先日、何だか呼ばれたような気がして病室に行くと、いつもは目を閉じている患者のNさん(仮名)が目をあけてこちらを見ていました。
めずらしいな~と思って近づき、いつものように「こんにちは」と話しかけました。
ところが、Nさんはいつもと違うのです。
呼吸が荒く、顔は真っ青。
これはおかしい!
橈骨動脈(手首の親指側にある動脈)に触れるが脈がありません。
私は急いでナースコールを押し、他の医療スタッフを呼びました。
大部屋だったので個室に移そうとしている最中に、Nさんは大きく息を吸いました。
息を“引き取った“のです。
息を吐くこと吸うことは、生きること死ぬことにつながります。
あたりまえのような気もしますが、少し掘り下げて考えてきましょう。
赤ちゃんは産声をあげるときに、母体の中で吸った空気をそとの世界に吐き出します。
息を吐いたことによって、新しい空気を吸い込めるのです。
息を吐くことは生きることにつながります。
逆に人は亡くなるときに息を引き取ります。
つまり吸った息を吐けない。
吐けないから吸えない。
そして死ぬ・・・・・。
だから息を吐き出すとは言わずに、息を引き取るというのです。
息を吐くことは死ぬことにつながります。
私たちは何気なく息を吐いたり吸ったりしていますが、これは生きること死ぬことにつながっているのです。
身近にあるのは生だけではありません。
死というのもとても身近にぱるものなのです。