英国ロイヤル・バレエ「マノン」@Royal Opera House | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

振付 ケネス・マクミラン

音楽 ジュール・マスネ

出演 サラ・ラム/ワディム・ムンタギロフ/平野亮一/ギャリー・エイヴィス

 

 英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン ロイヤル・バレエ「マノン」。いや〜、素晴らしい…… クラッカー 感動がすごい勢いで込み上げてきて、心を揺さぶられました〜 泣き1

 サラ・ラムのマノン、私には新鮮でした キラキラ 知的&クールビューティーな雰囲気からは蓮っ葉な感じはしないし、むき出しのファム・ファタールっぽさもない(私観です)。でも、最初に登場した時の、世間知らずのピュアな佇まい、宿屋の猥雑な雰囲気に戸惑いながらもキラキラした笑顔のサラを見て、きっといいマノンだと思った OK  好奇心旺盛で自分の感情に正直な感じ。だから、目の前に現れた魅力的なものに無邪気に惹かれていくんですね え

 出会ったばかりのデ・グリューの真っ直ぐな気持ちアピールに、驚きながら喜びの笑みを返すサラがすごく可愛い。なのに、G.M.からもらった毛皮のマントに満足げに体をうずめ、デ・グリューと過ごしたベッドの粗末なシーツを触ってそのザラッとした感触を確かめ、一瞬にして心を決めG.M.の後についていく泣 このときのサラの自然な演技!

 2幕のソロは息を詰めて観ました。男たちにリフトされながら彷徨う無表情のサラは、取り巻きの中で幸福感に酔っているというより、G.M.に魂を奪われた抜け殻のよう。デ・グリューの姿を見て、またもやお金と愛との間で揺れているようにも見えました。

 ダンスによる演劇的表現が素晴らしい。柔らかな身体、繊細な足さばき(脚が綺麗!)、か弱げな腕の動き、言葉を語る目線。沼地での、上方に向かって伸び上がり、腕で虚しく宙を掻くような動き、もっと生きたいという思いなのか、掴みかけた幸福が離れていくのを追いかけているのか、心がえぐられるダンスでした 泣き3

 

 ワディムがねー、これまた感動的なデ・グリューでした〜 キャッ エレガントな王子さまのイメージが強かったから、マクミラン作品はどうかなと思っていたんですが、あんなにもストレートに感情を表し、心が崩れるダンスを披露するとは パチパチ ダンサーとしてすごく成長したよね(上から目線 ニコ)。とにかく、純真で一途な青年の悲劇性がすさまじいです。

 出会った時の思いを伝えるワディムのなんと初々しく素直なこと。誠実さの塊、怖いくらいのナイーヴさ。2幕での、マノンに訴えかけるワディムには力強さや感情の激しさがこもっていて、出会いの時とは明らかに違う踊りでした。ある意味、美しい独占欲 らぶ1

 で、これはデ・グリューの成長譚でもあるんですねー。3幕になって彼は愛する人を守る強さを身につけていた。マノン同様ボロボロになったワディム/デ・グリューには優しさと逞しさが見えました。最後、マノンの死を悟った時、ワディムの身体が恐怖と驚きでピクピクピクと小刻みに震えたのが、何かすごかったな 叫び

 相変わらずの、ダンスの伸びやかさとラインの美しさには惚れ惚れです。優雅なアラベスク、大きなジャンプ、ややこしいリフト、どんなに激しい動きでも雑になったりしないんですね。

 

 サラとワディムのパートナーシップは完璧だった。サラの小柄で華奢な身体は、スピードと勢いのあるアクロバティクなリフトを軽やかに見せるし、ワディムの安定したサポートと相まって、マノンの非力さや儚さが強調されます。

 出会いのPDDでは、恥じらいから次第に気持ちが高ぶっていく高揚感があった。寝室のPDDの幸福感あふれるダンスは、2人が夢の中を泳いでいるよう。そして沼地のPDDの凄まじさ。倒れかけるサラをギリギリのところで支え、絶望に苦しむサラを抱きかかえ希望に向かって歩こうとするワディム。美しいPDDではないけど、心が震えました きらきら

 

 ギャリーの脚フェチ・ムッシューG.M.が、もうヤラシくて不遜で素敵 Queenly むき出しの色欲、お金ですべてを操る傲慢さを、憎らしくも見事に表現。マノンをペットにしているようで、実は彼女の魅力に自分自身が囚われているのが、気だるそうな仕草や目遣いから感じられる。それゆえ、マノンとレスコーに嵌められたと知り、目が覚めてぶちぎれるのも納得です。

 平野さんのレスコーは予想以上に良かった。恵まれた身体を生かした大きな踊りと、濃厚で明確な表現。「冬物語」のリオンティーズ同様に顔芸に味があります 冷や汗 酔っ払った状態でのダンスが、わざとらしくない程度に笑いを取っていて上手かったな。

 モブシーンではついついマシュー・ボールの演技に目がいってしまいました。3人の紳士として綺麗なダンスも見せてくれたし(いつかデ・グリューを いいな)。看守は誰かなと気になっていたら、懐かしのトマス・ホワイトヘッドォ〜。お腹周りの贅肉が強烈で、その品の無さがキャラにぴったり 笑

 

 今回改めて分かったけど(分かるの遅い 土下座)、ブレスレットは、虚栄のシンボルであると同時に、束縛のシンボルでもあるのか。G.M.にされるがままに腕に付けられたことでマノンは自由と愛を見失う。デ・グリューと逃げる時もそれだけは外したくないと固執していたのに、外された途端、心の枷が消えて真実が見え、デ・グリューの胸に飛び込んでいくんですね。3幕でも看守がブレスレットをあげようとしたけど、今度はきっぱりと拒否するマノン。上手い演出だなーと思いました。

 

 映像として残念だったのは、イカサマカード賭博のシーンで、カメラがデ・グリューに寄り過ぎたため、彼がポケットからカードをこっそり出すところが十分に見えなかったこと しゅーん インチキされたことにG.M.が気づき、それでレスコーが追い詰められ、結果、マノンが捕まるという伏線なので、そこはきちんと映してほしいと思いました。

 レスコーがG.M.に撃ち殺されるところは一つの山場ですが、ここもカメラワークのちょっとした遅れで、レスコーが撃たれた瞬間がよく見えなかった 凹(G.M.にフォーカスされていた)。カメラを引きにして、2人とも見えるカットにしてほしかったな。映像だとこんなふうに、自分の見たいところが見られないフラストレーションを感じるときがありますね。

 

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