美容師のZはこの日も裏にある事務室で、昼食の時間を利用して、意見箱の様々な意見を見ていた。
Z:「美容師の生活と収入。平日が定休日。一人前になるまでには地道に練習。技術と経験が給与に反映」
こうした意見は自分への叱咤激励ともとれるし、非常に参考になる。今の自分と照らし合わせて、どこが欠如しているか、あるいはそれを今後どう補っていけばよいかを考えていた。考えあぐねていた。
Z:「理容師は髪を刈り、ひげを剃って、容姿を整える。理容師も国家資格で、厚生労働省認可」
そんなことを昼食を食べながら、ぶつぶつとつぶやき、とりわけ日本の美容師の意見は異国の地で働くZにとっては大変励まされた。
Z:「この方は生涯を通じて喜ばれる技術とサービスを提供したいとのこと。地域に根ざした店。毎日泣いた修業の日々。母の死を乗り越えて。ヘアアレンジが人気に。本当に苦労されているな~」
そうしたことを意見としてもらう時、Zが最も気にするのは自分の日頃感じていることが他の美容師も同じであるかどうかだ。それがほぼほぼ同じなら、いくらか自分は間違った方向に行っていないと分かる。反対に、少し違うぞと思えたら、軌道修正することにもつながっている。
意見箱の文章を暗唱する形で。
意見箱の字幕(V.O.):「キャリアを積むごとにわかる難しさ。お客さんに育てられる。理容技術を通じて地域の福祉に貢献する。店内をユニバーサルデザインに。土日祝日関係ないシフト制で、休暇は平日に。技術と経験が収入に影響」
Z(V.O.):「適性と心構えとして、根気よく技術と接客スキルを磨き続けられること。技術への向上心や探求心をもつ。体力と笑顔のある人。コミュニケーションを大切にする。そして、…」
Z:「…美に対する感性を磨こう。新しい情報を敏感にキャッチすること」
そんなことを感じながら、Zは美容師として技術を学んできた。
昼食を食べ終え、一通り歯を磨き終えると、ほっと一息するのもつかの間すかさず現場へ出ていく。
受付係:「Zさん。もう次のお客さまがお待ちですよ」
Z:「Okay.」
そして、顧客が待っているブースに行き、背後から鏡に映っている顧客に声をかける。
→Reflection Shot→鏡に映る顧客
Z:「May I help you?」
顧客:「Yes, please.」
Z:「今日はどんな感じで?」
そんな具合に、午後の仕事が始まった。まだ始まったばかりで、気が抜けないが、これからも幾多の試練が待ち受ける。顧客の髪型の要望は変わったり、変わらなかったり。その顧客の思い描いた髪型にカットしていくのが美容師の役目。
先ほどの意見箱の意見を回収して、今の自分にしっかりと投影し、それと比較考量して、どこが足りないかを見定める。それがあるうちはまだまだ美容師としてこれからも生きていける。
笑顔で顧客と応対するZがいた。
Z:「この前、アラスカの公園にピクニックに行ったんですよ」
顧客:「Oh, really?」
Z:「We had a fun.」