「ヤング・フランケンシュタイン」@東京国際フォーラム ホールA | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

脚本 メル・ブルックス/トーマス・ミーハン

作詞/作曲 メル・ブルックス

演出/上演台本 福田雄一

出演 小栗旬/ムロツヨシ/賀来賢人/保坂知寿/瀬奈じゅん/瀧本美織/吉田メタル/宮川浩

 

 あ~、笑ったー。福田雄一ワールド……いや、福田雄一×ムロツヨシ・ワールド全開でした。ムロさんホント最高、賀来賢人すごく良い、小栗旬……そうか、っていうのが最初の感想。

 元の映画もミュージカル版も知らないけど、時事ネタ芸能ネタ満載、商品名連呼で、オリジナル台本を日本の観客向けにかなりいじってます。ブロードウェイミュージカル「ヤング・フランケンシュタイン」の和製翻案版という感じでした。欲を言えばオリジナルに近い演出で観たかったけど、これはこれで楽しかったから、良しとします。

 小ネタ風の笑いや悪ふざけが満載な分、ミュージカルとしてはこじんまりとしていて、舞台セットもあまり凝ったものではなく、少しちゃちな感じもする。作品の軽快さとのバランスはいいですけどね。

 曲はダンサブルなものが多くて耳や身体に心地よく、ダンスはみなさん切れが良くて達者。2幕の「踊るリッツの夜」は衣装もタップもカッコよくて圧巻でした。

 

 かつてモンスターを創ってしまったフランケンシュタイン博士(宮川浩)。その遺産を相続することになった孫のフレデリック(小栗旬)が、祖父の故郷を訪ねます。脳外科医のフレデリックは自分もモンスターを創造したい(死体に命を吹き込みたい)という欲望に囚われ、助手アイゴール(賀来賢人)とインガ(瀧本美織)、家政婦(瀬奈じゅん)の手を借りて創ったモンスター(吉田メタル)は、やっぱりちょっと問題があり、フレデリックの恋人エリザベス(瀬奈じゅん)を巻き込み、警部(ムロツヨシ)に追われ……という展開。

 

 ミュージカル初挑戦の小栗旬。1年間ボイストレーニングを積んだということで、その効果はあったと思うけど、でもやっぱり、主役なのに歌がイマイチってなんだかなー、とちょっと残念でした。歌い上げる曲もあるし、「ミュージカル俳優」でなくてもいいから、やはり主役はちゃんと歌える役者をお願いしたい。あ、でもダンスはかなりサマになっていました。そのことを除けば、役者としての求心力、カリスマ性、スター性などを持っているし、小栗くんが言っている「フレデリックの(人の脳にすごく興味のある)変人性と純粋さ」はうまい具合に出ていました、サスガです。瀬奈じゅんと恋人同士なんだけど、二人のシーンではちょっと遠慮していたようにも見えたかな。

 

 演出の福田さんによれば「この作品の笑の核になるのは、ケンプ警部とアイゴール」だと。そうなんですヨ、この2人の演技が絶妙だったのです。

 村の警部ケンプを演じたムロさんは、ほかに何役もこなして笑いをさらっていくんだけど、それぞれの役というより、すべて「ムロツヨシ」になっている冷や汗 「袖にはけるとスタッフが次の衣装を持って構えていて、汗だくで着替えてるんですヨ。舞台に出ているときが自分にとっては休憩なんですヨ」と、あたかもセリフのように小栗くんに言ったりにかー とにかくアドリブ攻撃がすごいらしいけど、どこまでが台本でどこまでがアドリブなのかわからないです。あ、歌は下手でした。2幕での熱唱シーンはアンサンブルさんが歌っている録音に合わせて口パク。歌った後それをバラして「こんなことはやってはいけません!」ときっぱり。ムロさんのコメディーセンス、好きです。

 

 アイゴールの賀来賢人は今回素晴らしく良かったーGOOD イケメンキャラを潔く封印して、不気味で可笑しいメイクと特異な身体の作り(ドラキュラと「ノートルダム・ド・パリ」のカジモドを足して2で割ったような姿)で、怪しげな実験助手になっている。その外見の奇妙さだけに終わらず、きちんとアイゴールとしてのお笑いキャラになっているところに脱帽です。とぼけた感じとちょっと間抜けな雰囲気の見せ方、間の取り方や仕草のタイミング、沈黙しているときの表情や態度など、小栗くんを相手にボケたり突っ込んだり、クルクルと器用に演じこなしているんです。笑いましたホント。しかも、歌はうまいし踊るとキレッキレなのです。賢人くんにとってこの役は新境地じゃないでしょうか。

 

 助手役の瀧本美織は初見でした。ハッチャケ気味のおバカさんという役どころで、その辺りの吹っ切れぶりは、熱演ですがまだ固かったかな。歌もやや不安定だけど声は悪くないし、ヨーデルはすごくいいです。家政婦の保坂知寿は少し謎めいていた雰囲気で色っぽく、コメディセンスもいい感じでした。フレデリックの恋人役の瀬奈じゅんはゴージャスでパワフル。ムロツヨシの複数役の一人であるハゲ頭のドライバーを相手に、某議員の時事ネタ「このハゲーッ!!」に続いてミュージカル風罵倒が出たときは大爆笑。

 吉田メタルのモンスターもすごくインパクトありました。創造されたばかりのころはモンスターっぽく「アーウー」としか言葉を発しなかったのが、最後には、フレデリックの頭脳を移管されてかなり高度に知的なセクシー&ダンディーな男になる、彼だから見せられるこのギャップ。最後の瀬奈さんとのラブシーンで持ってった感じでした。

 難しいことを考えず手を叩いて笑えるこの手のミュージカル、嫌いじゃないなー。また観たいと素直に思いました。