バリーターク@シアタートラム | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

作 エンダ・ウォルシュ

演出 白井晃

出演 草剛/松尾諭/小林勝也

 

 面白かったー GOOD 好きなタイプの戯曲でした。不条理劇と言っていいと思うけど、全部わかる必要はないし、感じ方や解釈は観た人それぞれ違っていいはず。

 壁で囲まれた部屋に男が2人(役名は、男1、男2)。そこから一歩も出ず、朝起きてシャワーを浴びて服を着て食事をして運動して……というルーティンをこなす毎日。空想の中で、バリータークという小さな街と住人を創り上げ、2人が複数の住人に扮してごっこ遊びをするのが唯一の気晴らし。ある日、壁の外から男3が現れ、2人のどちらかが外に出て自分に会いに来なくてはいけない、出てから12秒後に死ぬんだけどね、と言い放って去っていく。結局、男1が出ていき、男2は残り、部屋に1人の少女が入ってきて新たな住人となり、終わり ガックリ

 男1=草𦿶くんは、閉所恐怖症なのか時々痙攣を起こして倒れたり(この部屋から出たいという心理的反応かな)、壁の外から聞こえてくる会話に耳をすましコンタクトを取ろうと呼び掛ける。迷い込んだハエの羽音(生きている証?)を愛おしそうに聞き、突然現れた男3に対しては好奇心で目を輝かせます。

 男2=松尾さんは、外からの声に怯えて聞こえないふりをし(男1の行動を完全無視ショック)、ハエをゴミだといって握りつぶし、男3に対しては恐怖心あらわにあとずさる。

 2人がごっこ遊びで本物の人生のように生きるバリータークは、平和で居心地良さそうだけど、住人はパターン化していて、刺激の少ない退屈な街にも感じられました。

 

 男3=勝也さんは、外に出ることは人生に色と形を与えることだと言います(このセリフは胸に響きましたヨキラキラ)。彼が迫る選択は分かりやすい。いつか死ぬという事実を受け入れ、自由になって限られた時間(でも明らかに五感を刺戟する世界)を生きるか。それとも、死から目をそむけ閉ざされた世界で同じことを無難に繰り返し、空想の街に自分の人生を投影して気楽に生きるか。どちらを好むかは、人それぞれだと思いますが。

 男3と会ったあと男1は、自分が住人のフリをしていたバリータークは、ただの言葉に過ぎないことに気づくんですね。本当の世界、生きるに値する手応えのある世界は壁の外にあることを知り、実体のない街バリータークを捨てて出て行くチャンスがいま訪れたとわかり興奮します。死と引き換えの自由でもいい、好奇心と探究心を持って生きれば、その生は満ち足りたものであるはず、という思いかな。

 でも最初に「出て行く」と言ったのは男2なんですよね。「僕はどうすればいいんだ?」と不安げに尋ねる男1に「お前は生きろ」と言う。男2は明らかに、部屋にとどまることが「生きる」ことだと思っていて、男1を助けるために自分が犠牲となり、死の待つ外に出ていくと名乗り出たのでしょう。そのときの男2には緊張と恐怖の表情が浮かんでいた。結局、男1の外への強い憧れを知り彼を行かせるんだけど、男2は何かホッとしたような、でも男1を羨ましくも感じたような、複雑な気持ちだったんじゃないかな。

 

 前半、言葉と身体で見せる芝居は疾走感や勢いがあって面白く、2人が心に抱えた焦燥感の表現とも取れる。男3の出現のしかたはスペクタクルで、あっけにとられてしまった 叫び その黒ずくめの風貌や使命から死神かと思ったけど、殺されたハエを生き返らせるから、「真の命=積極的に生きるチャンス(?)」を与える使者なのだろうか。舞台奥に現れた外の世界は緑豊かでも、そこに光は当たっていなくて、遠くの空を染める朱色は朝焼けというより夕焼けに見え、美しいけど妙な胸騒ぎや寂寥感を覚えました。

 草くんは心情を表す動きがとてもいい。壁に守られた場所を飛び出し未知の世界へ踏み出す決心をするという設定は、今の彼の状況と奇しくも重なりましたね。終盤の独白めいたセリフ(外の世界への狂おしいほどの憧憬)は、言葉が詩のように美しくて、彼の透明感ある声が耳に心地よく、感動して不覚にも涙目になってしまった キャッ 壁の外に立って彼方を見つめる草くんの背中が頼もしかったり切なかったりしました。

 松尾さんは道化役っぽい演技が自然で、でも、不思議なことに終始悲しさと孤独が身体につきまとっていたなあ。真実に向き合うのを恐れる様子は子供のようだった。2人のセリフや動きの応酬はテンポが絶妙に噛み合っていて、弾け具合がすごかったな。

 勝也さんはいつもの飄々とした演技が冴え、感情というかハートを感じさせない佇まいに背筋が寒くなりました。その達観したような雰囲気と相まって、人間離れしたあの役にぴったりでしたね 笑

 

 多くの人が言っているように、本作は確かに「ゴドーを待ちながら」を思い起こさせますね。とうとうゴドーが現れたんだ! で、それは死神だったのかー ムンクの叫び って感じ(私見です汗)。プログラムで白井さんが書かれていたように、男1と2がいる部屋=limboという概念で捉えると、落ち着きどころが見つかります。でも、外に出て死ぬまでの時間がなぜ12秒なのか、分からなかったなー Queenly

 

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