この日も警察官のYは警察署で後輩の女性警官①と、こちらも後輩で男性警官㊷と署内で話に花を咲かせていた。
①:「これは千葉県警の方のことですけど、住民の生活の安全を守る警察官。身近な犯罪の取締りや防犯、人々の困りごと全般に対処。女性を犯罪から守りたい。志望動機はテレビドラマ『相棒』を見てだそうです。分かるな~、この気持ち」
㊷:「生活安全相談や防犯活動といった身近なことから、風俗・少年・経済・サイバー・環境などの犯罪捜査まで幅広い活動を展開。少年が関与する犯罪や、児童買春など少年が被害者となる犯罪を取り扱う少年係。主に、少年事件や児童虐待事件。児童買春など、少年が被害者になる事件は、サイバーパトロール(インターネット上の違法で有害なサイトや書き込みをチェックする)や、被害児童や保護者からの相談を受けて捜査。非行少年の更生、立ち直り支援も」
Y:「そうか。お前たちもそういう年代で、他署の警察官がどういうことをしていて、どういう考えを持っているかが気になる頃になってきたわけだ」
そんな話を挟んでいると、そこにYの後輩のXが参入してきて、和気あいあいとした空気に包まれる。
X:「朝会では幹部から指示を受け、各係の一日の予定を共有する。担当事件の書類作成や防犯カメラの解析、事件書類の確認などを行い、訓練日であれば積極的に術科訓練にも参加。昼休みには自作のお弁当。さ~てと、恋人が作ってくれた今日のお弁当は何かな?」
①:「あなた、公私を分別しないとダメよ」
女性警官の①がそう言うと、Xは少し照れながら、指で鼻を触った。
㊷:「当直の場合、夜間は繁華街のパトロールや補導に出かけ、署で電話対応も。自分から話させ、寄り添う。売春防止法の指導や連続痴漢犯を検挙。一つとして同じ現場はない。まさに警察官の信条だな」
Y:「これまで辛いことや苦しいことの連続で心が折れそうな時があったが、それでも折れなかったのは、『人のために働きたい』という強い思い。それは誰かがやらなければならない仕事。やりたい仕事は必ず見つかる。お前たちもそうだっただろ?」
すると、後輩3人はまっすぐYを見て、無言で見つめていた。それからはそれぞれの持ち場へ散って行き、とりわけ、Yに関しては河原に住み着いたホームレスの♥のもとへ今日も巡回と言ったらおかしいかもしれないが、その後が心配になったので、曇りの天気の中、行ってみることにした。
そして、Yは河原に行ってみると、そこには橋げたに段ボールなどで棲家を作り、それで雨風をしのいでいる♥の家があった。そこの前にYは立ち、呼びかける。
Y:「♥。こんにちは」
しかし、中から何も返答がない。段ボールで作られた棲家の壁には、大きな字で「日本の政治にクオータ制の導入を」と書かれてあった。それを見た後、Yはもう一度呼びかける。
Y:「♥!いるか!?」
今度も呼びかけても、中から何も返答がなかった。どうやら♥は食べ物を求めて、外へ出向いているらしい。レストランやお弁当屋、百貨店の地下街にある食料品店やお惣菜屋から出される残飯などを集めていると以前に言っていた。(→食品ロス、フードロスの削減に貢献=環境問題への関心)
仕方なく、Yは今日は♥に会うことはできなかったため、いつものようにその棲家にお菓子のキットカットを置いていった。Yは夏場以外はスニッカーズとキットカットをよく持ち歩く。
そして、署に帰ろうとした時、少し驚くようなものを目にした。いつもとは少し違う光景だった。
Y:「ん?…これは?」
Yはその様子を持参している携帯電話のカメラに写メ撮影し、しっかりと保存した。
→Sound Effect→写メのパシャっという音