作 フィリップ・リドリー
演出 白井晃
清原果耶/井之脇海/池津祥子
2015年ロンドン初演からすぐの2016年に、白井さんの演出で日本でも初演されまして、そのときのキャストは高橋一生、吉高由里子、キムラ緑子。観ましたが、それがとっても面白くて、今回の10年ぶりの再演を楽しみにしていたのです。いや~、やっぱり、凄~く怖いのに凄く明るくて、シュールでドライで陽気度の強いブラックコメディー。ブラックユーモアもここまでくると清々しくすらあります😆
ネタバレあらすじ→オリー(井之脇海)とジル(清原果那)の夫婦。ジルは妊娠中。生まれてくる子のためにも素敵なマイホームが欲しい2人。そこに、戸建住宅の仲介者ミス・ディー(池津祥子)から「一軒家を(ほぼ無料で)差し上げます」と案内がくる。それは浮浪者が徘徊している荒れた地域に建つ中古物件だったが、ミス・ディーはリフォームして素敵な家にすればいいと勧め、2人は契約する。翌日、オリーは家に忍び込んできた浮浪者を思わず殺してしまう。すると強い光が放たれ、浮浪者の死体は消え、死体があったはずの場所が一瞬にして美しくリフォームされている。浮浪者を殺すとそこがリフォームされるという不思議を受け入れた2人は、次々と浮浪者を連れ込んでは殺し、その度に、キッチン、バスルーム、廊下、寝室、リビング、納戸……と、家がどんどんリフォームされていき、夢に見たマイホームが完成する✨
何年か過ぎて子どもも生まれ、ジルのお腹に2人目がいる頃、浮浪者を連れ込んでいたことを隣人たちに怪しまれ、2人はそこに居づらくなる。ミス・ディーが再び現れ、もっと大きな家があるからそこへ引っ越して、またリフォームすればいいと勧める。2人は「もっと大きな家だともっと多くの浮浪者を殺さなければならないけど、子どもたちにも殺すのを手伝ってもらえばいいね😊」と新たなマイホームへ移っていく。残ったミス・ディーが「さぁ、夢のマイホームへ!」と両手を広げて観客に呼びかける。終わり。
タイトルの「レディエント/ radiant 」は「光を放つ、明るく輝く」、「バーミン/ vermin 」は「害虫、社会のクズ(社会の害虫)」という意味です。直接的には「浮浪者(社会のクズ)が光を放って死ぬ」ことを表していて、そのあと夫婦の家が素敵にリフォームされている、というところに繋がります。理想のマイホームのために、まるで花壇でも作るかのように嬉々として殺人を犯していく2人😰
観客巻き込み型(イマーシヴ演劇)で、オリーとジルは観客に向かって説明するようにセリフを言ったり、観客に話しかけたり、あるいは「次にリフォームするのは、夫が望む “新車を収める車庫” か、妻が望む “生まれてくる子のための子供部屋” か、どちらにすべきだと思いますか?」と観客に挙手を促したりする。そして芝居の終盤で「(理想の家のために浮浪者を殺すという)私たちのしたことは間違っていませんよね、だって家族のためにやったことだから。皆さんもきっとそうするでしょ?」と観客に問いかける。問われた私たちは「形は違っても、そういうことかな……」と共犯者にさせられている😩
真面目な夫婦が次第に欲望に飲み込まれていく。自分たち家族の幸せのためなら、弱者である他人を犠牲にしてもいいという、この感覚。それを、明るく人の良さそうなごく普通の夫婦が淡々と行なっていくわけですよ。人の欲望には際限がなく、その欲望がモラル(倫理や道徳)を超えていく。彼らが浮浪者を殺す、その口実は「浮浪者は社会の役に立っていない、社会で取るに足らない存在は犠牲にしていい、むしろ、いなくなったほうがいい」ということですね💦
殺される浮浪者は登場せず、井之脇海と清原果那のセリフと動きだけで見せるのだけど、ひとりだけ池津祥子が2役目として演じる浮浪者が登場します。その浮浪者は「自分は今まで誰にも必要とされずに生きてきた。でも、ここで死ねば自分は一瞬だけ光り輝く、そしてこの家が美しくなる。そうやって自分が役に立つのなら、必要とされているのなら、こんなに嬉しいことはない、さあ、早く殺してください」みたいなことを言います。こうして正当性を持ってくる滑稽な皮肉。作品の中にある狂気と暴力性、社会性がストレートに刺さってきます😖
ジルを演じた清原果耶さん。キラキラのマイホームに住んで絵に描いたような幸せな家庭を切り盛りしていくことに積極的で、ミス・ディーの勧誘に慎重になったり浮浪者を殺すことを最初は躊躇する夫を叱咤し、グイグイと前に進めていく。あの明るさが何か憎めないのでした。途中でサスガに良心の呵責に苛まれ「ソファに髪の毛が生えている😱」などと幻覚を見るのだけど、立ち直るのも早い😅
オリーの井之脇海さんは、慎重でちょっと気が弱そう、妻に主導権を握られている夫で、家族のためというより、妻や子どものためなら頑張りますっという良き夫でした。その一見平凡な男が欲望に飲み込まれていくところの怖さが出てましたね。
ミス・ディーの池津祥子さんは、普通に不動産エージェントにいそうな、口達者で押しが強いやり手の営業ウーマンそのもので、それゆえにリアルな不気味さが漂っていました。あんな感じだと気の優しいクライアントは普通に騙されますよ。
劇中音楽でU2の「Vertigo」が使われているのだけど(戯曲上の指定ではなく、白井さんの選曲だそうです)、最後、暗転していく中にそれが爆音で流れるのが異常にカッコ良いのです👍 タイトル通り「めまい」を呼び起こすのでした。









