あれから、漫画家を目指すCは地元アラスカのアニメーター養成専門学校の説明会に参加していた。クラスメートの100に言われた通り、「決して夢を諦めてはいけない」との言葉通りに触発されて、自分から行動をと思ったからだ。
その説明会で、2人の講師がクロストーク形式の説明をする。その説明を熱心に聞くCがいた。
講師A:「ネーム・下描き・ペン入れ。ネームはセリフはこの段階でほぼ決めてしまうが、絵は実際に原稿に向かってから考える」
講師B:「『ある1つのシーンが決まるとその次も決まる。描いてみないとわからない』。下描きは比較的ラフな感じ。ネームをもとに、描くべきことを頭の中でまとめながら描いている」
講師A:「この段階でもう一段階練られた構図が入っていくことも多い。その後のペン入れは『下描きをなぞる』のではなく『ペンで絵を”描いていく”』作業」
講師B:「ペン入れは『昔は線の1本1本にこだわってペン入れしていました。でも5回に4回は失敗する。そのたびに効率が悪いので、最近は線の強弱は後からバランスを見ながらつけます』との言葉通り、ある有名な漫画家さんはペン入れからトーンまでの流れを常に『バランスを取りながら』行っている」
そんな2人のクロストークをCは真剣に聞いていた。時折、配布されたレジュメに目を落とし、赤ペンなどでチェックやメモを入れながら。そして、面前のスクリーンに映し出されたフレームワークを見ては大きく頷いていた。
講師B:「トーンワークでカゲの出し方は絵の光源が大事。効率と美しさ、両方のための工夫に注目します。同じ柄のトーンを使用すべきところは最初からできるだけ一枚で覆うようにしている」
講師A:「特にトーンを選ぶ際には、濃淡だけでなく、ドットの大きさ(目の粗さ)も表現に利用し、使い分けている。仕上げは下描きからペン入れ、そして、トーンワークの各段階ごとに完成形のイメージを実現する工夫をしてきたが、仕上げはその最終段階。すべてのコマを視野に入れながら一枚の原稿として見栄えの良い画面にするために、主に白黒のバランスを中心に調整する」
そう説明すると、講師Aはふっと教室内にいた受講生を見渡し、
講師A:「ここまでで何かありますか?」
すると、Cは挙手をし、すかさずその説明に付け加える形で、
C:「はい。そのことですが、そのためにはホワイトを多用したり、場合によっては切り貼りもする」
講師B:「Excellent. 鋭い意見ですね」
講師A:「What's your name?(君の名前は?)」
それを聞かれたCは本当に嬉しくなり、
C:「C. My name is C.」
すかさずそう答え、私の名前を忘れないでください、将来有名になってみせますからとでも言いたげに大きな声で答え、2人の講師に印象付けた。