七月大歌舞伎・昼の部@歌舞伎座 | 明日もシアター日和

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通し狂言「三國無雙瓢箪久」出世太閤記

海老蔵/堀越勸玄/右團次/獅童/雀右衛門/児太郎/東蔵/坂東亀蔵/市蔵/亀鶴/萬次郎

 

 初日に行ってきました。今月の歌舞伎座観劇は、ほとんどカンカン目当てです 冷や汗 本作は成田屋に縁の深い演目なのだとか。かつて、十一世團十郎(海老さんの祖父)が秀吉を、息子(十二世團十郎/海老さんの父)が三法師を演じた。そして今、海老さんが秀吉を、息子(カンカン)が三法師を演じる。4世代の親子が相似形のように秀吉/三法師を勤めるというわけです。

 スッポンから素顔&羽織袴姿の海老さんが登場して「これは、本能寺の変から信長の四十九日まで、50日間の話です」と解説。その後も場が変わるたびに、海老さんの録音が流れて説明をしてくれます。背景と展開がよくわかる親切な演出だけど、これをしないと場と場の繋がりが分からないというのも、どうなのかな?

さて、いつも言うように私は成田屋を応援していますが、一部、辛口の感想です 土下座

 

 序幕でいきなり西遊記の世界ですよ 驚き顔 海老さんが解説していたように「秀吉/猿」つながりってことだけなのか? ここでは派手な立ち回り(京劇風)があり、孫悟空に扮する海老さんの宙乗りという、初っ端から大サービス。こうして早めに観客の気持ちを掴んでおこうという魂胆なのかな。金毛九尾狐(萬次郎)が何だったのかわからないまま がーん このプロローグ自体が本編の物語とは結びつかず 凹 加藤清正(だったかな?)が見た夢だったってことで、舞台は一気に本能寺の変に飛びます。

 前半は右團次と獅童が物語を進めていく形で、所々で海老さんが立ち回りを見せる。大詰めでは本水(雨)の中での大立ち回り。前列のお客さんにはビニールシートが配られました。ここで秀吉に立ち向かうのは光秀の残党たちで、足が水にすべったりしてちょっと大変そうでした。

 明智左馬之助の「湖水渡」っていうのが一つの見せ場らしく、何のことか知らなかったのでネットで調べましたヨ ニコ 左馬之助が坂本城を目指して琵琶湖上を馬で渡った伝説のことらしい。浪布を派手に使って荒らぶる湖面を表現した、大スペクタクルでした クラッカー

 最大の山場は「松下喜兵衛住家の場」かな。光秀の子として育った重次郎が、実は秀吉の息子だったという話で、重次郎は光秀の子として死ぬと言って、生みの親と育ての親の前で自害する 号泣 重次郎は福之助で、成長したなあとシミジミ。

 獅童の明智光秀/左馬之助の二役は適役です。悲劇の武将っぽい雰囲気がある。光秀の妻は雀右衛門なんだけど、何かもったいない使われ方でした。一方、秀吉の妻は児太郎で、前半のちょっとコミカルな感じ、後半のしっとりした演技、良かったです〜 キラキラ あと、男寅を久しぶりに見ましたが、セリフがうまくなっていた。ルックスは悪くないし、いろんなお役をもらって頑張ってほしいなー。

 

 さて、我がカンカンですが、大詰めの第一場「大徳寺焼香の場」に登場 きゃぁ~   焼香の順を巡って大名たちが争っているところで、後ろの御簾が上がると、海老さん秀吉と並んでカンカン三法師が現れました ハート 束帯姿でおすまし。笏を手にした左手をしっかり胸の前に置いています。そのあと10分ほど大人たちのセリフの応酬があるんだけど、カンカンはその間正面を向いたまま身じろぎせず、笏を持った手も全く下がったりしないの、すごい 驚き顔 自分はここでどうしていなければいけないのか、ちゃんと分かってるんだなあと感心しました。あ、目はキョロキョロしていたけど、それはそれで可愛い きゃー

 このままセリフ無しかなと思ったら、しゃべった! 柴田勝家(右團次)らに向かって「にっくい爺め、下がりおろう! むむ」、そのあと大名たちに「おお、過分なるぞよふんっ」。可愛らしくも大きくクリアな声で、棒読みではなく、しっかりしたセリフ回しでした。動きはあまりなかったけれど、舞台度胸はあると見た OK

 

 本作は、親子の悲劇の別れという山はあるものの、人間ドラマはなく、秀吉の出世を軸にトントントンと展開していくから、物語としてはゆるい手応え(その点では、2016年に観た菊五郎の「新書太閤記」と同じような感じ)。そこに、宙乗りなどケレンや派手な立ち回りを加えてショー的な側面を出し、娯楽性を高めていました。海老さんは体を張った所作で大奮闘ですが、演技やセリフ回しが猿之助時代の猿翁みたいになってきたような……Queenly(具体的に似てると言うのではなく、向かっている方向が)。

 最後は、秀吉と左馬之助が、争いはやめましょうと手に手を取り、切口上。海老さんが(以下は意訳)「……秀吉は天下の平和を望んだ(う〜ん、そう言い切っていいのか、では朝鮮侵略をどう説明するんだと言いたい (-゛-))……450年経った今でも、いがみ合いや戦いの連鎖は続いている。考えさせられます……」とか言ってました。こういう正論風メッセージを言葉にする必要はないんじゃないかと思ったけど ショック

 

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