね😆

 

「グローリア」よりPDD

振付 ケネス・マクミラン

島添亮子/望月一真

 1980年の作品。イギリスが癒えることのない深く大きな傷を負った第一次世界大戦をテーマにした作品。戦争で弟と婚約者を失った女性ヴェラ・ブリテンの詩や、マクミランの父親が塹壕での悪夢のような体験ののち病を患ったことなどにインスピレーションを得たそうです。だからとても暗く重い😖

 鉄骨の柱が立つ塹壕のような丘から男と女が現れてPDDを踊ります。男の衣装には乾いた血が染み込んでいる。女は白い衣装。戦場で命を落とした兵士と、彼を鎮魂する恋人(あるいは妹?)の精霊、そんな感じです。あるいは、死にゆく兵士が故郷に残した恋人の幻影と最後のダンスを踊っているのだろうか。そんな彼にとって、死は甘い眠りなのかもしれません😢

 青春を奪われた若者2人のPDDはとても美しい。マクミラン独特の流れるようなリフトも多く、2人の身体が溶け合うようで、それがまた幻想的です。戦争の惨禍を栄光と賛することの強烈なアイロニー。タイトルとは反して、これは実際にはレクイエムです。ズシ〜ンと心に染み渡りました😭

 今回は長い作品からほんの一部分を抽出しての上演で、ちょっと物足りなかったな。何年か前の公演では冒頭部分のみの上演だったし、いつかフルで観てみたいです。

 

「くるみ割り人形」第2幕よりKingdom of Sweets

振付・演出 小林紀子(プティパに基づく)

真野琴絵/冨川直樹ほか

 最後は「くるみ割り人形」2幕のディヴェルティスマンで、明るく晴れ晴れした気分で会場を後にすることができました……が、花のワルツ(群舞)の衣装🙄 淡いピンクやグリーンの長めのチュチュに装飾してある花びらの、毒々しいピンクが下品でびっくりでした😬

 

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