そして、会議室に着き、そこで座って話した。
上席:「今日はどんな用件で?」
一見、この上席は警察が伺いに来ているというのに、非常に冷静で、落ち着いている。Yは一瞬、容疑者ではないのかと自分の鑑識眼を疑った。
Y:「はい。ある被害者の方から被害届が来まして。それでいくつかあなたがた(御局)のほうに職務質問させていただきたく…」
上席:「…そうですか。いいでしょう」
この時、Yはその言葉を受けて、自分の鑑識眼や推理力、警察官としての目を疑った。まるでこの上席はひるむことなく、堂々としていて冷静で怯えることはない。我々は容疑者ではないとでも言いたげで、その態度が何よりも物語っている。
Y(V.O.):「我々は失礼なことをしてしまったのか?」
X(V.O.):「先輩。研修で新人に誤認逮捕をあっちゃならないって…」
それでも、Yは毅然とした態度で、室内をぐるりと観察する。テレビ局らしく、大型のテレビだけでなく、色々な機材、山積みにされた書類があった。そして、Yも冷静に戻り、穏やかな口調で、半信半疑に、
Y:「失礼ですが、あなたがたがサイバー犯罪を犯しているのではないかと」
それを聞いた上席は、
上席:「いやだな~。そんなことするはずないでしょう。我々はこの国を代表するテレビ局ですよ。清廉潔白です」
Y:「それじゃ、少しあなたがたのコンピュータを調べさせていただけませんか?」
上席:「それはできない。我々にも企業秘密がありますし…。それこそ、警察の職権乱用になるでしょう」
それを聞いて、後輩のXがやや強気に出て、
X:「しかし、捜査の妨げで、公務執行妨害でもありますよ」
すると、上司のYはつとめて冷静で、Xをなだめ、制止し、
Y:「確かに」
Yはこの後もいくつか職務質問を繰り出した。どこかに落ち度ある受け答えがないか。本当にこのメディア組織はシロか。だが、一向に捜査の抜け穴が見つからなかった。どこにも証拠がない。一瞬、自分の警察官としての能力を過信し、これは大変失礼な職務質問だったと反省した。
しかし、ここでYは窓際に置かれたある書類に目を見張った。太陽の光である個所は見え、その続きのある個所は見えない。
→Gafferのトリック→太陽の光
それを見たXは上司のYが平身低頭に謝っているところを見、その先輩としての失敗に落胆し、見損なう。Xも腰を低くして、申し訳なさげに、
X:「分かりました。それじゃ今日のところはこれで」
Xが容疑者の上席にくるりと背を向け、Yに「帰りましょう」と言いかけた時だった。急に外の天気が暗くなり、空一面をどんよりとした、どす黒い雨雲が覆った。雷雨だ。

→Gaffer→雷のピカッとする光で、その書類の続きの箇所が明滅するが、暗くなる

その時、書面が反射しなくなった時に、しっかりと見た。それでその書類の続きの箇所がしっかりと視認できた。
Y:「いいでしょう。これは大変失礼なことをしました」
そう言って、YとXは容疑のあるメディア支局から身を引いた。
覆面パトに乗り込み、車内で、
X:「やっぱり先輩、違いましたね。我々の間違い。そもそもこのメディア組織がそんなことするはずが…」
Y:「いいや、違う」
X:「えっ?」
Y:「この組織は紛れもなく…『クロ(有罪)』だ。動かぬ証拠を見つけた。警察としての心構えとして、お前もよく聞いておけ。『悪さをしていればしている奴ほど、ウソをつく。我々はその人間が罪を犯したのなら、そいつがどんなにいい人間でもただちに逮捕・報道しなければならない』
Xは目を丸くして、ハッとしたような声でつぶやく。
X:「先輩」
Y:「さあ、令状を取りに行くぞ。今度は東京の本局だ」

X:「どういうことですか?」

Y:「㊷や①にも言っておけ。情報はタダじゃない。非常に高価なもの。それと、刑事事件で被害届を受理したら、『まずは疑ってかかれ』と」

→そのメディア組織の外観をゆっくりとPull Back To Reveal